第117話 剣劇武闘会03
「つまり」
「どういうことなの?」
「…………」
ビアンカとジンジャーとハーモニーは胡乱な瞳で一義を睨んだ。
ビアンカは研究室から引っ張られてきた。
ジンジャーは新聞部から捕らわれた。
ハーモニーは王立魔法学院の特別顧問として最初から特別棟にいたので捕まえるのは簡単であった。
そして特別棟の最上階……そこに備わっている王室御用の部屋にて一義たちは顔を突きつけあわせていた。
一義と姫々と音々と花々とアイリーンとビアンカとディアナとエレナとジンジャーとハーモニーとジャスミンが王族専用の部屋にいたのである。
アイオンとキザイアは王都に残っている。
さて、
「だからそれをこれから説明してあげるって言ってるんだよ」
一義は軽い罪悪感を覚えながら、
「何故自分がこんな気分に?」
と自問せざるをえなかった。
ちなみに一義の右腕には、
「えへへ。一義様ぁ」
などと言葉をこぼしているディアナが抱きつき、左腕には、
「ふむ。俺としてはこれも悪くないな」
ジャスミンが寄り添っていた。
「両手に花だね」
花々がおかしそうに評した。
「女王陛下とお姉ちゃんがハーレムに入ったのは知ってるけど何で蛇炎の騎士様まで?」
これはアイオンの妹ジンジャーの言葉。
「ディアナで構いませんわよジンジャー。むしろそう呼ばなければ打ち首です」
「ディ……ディアナ……」
狼狽しながらディアナを名前で呼ぶジンジャー。
「むしろ何でこんなにハーレムに属している人間がいるのか……それこそ俺が説明を求めたい気分だぞ?」
姫々と音々と花々とアイリーンとビアンカとディアナとジンジャーとハーモニーという色とりどりの美少女を眺めながらジャスミンが言う。
紺色の瞳には憂いと怒りとが等分に混ざり合っていた。
閑話休題。
「で、こちらがエレナですわ。波の国の第二王女です」
そう言って桜色の美少女エレナを紹介するディアナ。
「っ!」
「……っ!」
「…………」
ビアンカとジンジャーは驚き、ハーモニーは目をパチクリとさせた。
「…………」
既に状況を知っている一義は、真面目な会話ということで両腕を解放され、学院長の秘書の淹れた紅茶を飲んでいた。
そしてディアナはエレナを取り巻く現状を話す。
「それではエレナを守るためにディアナはシダラに身を移したというんですの?」
「結果論だけどね」
ビアンカの推察に肩をすくめるディアナだった。
「私としては剣劇武闘会で一義様の格好いいところを見たいのが優先されますので」
偽善と割り切る。
「それで話を本筋に戻しますけれど……」
ビアンカは一義に厳しい目を向けた。
「エレナを取り巻く問題が話の本筋でしょ?」
すました顔で一義が言う。
「それはまぁ大事なことではありますが……」
「ともあれ」
一義は断じる。
「そういうわけだからエレナ最優先と考えて欲しい」
「それはわかっていますわ」
「ビアンカが聞きたいのはそんなことじゃないよ。それは私も同様だしハーモニーも同意見だと思うな」
これはジンジャー。
「…………! …………!」
ハーモニーは手をバタバタと上下に振るう。
「じゃあ何さ?」
問う一義。
答えたのはビアンカ。
「何ゆえジャスミンまでハーレムに入ってますの!」
「異なことを聞くね」
一義は飄々としている。
「ジャスミンが僕に惚れたからだよ」
「またそういうことを……!」
ビアンカが言葉のマグマを吐こうとするのを、
「それがわたくしのご主人様です故……」
「それが音々のお兄ちゃん!」
「それがあたしの旦那様だからね」
かしまし娘が牽制する。
一義は憮然。
「まるで僕だからしょうがないって聞こえるんだけど」
「然り」
かしまし娘は躊躇いなく言い切った。
「まぁたしかに」
これはアイリーン。
「ですわね」
これはビアンカ。
「納得」
これはジンジャー。
「…………」
これはハーモニー。
「要するに君たちは僕がジゴロだって言いたいの?」
問う一義に、
「他にありますの?」
ディアナが、
「何を今更」
と反論し、ジャスミンが、
「憎らしいくらい事実だぞ」
と断定する。
一義はまたもや憮然として紅茶を飲むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます