第2話:穴を掘ろう。(これが本当の墓穴というものか。)
私は穴を掘ろうと思った。大きくはない人が一人入るぐらいの穴だ。
その穴は私の終の棲家となる場所だ。
穴を掘るには私の手だけでは、至らないらしい。もう手がボロボロになって、指先から血が滲んでいた。
私は辺りに散らばるロボット達の手を切り取り、自分の手の代わりにした。鋼鉄の手は傷も付かずに掘削をしてくれる。
私の心がそれぐらい強ければきっともっと上手く生きられたのかも知れない。
掘り進んでゆくと、遠くで雷鳴が聞こえた。
神々しいまでの光と鈍い音を響かせている。私は咄嗟に雷が落ちた宇宙船に向かって歩いて行った。
いかづちに打たれた宇宙船は、新しい生物の様に囂々となにかを轟かせていた。きっとバックアップシステムが作動しているのだ。いろいろな計器の値が動き出していた。それがひとしきり収まるのに半日ぐらいかかった、朝がくるのには少し早い一番真っ暗な所でそれは形作られていた。
それはこの星で最初で最後の生命誕生だった。
私の悪い予感は当たっていた。
この宇宙船には乗組員以外の人類を載せていた。
それはこの航海の目的が、ただの視察だけでは無く、人類の新たな土地での繁栄を求めていたからに他ならない。そして目の前に一人の少女がいた。とても美しい少女だ。きっと世界中の遺伝子を選りすぐって出来たものに違いない。
私はすぐさまその少女の首元に手をかけた。
こうするしか無かったのだ。
少女は言った「私達は新たなステージに到達しました。」、「私達は夢の時空移動を可能にしたのです。」、「私達の夢はついに叶ったのです。」
まるで壊れたテレビみたいだった。
見なかった事にして走りさった。
ただ宇宙船から離れたかった。
なんだろう。涙がこぼれた。こんなハズでは無かったのに。苦しい。口の中では砂の味がした。
私は用意した穴に横になった。そして土をかけた。この星の土はねっとりとした嫌な湿り気があった。
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