検証

小太郎


 男に抱かれた銀二の後を追うように、群の猫たちはぞろぞろと後に続いた。客観的に見ればかなり奇妙な光景であるが、幸い傍観者は居ない。忌々しい鴉どもは寝入っている時間だし、この界隈に犬は滅多に現れない。


「どこまで行くのかなぁ?」


 小太郎が不安そうに銀二を見上げる。

 肝心の隊長は、男に撫でられる度にふにゃふにゃとしてしまい役に立ちそうにない。常に矍鑠としていた隊長をあのように骨抜きにしてしまうとは恐ろしい術だ。でも。


「いいなぁ」


 そんなに気持ちが好いのなら是非とも己も味わってみたい。幼く危機感の薄い小太郎がそう思っても致し方のないことであった。

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