涙は心友を呼ぶ

叶時

第1話

春一番が吹いて春が訪れた2月のある日。

私は座りながら雲を眺めていた。

(最近、暖かくなってきたな~。)

そう思いつつ缶のココアをふーふーしながら私はぼっーとしていた。

すると、お父さんとお母さんと子供の声が遠くからきこえる。私はふと聞こえた方に耳をかたむけると親子仲良く散歩してるのがわかる。

(親子仲良くて微笑ましいねぇ。なんだか、懐かしく感じるよ。)

そして、また私は顔を上げて雲を眺めた。

ーー

「ほんとに、ほんとにごめんね、秋葉。お母さん達今とても忙しいから一緒に遊べなくなっちゃった。だから、冬流と一緒に遊んでてね。」

「うん!わかった!お仕事頑張ってね!」

「ありがとうね。じゃあいってくるね」

「いってらっしゃい!」

小さい頃から両親は私たちのために一生懸命働いていたのであまり両親との思い出はあまりない。けれど、私には冬流という弟がいた。

私と弟は姉弟といっても双子の姉弟だ。両親は忙しい人達だったので物心がつく前からいつも二人であそび、二人で助け合いながら生きてきた。弟はおとなしい性格だったけど優しい子だった。

お父さんとお母さんと話すのは「おやすみ」の一言だけ。けど、その声が聞けるだけで私たちの心は温かい気持ちになれた。

朝早くにお父さんとお母さんは仕事にいき、夜遅くに帰ってくる。そして、私たちはお父さんとお母さんの少しでも助けになれるように家事を分担したり、心配させないために宿題を終わらせたり、一回も喧嘩せずに仲良く過ごしてきた。そのため、学校の友達と遊ぶことはなかったけど冬流がいつもそばにいてくれたので寂しくなかった。ある日、半年に一回あるかないかぐらい、両親が早く帰宅するときがある。そのときは、母が淹れてくれるココアを家族みんなで飲みながらゆったり過ごすのが唯一の団欒だった。また、その日はいつもより時間があるので学校生活の話や友達の話などを両親にすると二人ともニコニコしながら聞いてくれる。また、一緒にお風呂入ったり、寝る前には、お話を聞かせてくれる。この日だけが一年の中で唯一の楽しみであった。

時がたち、私たちは中学三年生になった。私たちは今までと変わらずにお互いに助けあいながら生活をしてた。受験勉強しながら家事を分担したり、お父さん達のお弁当を作ってあげたりなどしてて大変だったけど苦ではなかった。冬流も一緒に手伝ってくれたり一緒に勉強してくれたので全然寂しくなかった。

試験約一週間前なったある日、教室でいつものように勉強していた時だった。

校内放送で「3年2組の赫月秋葉さん、冬流くん。職員室にきてください。」

(この声は、担任の佐藤先生だ。いつもとはちがう声だな。私たちなんかやらかしたのかな)

突然の呼び出しに驚きつつ、私は冬流を呼んで職員室に向かった。

秋葉「私たちなんかやっちゃったかな?」

冬流「あれじゃない?進路的なことじゃない?」

秋葉「あ、なるほどね」

私達はこれから起こることを想像しながら歩いていると職員室についた。ドアをノックして職員室に入ると担任の先生が暗い顔で座っていた。私達はいつも明るい佐藤先生がこんなにも暗いところを見たことなかったので「何かあったんですか?」ときいた。

佐藤先生はふぅーと深呼吸するとこちらの方へ向き直してしっかりと私達の目をみる。

そして、先生は静かに言い放った。

「赫月さんたちのご両親が先ほどお亡くなりなったそうだ。」

まるで、時がとまっているみたいだった。そして、私の中で灯されていた火が消えていったのを今でも覚えている。

「え、何言ってるのですか?先生。ドッキリですか。」

「ドッキリのはずがないだろ!!」

先生の野太い声が職員室中に鳴り響いた。

秋葉は無意識に訳わからんことを言っていた。

けど、僕もまだ言っている意味がわからなかった。

(父さんと母さんが死んだ…?何言ってるんだ。だって、昨日寝る前におやすみって言った時、笑顔でおやすみって言っていたんだぞ…)

冬流くんは下を向いたまま顔をあげない。

秋葉さんは目を開けたまま呆然と立ち尽くしている。それもそうだろう。いきなりこんなことを言われたら誰だってこうなるはずだ。私はかける言葉もなく下を向いていた。

ふと、電灯で照らしだされた二人の影をみた。

気のせいだろうか。彼らの影がだんだんと黒くなっていく。そして、その影はまるで笑っているかのように揺れて見えた。

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