第65話 いけない魔術の使い方01
「つまり、どういうことなんですか?」
アイリーンが金色の瞳に嫉妬をのせて問う。
「つまり、どういうこと?」
ジンジャーが燈色の瞳に嫉妬をのせて問う。
「一義、君は手が早いねえ」
シャルロットは深緑の髪をかきあげながらカラカラと笑う。
「まぁどうということもないんだけど……」
一義は朝の味噌汁を飲みながら言い訳するように呟く。
「炎剣のハーモニーが僕に惚れちゃって……鳥の国の炎剣騎士団は壊滅……これを期にハーモニーは鳥の国から霧の国へと亡命……僕のハーレムになった次第だよ……」
そう言って味噌汁を飲む一義。
「…………」
ハーモニーは和の国の味噌汁という未知の味に感動したのか姫々におかわりをせがんでいた。
「はいはい。ハーモニー様……」
姫々は家でのいつもの格好……メイド服である。
味噌汁を美味しそうに飲むハーモニーに気を良くしたのか姫々は勇んで味噌汁のおかわりをつぐ。
「それでお兄ちゃん! どうするの!」
「うーん。一応今日の内にディアナに声をかけてハーモニーをアイリーンと同じく特別顧問にでも出来ればなぁって思ってるけど……」
「一般生徒じゃいけないのかい?」
そう問う花々に、答えたのは一義ではなくアイリーンだった。
「それは無理だと思います……。炎剣のハーモニーは近隣諸国にすら名をはせた大魔術師ですから。炎剣騎士団を率いる大魔術師たる幼い少女。そんな存在を一般生徒にするわけにはいきません。私がそうであったように……」
「アイリーンといいハーモニーといい……勇名どころを連れてくるね一義は」
シャルロットがからかうように言うと、
「たんなる偶然だけどね」
淡々と味噌汁を飲みながら一義は答える。
「これで一義のハーレムは姫々さん、音々さん、花々さん、アイリーンさん、ビアンカさん、ハーモニーさん、私……となるわけですか」
「ああ、ディアナとアイオンも含めてね」
そんな一義の補足に、
「なんでそこで女王陛下とお姉ちゃんの名前が出るんです!?」
「だってディアナとアイオンも僕のハーレムに入りたいって言ってきたんだもん。僕のせいじゃないよ……」
「たしかにお姉ちゃんは可愛いモノ好きだけど……」
くぅぅと呻くジンジャー。
「ところで僕たちがドラゴン狩りに興じている間にそっちに進展はあった?」
と今度は一義が問う。
「ふふふふふ」
とジンジャー笑う。
「聞いて驚いてください! なんと! 私ことジンジャーはファイヤーボールを使えるようになりましたよ! もうすぐの昇進試験が楽しみです」
「そっか。三過生になるわけだ」
「はいな!」
喜ばしいと笑うジンジャー。
「アイリーンに教えてもらったの?」
「はい……! 後お姉ちゃんにも……!」
「ああ、アイオンね。妹が魔術を覚えたならめでたいだろうね」
「はいな!」
一義は話題を変える。
「そういえばシャルロットは運び屋はしなくていいの?」
「飛び込みの仕事が無ければしばらくは大丈夫だろうさ。なによりここは面白い。もう少しくらいここにいてもいいだろう?」
「そりゃ全く構わないけどさ。君までハーレムに入るつもりじゃあるまいね」
「うーん。僕とて一義にはドキッとすることはあるけどね。それでも縛られるほどではないよ」
くつくつと笑うシャルロットだった。
「シャルロットさんまでハーレムに入ったら本当にわけのわからない集団になりますよ」
とこれはジンジャー。
「いいんじゃないかな! もう十分わけわかんないんだし!」
とこれは音々。
「あたしたち……かしまし娘にとっては注がれる愛情が減る分だけ損していると言わないわけにはいかないけどね」
とこれは花々。
「大丈夫ですよ……。いつだってご主人様はわたくしたちのことを考えていらっしゃいますから」
とこれは姫々。
「…………」
一義の隣に座っているハーモニーが一義の袖を引っ張る。
「どうしたのハーモニー?」
「…………」
「私はここにいてもいいのか、だってさ」
ハーモニーの言葉を代弁する花々。
「大丈夫だよ」
一義はハーモニーの桃色の髪を撫でる。
「僕は可愛い女の子が大好きだからね」
「一義の場合女の子なら誰にでも可愛いって言うんじゃありませんか?」
とこれはアイリーン。
「たしかに。それはありますわね」
とこれはビアンカ。
「まさか。選別と云う残酷によって選ばれるから美少女は美少女足りえるのさ」
そんなこんなで銀色と黒色と赤色と金色と青色と緑色と燈色と桃色の美少女たちと朝食をともにする一義であった。
そして「御馳走様でした」と朝食を終えると、一義は音々とともに洗面所へと向かう。
姫々は朝食の食器洗いだ。
妙に姫々と気の合うアイリーンは姫々の食器洗いの手伝いをする。
花々は一義の制服を準備する。
ビアンカとジンジャーは王立魔法学院の制服に着替える。
ハーモニーはパジャマから……花々によって準備されたゴスロリの服装に着替える。
シャルロットはスーツに着替え、王立魔法学院から借りてきたシェイクランスの台本を手に取るのだった。
そして一義は音々によって身だしなみを整えられ、花々によって王立魔法学院の制服に着替えさせられ、姫々の出したお茶を飲みながら、全員の準備を待つ。
ビアンカとジンジャーとハーモニーが真っ先に準備を終えて出てくる。
その後、姫々と音々と花々とアイリーンが着替えて出てくる。
アイリーンの服装はスーツだ。
一義はそれらのハーレムの壮観さを見て「ほう」と吐息をつくと、
「みんな可愛いね」
と率直な意見を言った。
「みんな……ですか……」
「みんなかぁ」
「みんな、ね」
「みんな、ですか」
「みんな、ですのね」
「みんな、か」
「…………」
ハーモニーが無言でクイと一義の制服の袖を引っ張る。
その桃色の瞳は可愛らしい嫉妬をはらんでいた。
「可愛いなぁ。ハーモニーは……」
そう言ってハーモニーを猫っ可愛がりする一義。
「…………!」
頬を朱に染めるハーモニー。
「ご主人様……それは反則かと……」
「お兄ちゃん! それ反則!」
「旦那様。それは反則だと思われるね」
「一義、反則です」
「一義、反則ですわ」
「一義! 反則だよ!」
ハーレムの美少女たちが嫉妬する。
「だって可愛いんだもーん」
そう言ってゴスロリのハーモニーを抱き上げる一義。
そうこうして一義とハーレムたちは王立魔法学院に登校するのだった。
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