私と先生
來紀
きっかけ
(雨の音が聞こえる…)
(そういえば…私…殴られたんだっけ…)
体育館の裏、一人の少女が所々に怪我を負いながら雨に打たれぼーっとしていた。
「美羽!どうしたの!?」
少女を見つけた朱里が走ってきた。
朱里もあざがあり、殴られたことは見て取れた。
「朱里…うち…もう無理かも…」
美羽が寒さか恐怖に声を震わしながら朱里に言った。
「美羽!大丈夫だから!今から保健室行こう!」
そう言いながら朱里は美羽の腕を自分の肩に掛け起こし保健室に向かった。
「朱里…」
雨の音にかき消されそうな小さな声で朱里呼んだ。
「どうしたの?」
心配そうに朱里が止まって聞いた。
「ト…トイレに行かせて…」
今度は聞き取れる声で言った。
「わかった。」
そう言うゆっくりと保健室に行く途中のトイレに立ち寄った。
2人で入って一番窓側の個室に入った。
「後は自分で出来るから…外で待ってて…」
朱里はそれに従った。
美羽の言う通りにトイレの外で待っていた。
(楽に…なりたい…)
美羽は窓を開け外に身を乗り出した。
「もう大丈夫かな?」
独り言で朱里が言うとトイレに入った。
その時、何かが当たる金属音がした後、外で鈍い音がした。
「美羽…?美羽!?」
朱里が美羽の入っている個室をドンドンと叩いたが何も返ってこなかった。
「キャーッ!」
その時、外で悲鳴が聞こえた。
朱里が窓を開けて下を見ると血を流して倒れている美羽が見えた。
朱里は走って1階まで降りて美羽の元に駆け寄った。「美羽!美羽!!ねぇ!美羽!!」
その声に先生が駆けつけ救急車が呼ばれた。
「美羽っ!!美羽ってば!!美羽ぅっ!!!」
朱里は必死に美羽の肩を揺さぶるが美羽の目は開かず、息もしていなかった。
間もなく救急車が到着、搬送されたが、搬送先の病院で亡くなった。
朱里は病院で亡くなったことを聞くと静かに涙を流し、手を開いた状態から強く握りその腕を震わせた。
(許さない…絶対に…)
そう心で焼き印をしたように刻みつけた。
朱里の目は黒く、何故か澄んでいた。
(あいつらが…あいつらがいなくなれば…)
家では静かに包丁を持った。
その姿は人間には見えなかった…
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