第34話「シット・イン・マインド」

 【1】


 窓の外を虚無が流れる。

 漆黒のキャンバスを彩るのは、遥か彼方の星の輝き。

 進めど進めど景色は変わらず、宇宙が見せる顔は張り付いたように変わらない。


『裕太、何を暗い顔をしているのだ?』


 Νニュー-ネメシスの個室の中で、吐いたため息を的確に感じ取ったジェイカイザーが呑気に尋ねる。

 裕太の中の不安、それは借金だった。

 返済のペースを上げるために宝探し、というのが当初の目的だった央牙島おうがじま

 結局、宝は今乗っているこの戦艦であり、裕太の懐は寂しいまま。

 そのうえ転移事故から火星と木星の間という辺鄙へんぴな場所まで飛ばされて今に至る。

 夏休みの大半を使い潰して得たものは、エリィの実家への顔出し旅路だった。


 これが、相手がただの夫婦であればのほほんと茶でも交わしながら世間話もできるであろう。

 しかし、エリィの父は伝説のキャリーフレームパイロット・銀川スグル。

 そして、エリィの母は元がつくが旧ヘルヴァニア帝国女帝、旧姓シルヴィア・レクス・ヘルヴァニア。

 世間ではエリィとは無縁に書いてあるものの、歴史の教科書に載るふたりと借金を抱えたまま会いに行くのはあまりにも気が重かった。


『だが、裕太はまだ正式にエリィどのとお付き合いしているわけではあるまい?』

「銀川の方が乗り気なんだよ。正直言うと内宮のこともあるし、俺はどうすればいいのやら」

『モテモテリア充というカルマが精算される時が来たのだ! 男らしく覚悟を固めるがよかろう!』

「るせー、お前はどうなんだよ。ジュンナには冷たくあしらわれているみたいだが」

『フッフッフッ。今のところ好感度38といったところだ。これから徐々にデレていくとみた!』

「……根拠は?」

『お気に入りのエロゲキャラの攻略過程だ! ちなみに名前はアンジェリッタちゃんと言って……』

「あっそ……」


 ツッコむ気も相談する意味も薄れてきた裕太は、再び窓の外に思いを馳せる。

 地球は、いまどこで輝いているのだろうか。



 【2】


「これで今週三度目。今月に入ってから八回目か……」


 刺すような日差しの中、照瀬は首にかけたタオルで汗を拭う。

 倒壊した家屋の横に横たわる、先程まで相手をしていたキャリーフレームを見上げながら照瀬は電子タバコを手に持った。

 特有のミント風な味付けの煙が口内に充満し、白い息として住宅街の空へと消える。


「照瀬巡査部長、堂々とタバコ吸ってたらまた怒られるでありますよ?」

「いいだろ富永、電子タバコは無害なんだから。それに、こうも何度も愛国社とやりあってりゃ心も休まらねぇんだ」

「無害かどうかは研究段階で……って巡査部長! どこ行くでありますか!」

「予定があるんだよ。隊長には許可ももらってる。後片付けはお前が率先しろともな!」

「……わかりましたでありますぅ」


 納得がいかないといった風に不貞腐れつつ、現場へと駆けていく富永巡査。


 嘘は言ってない。

 もともと午後は非番の予定だったのに、反ヘルヴァニア組織・愛国社が事情も考えずに住宅街に発破をかけたから良くないのだ。


 格闘の際にバランスを崩した敵の〈ドゥワウフ〉が、避難の済んだ豪邸を一棟押しつぶした以外は完璧な仕事だった。

 ヘルヴァニア人らしい家主は泣いて悲しんでいたが、キャリーフレーム保険に入っていれば1グレード上の家に引っ越せる。

 入っていなければ犯人相手に損害賠償。

 大型ロボットの殴り合いが頻発するようになってから、社会もそれに合わせて変化していったのだ。


(しかし、奴ら……何でこのタイミングで活発になったんだ?)


 今月に入ってからの愛国社の活動は異常だった。

 原因を調べ、考えるのは警察の他所であり上層部。

 しかし、前線で何度も〈ハクローベル〉を振り回し連中を黙らせてきた照瀬にも、想像を巡らせるくらいの権利はある。


 笠本のところのガキや、富永と仲のいいガイやらが相手をしていた黒竜王軍。

 そいつらが姿を消したのと、愛国社の活動が活発になったのはほぼ同時。

 一本の線上に事象は並んでいるのだが、間を繋ぐ関係が見つからない。


「……俺が考えてわかるわけねえか」


 照瀬は頭をポリポリと掻きながら思考を放棄した。

 そうこうしているうちに約束の時間は目前。

 待ち合わせの場所へと、小走りで向かった。



 【3】


 道路に面した喫茶店のテラス席。

 軽部は時代遅れな紙面の新聞を手に、カップのコーヒーを喉に通した。


 紙面に踊るのは愛国社の悪事の詳細と、後手を演じる警察組織への批判文。

 友人の職場を貶める記事に、しかめ面を送る。


 話の種になるかと近くのコンビニで買ったのが間違いだったかと思いながら、軽部は乱暴に空席へと畳んだ新聞を放り捨てた。

 勢い余って滑り落ちる新聞。

 床にクシャッと音を立てて落ちたグレーの紙面を、細い腕が拾い上げる。


「ご機嫌ナナメなのですか? 軽部さん?」

「君は……カエデさん?」

「ご無沙汰しております!」


 ロングスカートとおしゃれなオフショルダー服に身を包み、ハンドバッグを腕にかけて朗らかな笑顔を送る女性。

 彼女は、先月現れた時は“敵”だった。


 軽部が教師を務める東目芽ひがしめが高校に、突如現れた黒竜王軍の刺客。

 一方的に勇者扱いされる教え子・笠本裕太の命を狙う女忍者だったカエデ。

 彼女は魔術巨神マギデウスを呼び出し襲いかかるも、裕太と軽部のチームプレイの前に敗れ、逮捕された。


 その後、更生した彼女は黒竜王軍が姿を消した事もあり、コンビニ店員としてこの街での生活を始めた。

 先のような派手な出会いと彼女の悲しい境遇もあり、軽部は時折悩みを聞いてあげたり支援していたりしていたのだ。


「後ろ姿を見て、もしかしたらと思ったら本当に軽部さんで安心しました」

「ああ、まぁ。最近はどうだ?」

「はい、最近はすっかり仕事にも慣れて順調です。この間も、店長に褒められまして」

「そりゃあ良かった」


 カエデは軽部にとって、新しい教え子のような存在である。

 最初こそは敵対していたが、彼女は組織から外れると素直で真面目な女性だった。

 だからこそ保護観察も滞りなく進み、表面上は他の一般人と変わらぬ生活を行えるのだ。


「仕事帰りかい?」

「ええ。早朝番だったので」

「よし、じゃあ労りとしておごってあげるよ。おーい、店員さん! コーヒーひとつ!」

「えっ、そんな悪いです……」

「まあまあ、座って座って」


 軽部の促しに、素直に応じるカエデ。

 運ばれてきたコーヒーカップを彼女の細い指が掴み、口元へ運ばれる。


「あ、おいしい」

「だろ? ここのコーヒー、美味いんだぜ」

「へえ……。今度から仕事終わりに通おうかしら?」


 日常の何気ないやり取り。

 本来ならばこの様なやり取りなどなし得なかった相手とのひとときに、軽部は穏やかな気持ちを抱いた。

 この喫茶店に来た本来の目的を忘れつつ、カエデとの談笑。


「かーーーるーーーべーーー!」


 その会話を遮ったのは、汗だくの照瀬だった。


「照瀬? どうしてここに……?」

「どうしても何も、お前から呼んだんだろうが! こちらの女性は?」


 照瀬がどかんと空いている椅子に座り、握った手の親指をカエデへと向ける。

 キョトンとする彼女をよそに、軽部は彼女の経緯を説明。

 なるほど、と言った風に照瀬が拳を手に打ち付けた。


「そういや、富永がそんなことあったとか言ってたな」

「まあ、今は彼女も善良な一市民。硬いことはいいっこなしだぜ?」

「硬いことは言わないが、お前は軟派な気持ちを抱いてるんじゃねえだろうな?」

「軟派っておい……」

「カノジョ欲しい~だとか言って砂浜を走り回っていたお前だから心配なんだよ!」

「おい照瀬、それは言わない約束だろ!」


「くすくす……!」


 ふたりのやり取りを聞いてか、笑い始めるカエデ。

 軽部はやましい思いはないからと言い訳をするが、彼女は手を横に振った。


「いえいえ、軽部さんって素敵な人なのにお相手いないんだと思いまして」

「素敵と言ってくれるのは嬉しいけど、お恥ずかしながらそうなんだ」

「ということは……私にもチャンスが……」

「え?」

「いえ、何でもありません! そ、そうだ。お二人は待ち合わせをしてらしたんですよね? どうぞ私にお構いなく!」


 紛らわすようにコーヒーを一気飲みするカエデの姿に、照瀬がニヤニヤとした気味の悪い笑みを浮かべる。

 軽部はその意味がわからないまま、座っている白い椅子ごと照瀬の方を向いた。



 【4】


 警察署地下の秘密研究所。

 無機質な白い内壁に囲まれた個室の中に、コンコンという音が響き渡る。

 椅子に座りコンピューターとにらめっこしていた訓馬は、扉をノックする音に身体ごと振り向いた。


「お久しぶりです、訓馬博士」

「おお。君は……」

「SD─17、ご主人様から名付けられた名はジュンナです」


 ペコリと礼をし、部屋へと入るメイド姿のアンドロイド。

 訓馬は彼女を迎えるように、壁際にあった椅子をひとつ手で押してキャスターを転がした。


「何か飲むかね?」

「では、コールタールを」

「そんなものは無いッ!」


 そう言いながら、デスク脇の小さな冷蔵庫から紅茶のペットボトルを取り出す訓馬。

 それをジュンナに投げ渡すと、この無表情なメイドロボは目尻だけを動かし不満を訴えながらキャップを開けて中身を飲む。


「はて、君たちは木星に行っていたのではなかったのかな?」

「通信網を通って、私だけ地球に帰って来たんです。あまりご主人様の家を放置しては、ホコリが貯まりますから」

「勤勉な女中さんだな。だが、それだけが理由ではあるまい?」

「はい、フォルマット博士の耳へと入れておきたい情報が少々ありまして」


 訓馬は眉をピクリと動かす。

 先まで自分を地球人名で呼んでいた彼女が、イェンス星人名の方でその名を呼ぶ。

 それはジュンナの中でイェンス星人としての自分宛てのメッセージをこれから喋るということに他ならない。

 いくら巧妙に人間の人格再現を行っていても、このような悪癖が残るのは人工知能の世の常か。


「何かね?」

「実は……」


 ジュンナは感情の籠もらない事務的な口調で、イェンスを母星に持つ光国グァングージャについての説明を始めた。

 スペースコロニーの中でありながら退化した文化。

 キャリーフレームを扱う技術力。

 そして、反政府軍が言っていたヘルヴァニアを継ぐという勢力のことを。


 説明を聞き終わった訓馬は、無意識に顎に手を当てた。


「彼らは……光国グァングージャの者たちの祖先は恐らく、イェンス星が旧ヘルヴァニア帝国の支配下に置かれた当初に存在したと言われる、信奉の民であろう」

「信奉の民とは?」

「宗教的な考え方を中心としていた人々だそうだ。私も伝承でしか聞いたことがないので、詳しいことは知らないがね」

「宗教……。光国グァングージャの人たちは、ジェイカイザーのことを神像とか神様とか言っていました。実際、ジェイカイザーそっくりな人形がありましたし」

「それは無理のないことだろうね。見てごらん」


 訓馬が手で招き寄せると、ジュンナは椅子に座ったままキャスターを転がし、スライドするように隣へと移動した。

 同時に訓馬はコンピューターを操作し、一つの図面をディスプレイに表示する。


「この図は?」

「ジェイカイザーの設計図……兄上が描いたものだ」


 視線を促そうようにカーソルを動かし、図面の右下に小さく張られた写真データを拡大する。

 それは、ジェイカイザーそっくりの古ぼけた木彫りの人形を映した写真。


「兄はジェイカイザーの意匠に、イェンス星の救世主を使ったのさ」

「救世主……なにか伝説があるのですか?」

「伝説というほどじゃない。日本における日本神話のような、どこで始まったかわからない伝承の一節だ。悪い魔物を救世主が倒し人々に平和を取り戻したとか、その程度のおとぎ話さ」

光国グァングージャの人々はそのおとぎ話を信仰していると……」

「まあ、そういうところだろうね。私としては気になるのは、どちらかと言うとヘルヴァニア勢力の方だが……」


 不意に、机の脇に置いてあった訓馬の携帯電話がピリリと音を立てた。

 画面には太田原の文字が映ったのを認識してから、素早く手に取り通話ボタンを押す。


「太田原、どうした?」

「訓馬博士、ヘルヴァニア人がヘルヴァニア人を襲う理由って……心当たりは無いか?」

「……どういうことだ?」

「先の事件で逮捕した愛国社のパイロット。奴はヘルヴァニア人だった」

「何……?」


 部屋の空気に、緊張が走った。



 【5】


「そういや、神楽浜かぐらはまの方はどうだった?」


 向き合って最初の話題は、照瀬からだった。


「初戦敗退。主力の内宮が抜けたのが痛かった。地区大会は決勝の義賀峰もエースを欠いていたから何とかなったが、全国は辛いよ」

「カグラハマって何ですか?」


 そう言って首をかしげるカエデ。

 異世界出身の彼女が知らないのも無理はないな、と思いつつ軽部は説明モードに切り替える。


「正式名は全国高校闘機とうき大会。高校生によるキャリーフレームバトル・フレームファイトの全国大会だよ」

輝竹島てるたけじま神楽浜かぐらはま町の神楽浜かぐらはま総合闘機場でやるから神楽浜かぐらはま。野球で言ったら甲子園みたいなところだ」

「フレームファイト……」

「まあロボット同士をバトらせる競技みたいなものさ。俺は高校でキャリーフレーム部の顧問やってるからな」


 事実、全国大会たる神楽浜かぐらはまに行っていたためしばらくこの町を離れていたのだ。

 行くからにはベストエイトとかには食い込みたかったが、やむを得ない事情とはいえ主力を欠いたチームでは初戦が関の山だった。


「行けただけいいじゃねえか、神楽浜かぐらはま

「野球部の方は甲子園勝ち進んでるからな。同じく名門部として期待されてる身としてはそうも言ってられないわけだ」


 コーヒーを飲み干し、店員におかわりを注文する。

 カラのカップを手に持った店員がテーブルを離れたところで、軽部はふと思い出した。


「そうだ、照瀬。お前、俺に用事があって呼んだんじゃないのか?」

「ン……まあそうなんだが、女の子がいるトコで話すのもなぁ」

「下世話な話か?」

「いや……まぁ、いいか。最近、お袋が結婚はまだかと急かしが酷くてな」


 そう言って携帯電話のメッセージアプリの画面を見せる照瀬。

 そこには2日に一度単位で催促する文章が返信も待たずに敷き詰められていた。


「……気にするなよ。慌てて作ろうと思って相手なんか見つかるもんじゃないし、変な女に引っかかったらそれこそ泥沼だぞ?」

「わかっちゃあいるが、お袋の心配も理解できちまうんだよ。30過ぎて国家公務員やってんのに浮ついた話ゼロ、って言われたら俺だって焦る」


「別にいいんじゃないですか?」

「「え?」」


 黙っていたカエデの突然の援護。

 思いもがけない方向からのフォローに、三十路ふたりがコチンと固まる。


「ええっと……ほら。恋も出会いも来るときは一瞬ですし、明日突然あっいいなと思う人と出会うかもしれないじゃないですか」

「ハッハッハ……異世界人に諭されちゃ仕方ないな」

「それ、関係あります? タズム界でも女の子は恋もするし結婚もしちゃうんですよ?」

「いやいや、カエデちゃん。君はいいことを言った! そのとおりだよ、悩んでも仕方ないんだ。せめて、出会いのときが来たときに恥じないよう、毎日を一生懸命やることが俺たちにできることだ!」


 数秒笑い合う男二人。

 ふぅ、とため息をついて携帯電話の画面に向かった照瀬をよそに、軽部はカエデへと耳打ちする。


「……カエデちゃん。コンビニの知り合いとかでいいから、合コンとか開けないかな」

「ゴーコンって、男女が何人かであつまるあの?」

「そうそう。頑張るとはいえ、出会いがないと始まらないからさ。頼むよ」

「軽部さんも参加するんですか?」

「そりゃあモチロン……」

「じゃあ嫌です」

「えっ、どうして?」

「それは……」


 カエデが頬を赤らめて何かを言いかけたその時だった。

 背後で大爆発が起こり、乗用車が宙を舞う。

 悲鳴が大通りを包み込み、皆が一方向へと逃げるようにかけていく。


「な、何だ!?」

「はい、こちら照瀬巡査部長! 隊長……え? 愛国社のテロ……ええ、知ってます。なぜなら……」


 通信機越しに太田原と話す照瀬の前でズシンと地響きが走り、テーブルの上のカップが揺れた。

 道を塞ぐ自動車を、巨大な緑色の脚が蹴り飛ばし、ビルにぶつかった車は爆発し炎上をする。


「今、目の前でその事件が起こりましたからね」



 【5】


 富永が乗っている〈ハクローベル〉が、スタンリボルバーを構えてスピーカーで吼える。


「抵抗はやめるであります! 器物破損、騒乱、その他……諸々で現行犯であります!!」


 その背後を照瀬は走る。

 富永とともに自分のキャリーフレームもキャリアートラックに乗せて運ばれているのを聞いたからである。


 ──朝の奴が白状しゲロってくれた。

 太田原曰く、それがこの素早い展開の理由らしい。

 角を曲がった所に停車していたキャリアートラックによじ登り、ドライバーと2,3言葉をかわしてから〈ハクローベル〉のコックピットに滑り込む。

 非番が台無しだとか、そう言っている暇はない。

 目の前の重大犯罪を無視できるようなら、とうの昔にこんな仕事は辞めている。


 操縦レバーを握り、指先から神経を接続。

 コックピット内のモニターに光が灯り、外の風景が映し出される。

 ペダルを踏み込み、立ち上がらせ、脚部のラックからリボルバーを取り出す。

 戦闘準備を整え、戦場となっている大通りへと飛び出そうとした瞬間。


 目の前を閃光が走った。


「富永ッ!!」


 ビルの陰から出た照瀬の目に写ったのは、頭部を吹き飛ばされ後方へと倒れつつある富永機。

 そして、その目の前で緑色のキャリーフレームが赤いモノアイを妖しく光らせながら握っていたのは……。


「ビーム……ライフル? 冗談じゃねえぞ……!!」



 ※ ※ ※



 背後から聞こえるビームの発射音に振り返りたい気持ちを抑え、軽部は2脚バイクのキーを回す。

 アクセルをひねろうとしたところで、後部座席に人の気配。


「カエデちゃん!?」

「軽部さん、どこに行くんですか?」

「ここからなら学校が近いからな。キャリーフレームを取りに行く」

「あのマシーンと戦うんですか? どうして?」


 カエデの言うことは最もである。

 警察や、それで手に負えなければ来るであろう自衛隊に投げればいい。

 しかしそれでも救援に駆けつけようとするのは、友人の危機を救いたいから。

 民間防衛隊証明証を持つ者として、元エレベーター・ガードとして。

 高ぶる気持ちを抑えられないのは、軽部が男だからである。


「理由とかじゃないんだ。俺は、あいつらを止める!」

「……でしたら、私も協力します」

「へ?」

「忘れましたか? 私は、黒竜王軍の戦士だったんですよ?」


 後部座席から飛び降りたカエデが閑散とした道路の真ん中に立つ。

 ハンドバッグの中から短刀を取り出し、天高く振り上げる。

 路面に描かれる漆黒の魔法陣。

 地面を突き破るように出てくる黒い魔術巨神マギデウス〈ショーゾック〉。

 かつて敵として相まみえた機体の中へと、カエデが吸い込まれるように消える。


「これで、私がまた逮捕されちゃっても……軽部さんは気に病まないでくださいね」


 そう言って、忍者のような風貌の機体が跳躍した。

 軽部は間もなく振り返り、アクセルを全開に捻る。

 学校を目指し、2脚バイクが猛った。




 【6】


「警察発表によりますと、現在起こっている事件は反ヘルヴァニア組織・愛国社による犯行であると──」


 モニターに映るニュース映像をBGMに、訓馬は額に手を当てていた。

 ヘルヴァニアを憎む存在が、ヘルヴァニア人だった。

 これが個人間でのいさかいであるならば、話は別である。

 しかし、今のところ犯人と被害者の接点は見当たらない。


「なぜ、ヘルヴァニア人がヘルヴァニア人を排斥しようとする……? そうなれば、彼らとて居心地がよくなるわけではあるまいに」

「金に困ってとかではないのですか?」


 共に悩むポーズをするジュンナが質問を投げかける。

 多額の報酬に目がくらみ、後先を考えずに同胞へ牙をむく。

 そういったシンプルな理由であれば、ことは単純明快なのだが。


「そもそも、愛国社がヘルヴァニア人を引き入れている事自体が不可思議なのだよ。連中にとってヘルヴァニア人とは不倶戴天ふぐたいてんの敵。相容れない存在であるはずだからな」

「つまりは、愛国社にとって都合のいいヘルヴァニア人と、都合の悪いヘルヴァニア人がいるということですか?」

「うむ?」


 愛国社にとって2種類のヘルヴァニア人がいる。

 この視点は、今までにないものであった。

 訓馬の頭の中で、パズルのピースが組み立つように情報が線で繋がり始めた。


「……思えば、愛国社の行動は昔も今も不可解だった。ヘルヴァニア人を狙うということに関しては共通していたが、官僚から民間人から、相手は無差別であり襲撃の目的もハッキリしていない」

「明確な理念や指揮系統・作戦があるわけでもなくバラバラに活動していた……ということですか?」

「あるいは……目くらましのためにわざと一件無差別のように事件を起こしていたか」


 コンピューターから警察署のサーバーにアクセスし、愛国社関連の資料を検索する。

 表示された無数の捜査資料を一つ一つ開き、概要欄に目を通していく。


「……私が知らないだけで、過去にもヘルヴァニア人が犯人だった例がいくつか存在するな」

「ならば、今回の件は珍しいケースでは無いということですね」

「いや、個人間の諍いなどではなく、明確に愛国社へと手を貸しているヘルヴァニア人の一団があるという証明だな」

「彼らに共通点は?」

「ヘルヴァニア人であること。それから……何だろうか」


 一見、共通点は見当たらなかった。

 住所も、性別も、年齢もバラバラ。

 人種だけが共通だが、それは現在求めている答えではない。

 表示する資料を次々と切り替えていると、ジュンナが「あっ」と一言だけ呟いた。


「どうしたのかね?」

「一つだけ共通点が見つかりました。とはいえ、それが理由かはわかりませんが」

「もしかすれば取っ掛かりになるやもしれん。言ってみたまえ」

「はい。この資料に書かれている犯人たちの共通点は、宇宙に住んでいることです」

「宇宙……だと?」


 改めて各人の住所欄へと目を向ける。

 場所こそ統一感はないが、確かにスペースコロニーあるいは月など地球以外が居住地であることが共通していた。


 点が、線で繋がった。


 【7】


 発射された光弾が道路をえぐり、コンクリートを融解させる。

 赤熱した地面に冷や汗をかきながら、付近のビルの陰へと照瀬は機体を寄せた。


「隊長、ありゃあなんですか!?」

「JIOの新型軍用キャリーフレーム〈ザンドール〉だそうだ」

「何で連中が……そりゃあ今朝とかも軍用機は使ってましたが旧式ばかりでした。それが、新型を……ビーム兵器をどうして連中が使えるんです!?」

「事情を考えるのは後だ。笠本のボウズが居ない今、あのビームぶっ放す軍用機を俺たちだけで止めにゃあならん」

「自衛隊を呼べば良いでしょう! 富永の頭もふっとばされて、俺たちの手には余り過ぎます!」

「富永の首が飛んだ風に言うんじゃねえよ。上層部は自衛隊なんぞの手を借りては警察の名折れだとかほざいてる。帰してもらえるのはお前の首もふっ飛ばされてからだな」


 面子メンツにこだわるのはこの組織の悪い癖である。

 前線に立たされる末端は、命がけだということを理解していない。

 しかし、配られたカードがこれだけだとしても、やるしか無いのが職業人の辛い所でもある。


「照瀬、ちょいと横にズレとけ」

「え? ええ……のわっ!?」


 言われたとおりに機体を横にズラした途端、隠れていたビルを貫いてビーム弾が隣を通り抜けた。

 赤熱した風穴を明けたビルの奥から、〈ザンドール〉が赤いカメラアイを鈍く光らせる。


 気合を入れてペダルを踏み抜く勢いで押し込み、飛び出した瞬間に狙いをつけてスタンリボルバーを連射。

 しかし〈ザンドール〉はその場から動きもせず、左腕に装着したビームシールドを展開し、粗末な鉄の弾を受け止めその熱量で蒸発させる。

 反撃とばかりに放たれたビームを銃口の動きから予測し、前もって回避しつつ接近。

 迎え撃つためにとビームセイバーに手持ち武器を持ち替えた敵機が、素早い縦の一撃を〈ハクローベル〉へと放つ。


 あわや両断といった瞬間に重心を横にずらし、横転しつつ素早く回り込む照瀬機。

 側面から電磁警棒の一撃を食らわせようと武器を持ち替えた瞬間、細いビームが天から眼前へと降った。


「ガンドローンだとっ!?」


 咄嗟に飛び退き、浮遊する小型砲台が放つ光線を回避。

 しかし、その間に〈ザンドール〉は体勢を立て直し間合いを延ばしていた。


 せっかく懐に潜り込めたというのに、もうこの手は使えない。

 それどころか単発のライフルはともかく、ガンドローンまで使われては単機では勝ち目がない。


(せめてあの浮遊砲台が無ければ……)


 照瀬のその思いが届いたかのように、背後から飛来した何かがガンドローンへと突き刺さった。

 それは一瞬だったが、光り輝く手裏剣の様な何か。


「光魔手裏剣!!」


 上空から照瀬の前に着地した〈ショーゾック〉が手から無数の手裏剣を放つ。

 光の弾幕をビームシールドで受け止める〈ザンドール〉だったが、シールドに守られていないガンドローンが次々と爆散していく。


「お前は……!?」

「照瀬さんを助けるために推参しました」

「その声、さっきのカエデとかいう……!」

「もしもこれが違法行為なら、せめてこの戦いの間だけはお許しください! カトンソード!!」


 再び〈ショーゾック〉が跳躍。

 空中で炎の刃を持った忍者刀を取り出し、〈ザンドール〉へと斬りかかる。

 しかし不意打ちでもない真正面からのジャンプ斬りに狼狽えもせず、敵機は後方へと飛び退き同時にビームライフルを数発発射。

 素早いステップで軽快にビームをかわすカエデの〈ショーゾック〉だが、回避の方向を誤ったのか背の低い建物に足を取られてしまう。

 その隙を見逃さず突き刺さる光の弾丸。

 直撃とまでは行かなかったが、〈ショーゾック〉の右腕が肩の部分から焼き切れ吹き飛ばされてしまった。


「おい! もういい! 下がれ!」

「軽部さんが来るまでは……私が!」


 何が彼女をそこまで駆り立てるのか。

 片腕を失った形の機体で、なおも戦おうと立ち上がる。

 しかし、動力系がやられたのか動きの鈍い〈ショーゾック〉。

 手負いの忍者を、ビームライフルの銃口が捉える。

 今にもビームが放たれるその時、ビームライフルの銃口に何かがぶつかり爆発を起こした。


「待たせたな、カエデちゃん!」

「軽部さん!」


 照瀬のモニターに映ったのは、ピストル型の武器を構えた汎用キャリーフレーム〈アストロ〉に乗る軽部の姿だった。



 【8】


「カエデちゃん、君の心意気は伝わった。後は俺たちに任せてくれ」

「でも……はい。どうかご無事で」

「ああ!」


 一瞬の白光とともに姿を消す〈ショーゾック〉。

 その跡から走り避難するカエデの姿を確認してから、軽部は〈ザンドール〉へと向き直った。


「照瀬、相手の状況は」

「ビームの射撃兵装は今ので潰せた。あとはビームセイバーとビームシールドだ」

「光の剣盾相手なら……チャンバラをやるには不利か」


 ビーム兵器は、対応兵装を持たない相手に対しては一撃必殺に等しい武器である。

 刃状にビームを展開するビームセイバーだけでなく、ビームシールドでさえも発振されているビームを押し付けられてはたまったものではない。


 警察機体たる〈ハクローベル〉、競技用の〈アストロ〉。

 軍用機でない2機に耐ビーム兵装などあるはずもなく、数では優位を取っていても油断のならない状況である。


「軽部。ここはエレベーターガード時代に編み出した、あれを使うときかもしれん。腕は落ちてないよな?」

「ああ、照瀬。毎日のように部員と模擬戦やってるのは伊達じゃねえところを見せてやるぜ!」

「よしわかった……行くぞ!」


 照瀬の掛け声に合わせて、軽部はペダルを踏み込んだ。

 バーニアから炎を吹かせ、〈ザンドール〉への距離を一気に詰める。

 先行する照瀬機を迎撃しようと、横薙ぎされたビームセイバーを屈んで回避し、懐に潜り込む〈ハクローベル〉。

 反撃とばかりに電磁警棒を振るうも、敵機は後方へと飛び退き空を切らされる。

 しかし、それこそが狙いだった。


「軽部ェッ! 俺を踏み台にしろォッ!!」

「背中、借りたぜぇッ!!」


 後方の〈アストロ〉が屈んだままの〈ハクローベル〉の背中を踏みつける。

 照瀬機はそのまま軽部機を持ち上げるように姿勢を上げ、勢いを背面越しに受け取った〈アストロ〉が跳躍した。

 前と上方という2方面からの同時攻撃に、対応を迷うように〈ザンドール〉が足を止める。


「ツイン!」

「ガード!」


「「アタァーーック!!」」


 重力を活かした踏みつけ蹴りと真正面からの警棒の一撃が同時に敵機へと突き刺さる。

 頭部をもがれ、胴体へと電磁警棒を突き刺された〈ザンドール〉はそのまま後方へと派手に倒れ、道路へとその機体をめり込ませた。


 慌てて脱出する〈ザンドール〉のパイロットだったが、後方に待機していた複数のパトカーにサイレンを唸らせながら逃げ場を塞がれる。

 こうして、白昼堂々と発生した愛国社によるキャリーフレーム暴走事件は、犯人の手に手錠がかけられたことで終結した。


 この事件における二人のヒーローは、その機体の拳を無言で打ち付け、勝利を祝う。

 事件の行く末を見守っていた野次馬の群れが、歓声という形で彼らを祝福した。



【9】


「軽部さん、素晴らしい戦いでしたね!」

「ちょちょ……カエデちゃん?」


 コックピットから降りた軽部を待っていたのは、感極まったカエデの抱擁だった。

 若い女性に抱きつかれるという初めての状況に、先の戦いのヒーローもたじたじである。

 その様子を見てか、他人事のように照瀬がハハハと笑った。


「仲いいなぁ、お二人さん。女日照りの身としては、嫉妬しちまうよ」

「何を言っているんですか照瀬さん! ふたりの息のあったコンビネーション攻撃、思わず見とれてしまいましたよ」

「まぁ、軽部とは古い仲だからあれくらいは、な?」

「お、おうよ!」


「いいなぁ……」


 肩を抱き合う軽部と照瀬を見て、カエデがぽつり。

 寂しそうな表情で瞳をうるませた彼女が、表情を隠すように顔を俯かせる。


「私……この世界に来たばかりで友達とかもまだいないから、長い時を過ごしたお二人が、本当に羨ましいです。嫉妬するほどに」

「カエデちゃん……」

「わかっているんです、当然のことだって。私はこの世界に刺客として送られた、あなた達の敵。だから、こうやって普通の人間のように暮らせているのは、この上ない贅沢なんです」


 顔を上げ、目尻に雫を湛えたまま、カエデが無理やり作った笑顔を軽部へと向けた。


「だから、これ以上の贅沢は望みません。私は一人ぼっちでも……」

「何を言っているんだよカエデちゃん」


 軽部が発した言葉に、驚いたような表情を見せるカエデ。

 勇気を振り絞って、軽部は彼女の震える両肩に手を載せた。


「最初はそうだったかもしれないけど、今はマジメにやってるんだ。幸せを求める権利はある。友達を作ることだって許されるよ」

「軽部の言うとおりだ。お前さんの助力があったからこそ、今日の戦いだって勝てた。もう、俺達の仲間だよ」

「軽部さん、照瀬さん……!」


 涙を拭い、今度はとびきりの笑顔で軽部へと抱きつくカエデ。

 軽部は驚きながらも、平静を装いつつゆっくりと彼女の細い腰へと腕をまわした。

 しばらくそうしていると、照瀬が面白くなさそうに背を向け、タバコに火を灯す。


「ま、とはいえだ」

「え?」

「無免許に加え、許可証なしの参戦は褒められんからな」

「えっと……逮捕とかされちゃうんでしょうか?」

「……普通だったらな。まあほら、助けてもらった恩もある。後日にそれらの試験を受けに来て、合格すれば免罪だよ」


 意地悪を仕掛けたかったのだろうが、カエデの態度にビビったのが丸わかりである。

 照瀬はバツが悪そうに「仕事に戻る」と言って、倒れたキャリーフレームの方へと駆けていった。



 ※ ※ ※



「今、現場から連絡が入った。先の事件の犯人も、やはりヘルヴァニア人だったそうだ」


 机に携帯電話を置いた訓馬がそう伝えると、ジュンナは小さく頷いた。


「やはり、宇宙派のヘルヴァニア人達によって、何かが起ころうとしているのは間違いなさそうですね」

「ああ。ことは地球の……いや、太陽系全体に関わることかもしれん。私も微力ながら調査には協力するよ」

「頼みます。それでは」


 深く丁寧なお辞儀をして、部屋を出ていくジュンナ。

 彼女の背中が閉じられる扉で見えなくなってから、訓馬は再びコンピューターのモニターに目を向ける。


「私としては今、ヘルヴァニアよりもこちらのほうが気になるのだがね……」


 ジェイカイザーの設計図の隅。

 搭載する人工知能と書かれておきながら空白のままの枠をにらみながら、老いた目を細める。

 人工知能があれほど、人間クサく振る舞うことに、疑問が生じていた。

 ジュンナでさえ、感情はあるものの希薄で、言ってしまえばクールな性格という枠から出ていない。

 ジェイカイザーのような熱く、愉快で、まるで人間そのもののような人格がどこから来たのか。

 それが、今の訓馬が抱く最も大きな疑問だった。


「ジェイカイザー、お前は何者なのだ? 兄上よ、あなたは禁を犯してまで、なぜジェイカイザーを作ったのだ?」


 疑問に答えてくれる相手はいない。

 訓馬以外は無人の部屋の壁だけが、彼の質問を受け止めるも無言を返すだけだった。



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登場マシン紹介No.34

【ハクローベル】

全高:8.1メートル

重量:5.9トン


 日本の中でも、特にキャリーフレーム事件が多く発生する代田署へと先行配備された、七菱製の最新型警察用キャリーフレーム。

 前身機であるクロドーベルから、脚部がよりスマートになっているがドルフィニウム合金製の装甲によって安定感を確保。

 更にパワーアップしたオートバランサーによって軽業師の様な芸当も理論上は可能であるなど、運動性が遥かに向上している。

 名前は前身機の由来である「黒いドーベルマン」から発展し、「白い狼」からもじっている。

 武装として、民間機だけでなく軍用機に対しても効果抜群の電磁警棒を引き継ぎつつも、中距離火器として帯電したリベット弾を打ち出すスタンリボルバーが新たに採用された。



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【次回予告】


 ついに木星へとたどり着いた裕太が連れてこられたのは、エリィの実家だった。

 彼女の実父であり半年戦争の英雄である銀川スグルに「娘はやらん」と告げられてしまう。

 あれよあれよと言う間にスグルとキャリーフレーム戦を行う羽目になった裕太に、勝ち目はあるのか。


 次回、ロボもの世界の人々35話「勇者VS英雄」


『相手は銀河最高峰レベルのパイロットだが、恐れるに足りん!』

「恐れない要素がどこにあるんだよ! 勝てるわけ無いだろ!」

『大丈夫だ! 我々は勇者である! つまりは主人公なのだからな!』

「相手も戦時中は主人公みたいなもんなんだぞ……!」

『ぬううっ!?』

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