第307話 思えばいと疾し15


「「「「「花々先生! イヴォンヌ! 優勝および準優勝おめでとう!」」」」」


 紙吹雪が、舞い散った。


 とりあえず、打ち上げということで、食堂に出向くと、異国部の卒業生とゼルダ教師が、祝福してくれた。


 一義は、画策している一端であるから知っていたし、かしまし娘も同様だ。


 丁度「イヴォンヌが武闘会に惹かれて現われるだろう」と昆虫採集のように捉えて、同窓会を開いたのだ。


 一番スケジュールが読みにくいのがイヴォンヌであったから。


「凄かったね! 花々先生でなきゃ勝てませんよ」


「凄く……強かった」


「だね! 人間でなら最強の部類に入るんじゃない?」


「いや……」


 イヴォンヌは、チラリ、と姫々と音々を見る。


「俺はまだまだだ」


「あう」


「単純な数値でなら、ぬきんでていますわね。わたくしの炎熱魔術は防げないでしょうけど」


「なんならやるか?」


「上等ですわ」


「たわけ」


 一義が、チョップ。


「同窓会だから野暮は無し」


「はい」


「だぜ」


「花々先生~。お酒飲みましょうよう~」


 ゼルダは、すっかり出来上がっていた。


「旦那様?」


「どうぞ」


 花々なら、うわばみだから、心配もない。


「それで久しぶりだけど」


「何やってる?」


「死の商人……」


「わたくしたちは座学庵で教師をしていますわ」


「適当に生き延びてる」


「警邏隊ですけど」


 様々な模様だ。


「一義先生は変わらずヒモですか?」


「ま~ね~」


「私が養ってあげましょうか?」


「私でも……」


「僕でも良いよ? これでも金持ち」


「あう……その……」


「わたくしもどうしてもと仰るなら」


「…………」


「俺が一緒になれば花々先生と何時でもやり合えるんだよなぁ」


「趣味の悪い……」


 嘆息。


 魚と野菜を食べながら、甘酒を飲む。


「結局俺を嵌めるために企画したのか?」


「そ」


「明日は、皆で、先生たちの団子茶屋を盛り上げるよ!」


「ウェイトレスかぁ」


 さすがに人数的に入りきらないため、客引きが大半になるが、それでも宣伝の最上級だろう。


 そんなこんなで、宴会をした後、温泉に入る事になった。


 さすがに多人数のため男女別。


 色々と黄色い声が響いて、


「大っきい」


 とか、


「細いね」


 とか、


「あう」


 とか、


「どうよ!」


 とか、


「生理崩れてるからなぁ」


 などと、聞きたくもない情報が、一義には得られた。


 風呂上がり。


 牛乳を飲んでいると、一番にイヴォンヌが女子風呂から上がってくる。


「やっぱり男の人って風呂が短いんだな」


「女性ほど整える物がないからね」


 苦笑だ。


「その……ありがとうございます」


「珍しいね。丁寧語」


「わかっちゃいるんだが……とりあえず礼をと」


「明日協力してくれれば採算が取れるから」


「客引きね」


「ナンパされたらぶん殴っていいよ」


「先生、力が嫌いじゃなかった?」


「そりゃ僕だって軽口くらいは叩くよ」


 そういうことだった。


「一義先生は他の先生を抱こうと思わないのか?」


「訳ありでね」


「わけ……」


「男の矜持がかかってますんで秘密です」


 伸ばした人差し指を、唇に当てる一義だった。


「にしても花々先生は強いな。やっぱり」


「否定はしない」


「それなのに生理も乱れないでおっぱい大きいし……」


「そこを気にするのか」


 プッと吹き出す一義だった。


「むぅ」


 乙女にも色々ある。

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