エピローグ2


─某月某日 倉木邸 彼女がここに繋がれる理由─




『今でも思い出せるの』


『あれは西日がまだ高い位置にある、明るい夏の午後だったわ』


『暑かった。自然と汗ばむような、暑い日だったの』


『なのに……、だっていうのに』


『おかしいのよ、普通じゃなかった』


『夏なのに、その教室だけは底冷えするぐらいの静寂だった』


『だからかしら? 視界全部がモノトーンのように見えたの』


『真っ暗なの。あの雑巾の水に全ての色が奪われてしまったのかと思ったわ』


『もしくは古いフィルム映画でもみてる気分、かしらね』


『でもね、無造作に床の上に落ちた花の図鑑が開いていたの』


『なんの花だったかははっきり覚えているの。あれは確か』


『あれの極彩色だけがいやに目を引いてね』


『ふふふ、馬鹿げた妄想よ。聞いたらすぐに忘れて頂戴』


『あの色はね、あのページは確かに私を』



『呆然と立ち尽くすことしかできない私を嘲笑っていたわ』


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