第2話:イギリスからの転校生

両親から、家計の財政が厳しい事を聞いた。

私の家は古い城下町で八十年続く、和菓子屋を営んでいる。

しかし昨今の和菓子屋を取り巻く状況はあまり芳しくなく、うちも例外では無かった。

父は二人とも大学に行けるようには努力すると言っていたが、最近うちにお客さんが来ない日の方が多いのを知っている。

私は大学に行くのを諦めようと思った。

どうせなら、千歳に行って欲しいのだ、私は千歳の足枷にはなりたくない。


父の提案として、外国からの留学生をホームステイさせたいと言う事だった。

家には空いている部屋が沢山ある。

留学生を受け入れている間は、市から受け入れ補助で家賃が入る。

留学生は日本人とイギリス人のハーフで、私達姉弟と同い年らしかった。

9月から私達と同じ高校に進学する事になるらしい。

私達ホストファミリーは、彼に日本文化を伝えたり、日常の世話をすることが主な役目だそうだ。

私は家に他人が入ることに対して、拒否感があった。

しかし、財政状況を考えるとそうも言ってられない。

受け入れる事にしよう。


夏休みに入って最初の土曜日、私達は空港まで彼を迎えにいった。

空港島は海風が強く、潮のにおいがした。

私達は彼が乗ってくる飛行機を待った。

エスカレーターを降りてきた姿を見て分かった。

とても美しい整った顔つきをした少年だった。

まるで陶器で出来た人形のよう。

彼は私に会うなり、抱きついた。

まるで、昔からの親友であるかのようなフランクなものであるのにも関わらず、熱を帯びていた。

咄嗟に、私は離れた。

千歳は彼に英語で何かを言っている。

その言葉は聞き取れなかった。

彼は私に対して、「ごめんなさい」と言った。

外国人は私達日本人よりもフランクなのだろうか?

私の体にはまだ彼の熱がこもっていた。

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