第139話「料理のできない異世界人は神殿送り」

今週から連載再開です。


毎週月曜日の夜22時を更新目安としております。


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前回すっかり記載の漏れた今回活躍する4名。


〇ミリアム:マイルズの姉11歳。冒険者としての実績あり。実家からその実力を認められている。加えてマイルズが趣味で作った自動装着型武具のお陰で竜ぐらいなら束で相手をできる。映像機を販売するためにアイドルデビュー済み。鎧のイメージは「女神アテナのクロス」


〇竹中 衛:男から女の子に改造された18歳。勝の甥。自動装着型武具、槍使い。装着発動時に「アムド」と叫ぶように強制されている。マイルズ護衛の為、勝さん一号に遺跡前の所まで運ばれる。さらっと遺跡のまーちゃんハウスにいたので異世界宗教の皆さんの頭痛の種1。


〇白石 香澄:黒い18歳の女の子。あまりの黒さにぐう鱈も引く。衛君(♀)の好感度を稼ごうと大人しくしている。地球魔術の天才。すでに師匠を超えており、衛が転移に巻き込まれた痕跡から無理矢理世界を渡る。


〇ティリス:年齢不詳。「とある国家の腐敗」で姉として話に登場。次代の魔王候補。ヴァンリアンスの為に神(上級悪魔)と取引をし魔族となる。現在陰からマイルズを護衛中。


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では本文をどうぞ

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 ピンチなのです!


 ピンチと言って2年過ぎた気がしますが気のせいなのです!


 敵は亜空間で空間転移など行使してきた非常識で自殺願望のある偽ドゥガだけであればなんとかなったのですが、……なんとも抜け目ない。龍になってもあれほど知性を保っていられるとは。この異世界航行船港である遺跡、異世界航行船が稼働したタイミングで転移防止結界を解かなければなりません。


 執念で、いえ、ドゥガ(真)への執着心で異世界航行船に食らいた偽ドゥガ。変態王子と偽ドゥガの銭湯も気にしていて正解でした。完全に亜空間に移行していれば今頃、偽ドゥガに蹂躙されていたでしょう。




「皆様初めまして、私はディニオ。【希望】のディニオ! これから皆さんを蹂躙する者です」




 死の国南部戦線から異世界宗教過激派の主戦力がディニオと名乗る者の手によって次々と召喚されてきます。


 対してこちらの戦力は、竜人学者デス・ガルド、権三郎、ティリスさん、学者の皆さんとその護衛の異世界宗教穏健派の皆さん、あと美少女戦士マモルン。


 学者とその護衛、私とその護衛では防ぎきれない。


 さらには龍化した偽ドゥガと戦う異世界航行船のメンバー。そちらに増援として向かわれても厄介です。


 ディニオ、彼はなぜここに来た。




「神を歪める愚か者どもに鉄槌を!!」


 転移してきた過激派の皆さんが口々に叫んでいます。


 聞いたことがあります。「異教は違う神を信じる別ジャンルの人たち、異宗派は大事な神を別観点で汚す悪魔だ」とか、中世を見ればどこでも大きな問題を抱えていたのはそういえば異宗派間の争いでしたね。日本は多神教で良かった。


 つまり増援できた人たちの目標は理解できました。異世界航行船とこの制御室同時に攻撃しているのも【異宗派の殲滅】が行動目標なのでしょう。


 ではディニオは?




「ゆけ! 神の敵を、教えを汚す者共を殲滅しろ!」


 煽っていますが、その言葉が薄っぺらい。


 あれは別な目的があり暗躍しているときの、小物の表情です。


 しかし、何が目的なのでしょう。




「まずい、モンスターまで呼び出したぞ!」


 護衛の皆さんが慌てております。


 一方私の護衛に目をやると、陰から護衛しているティリスさんはこの騒動よりも魔王国として、威信をかけて守っている私が重要だそうで、参戦する気配はありません。


 後ろに控える権三郎は既にまーちゃんレベルステージ1を起動し、周囲警戒を行っています。教国に私が拉致された時のトラウマから多種の結界展開を感じます。


 横に並んでいたミリ姉、マモルン、香澄ちゃんの美少女トリオは参戦したいようでうずうずしています。いつの間にかバトルジャンキーになっていたようで、オジサン悲しいです。


 ですが、あなた達も護衛対象なのですよ。ご自覚願いたい……。




「権三郎、アレを出します」


「承知しました」


 そう言うと権三郎は私を抱え上げ、それまで私が座っていた四角い箱の端にあるスイッチ押します。すると中から光が漏れ始め箱の側面4編hんが外側に倒れ、奴が現れる。そう……。




「いでよ! パンダ座のセイ〇ト! パン田三太郎!!」


「がおおおおおおおおお!」


 イメージは西洋甲冑! ではなく、武者です。


 あれです。私の趣味です。SDガンダムの武者ガンダムってかっこよかったんですよね。あの赤と金のセンスある甲冑。白い部分は顔だけっていうのも子供心にグッときました。


 そういうわけで何となく、作ったボディーガード用案山子試作2号機を作っていたのですが、前の遺跡で3Dプリンターの様なものを発見してから趣味に走りました。




「がう?」


「見ろ、三太郎。我ら眼前に広がるは死地ぞ」




「がう!」


「うむ。血がたぎるのう……。しかし我は幼児。戦いに赴けぬ」


 腕組をしながらパン田三太郎を見つめます。パン田三太郎はその意を組んだとばかりに拳で胸を叩き返事をします。




「……なぁ、オジサン何やってるんだ?」


「一見すると幼児と、同じぐらいのサイズのモフモフがごっこ遊びしている微笑ましい姿ね」


「マイルズはバかわいいのですよ。香澄お姉さん」


 何とでもいうが良いのです。




「ゆけ」


「がう!」


 御意とばかりに駆け出すパン田三太郎。……そちら、制御室と異世界航行船格納庫の間には分厚い壁があるのです。そこに映し出されている一軒ガラスの様なものは映像投影機なのです。


 勢い奥駆け抜けるパン田三太郎を停めるすべはなく……。まぁ、壊れることは無いから戻ってきたら……。壁の直前で転移術を発動させ、まるで通り抜ける様に戦場に舞い降りる。長槍を振り回しモンスターを切り裂くその姿はまさに武者。




「……あんな機能つけましたかね……」


「……勝さん一号が先日……」


 うん。抜け目のない……。




「ちなみに敵味方の識別はどうなのでしょう?」


「攻撃しなければ大丈夫です」


 そう言ってパン田三太郎を差します。パン田三太郎の背中には、いつはやしたのでしょうか旗指物


が装備されておりました。アルキア王国の国旗と『まーちゃん護衛軍』と書かれています。




「あれを見て攻撃するようであれば反撃されて文句ないかと……、個人的にはマスターの顔写真で良かったのですが、多数決で負けました」


 良くありません。多数決ナイス。




「マイルズ。そろそろ私達も出るわ」


 有無を言わせない形でミリ姉が言います。すでに鎧も纏っておりやる気満々です。




「外には龍がいます」


「ここにいても変わらないわ」


 むぅ、その通りなのですが……。




「大丈夫、俺たちもついてる」


 魔法少女姿で杖を持ち上げるマモルン。いえ、あなたが一番の不安要素なのですよ?




「マスター、僭越ながら転移可能であれば試作一号機を呼んでみてはいかがでしょうか」


「試作一号機……、ゼフィ〇ンサス?」


「……」


 思い切り残念そうな顔をされました。解せぬ。




「私がお仕えした当初、グルンドの私の衣裳部屋で作った一号機です」


「……ああ、あのア〇モですか、確か1巻の得点SSで射手座のクロスに改造したあの……」


「はい。そうです。マスターが与えた課題をようやくクリアしたようです」


 課題……。飽きて小屋の中にしまった筈ですが……。




「では……はい、試作一号機出番です。はい、転送座標を送信します。ではマスターの期待に応えるチャンスです。頑張ってください」


 え……っと、連絡するの早いですね。いえ、ピンチな状況なので決断速いのは良いのですが。クロス転送されてきても1体ですよね? ここに面倒な子が3人もいるんですよ? いえ、香澄ちゃんはどうとでもしそうですが……。




「見てからご判断ください。……来ますよ」


 異世界航行船の結界に噛みついている偽ドゥガの横に巨大な空間のひずみが発生しました。


 そしてスパークとともに登場する特徴的なロボット。




「リューナ〇ト……。クロスは? 防具は? なんでそうなった!? ロボットじゃん。登場型じゃん」


「勝さん一号が、試作一号機にヒントと素材を提供されまして、試行錯誤の末、ああなったようです」


「犯人は、勝さん一号ですか……で、あれがどう安全なのですか? 搭乗するのですか?」


「あれは武装ではありますが、結界装置の親機でもあります。パン田三太郎をご覧ください」


 パン田三太郎に向けられた攻撃をそれまでは華麗にかわしていましたが、今は交わしていません。攻撃がその直前で透明な我部にぶつかり霧散しています。




「……けっかお-らい」


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今週のネタ解説。


〇セイント:昭和の御大が書いたやつ以外認めない派。四角い箱からカパッて感じで開いてごつい鎧が出てくるのが素晴らしい。尚、男の娘が登場する。しかし海外では男の娘が理解できなかったらしく、最近の作品で女の子に変えられる。


〇試作一号機ゼフィランサス:宇宙世紀3大悪女、なぜか最後の最後までヒロイン顔をしていた人が設計したガンダム。最近バトオペ2で強化された。バトオペ2でぐう鱈の愛機。


〇ゼファー:『覇王大系リューナイト』の主人公機。騎士→聖騎士になる。前半は漫画OVAの方が面白かったが、最後に仲間が『実は生きていた!(大人の事情)』と言う展開がなければ、後半仲間が主人公を生かすために散っていくTV版が面白かった。ずいぶん昔の記憶である。




また来週!


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