第127話「魔宝技師、無双す」
お久しぶりです。
中々書けない状況で申し訳ございません。
~おっさん(3歳)7章、これまでのあらすじ~
マイルズは魔王と神王という超大国のトップから依頼を受け死の国へ向かう。
途中魔王の策に嵌り、東部の辺境地域及び周辺国家の安定の為に一役買ってしまったマイルズ。
余りにすんなり受け入れたマイルズに不安を感じながら首都に変える魔王。
その頃マイルズは変態王子を使い、死の国へ向かい南部諸国からあるものを起動して歩かせていた。
死の国で、マイルズの陰謀、反政府組織の想い、聖王を取り戻さんと動く宰相派、死の国を舞台に物語は動き出す。暗躍する教会勢力は黒幕となりえるのか。それとも生贄にされてしまうのか。
マイルズとその一行はそれぞれの思惑を胸に死の国北部の遺跡に向かう。
ポチ「ばう(作者が風呂敷を広げました。収められるのか! 乞うご期待! )」
鱈「余計な、あおり辞めて!」
では本文をどうぞ。
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「あー、これサウレリウスが変質してますね……」
「うむ、これではどんな魔法回路が組まれていたのかわからんな……見た目も四角い箱であるしな……」
こんにちは! マイルズ(3歳)です。
本日馬車に揺られて北部旅行中なのです。
私と竜人学者は特殊搬送車両(マイルズ製)に揺られながら……いえ、異世界人遺物解析の為に揺られないように、先日発見した反重力魔法回路を組み込んだ【この馬車浮くんです!】君、1号に乗って馬にひかれております。
ちなみにサウレリウスとは集積回路の様なもので、魔石と組み合わせると立体構造魔法回路を実装できる優れものです。欠点は保存状態によって腐食が進む点です。私と竜人学者が持っている遺物の様に形状からのヒントがない物はこのサウレリウスから目的を読み解き、機能を回復させられるのですが……。
「ふむ、この突起物は何であろうかのう……なるほど押すと内部魔法回路に魔法力を共有して……このギミックが……」
「出てくるこの棒が何を意味するのか不明ですね……ただの棒ではないし、材質が何なのかも……不思議です……」
分解したものを2人で眺め頭を抱えながら、考察をメモに取り、構造を解析する。一歩一歩進めるこの作業もまた楽しい。
「嗚呼! この意味不明な魔法回路が!」
「嗚呼! この使用用途の意味不明な本体の構造が!」
「魔法科学の進歩をもたらす発想に!」
「生活環境を変える文化に!」
「「変える原動力なる! それがロマン!!!!!!!!!!!!」」
ガッチリと握手する私と竜人学者。
一つの、同じ道を歩む同士なのです。
「……はぁ」
はいそこ、陰の中からため息つかない。
弟さんに生存を告げ口しますよ? ティリスさん。
「やめて、あの子の思い出には儚い姉として残りたいの」
……政治の問題ではないのですね……。
「そこはそれよ」
……腑に落ちなのです。
「腑に落ちないのは俺だーーーーー!」
前方を行く馬車から雄たけびが上がります。
馬車をまたいでしかも結構な騒音のある中で、幼児のつぶやきにツッコミを入れるとは侮りがたし、リーダー(童貞)。
「貴族はな! 無用な種をまけないから童貞が普通だ!」
「「「「え?」」」」
どうやら内紛が起こったようです。
「いや、俺達貴族の3子以降で継げる爵位もない人間だから、だから基本自由恋愛だよな? 政略に関わるも関わる兄上であれば、大事な嫁に無茶はできないから、普通は貴族のたしなみとして講師が付いて色々とな……」
「「「「……」」」」
「おい、誰かなんか言えよ……」
「いや……そーいや」
リーダー(童貞)さん。気持ちは凄くわかります。
そもそも真面目に仕事をしていたら出会いなどないのです。
貧乏くじを引いたとかなんか、余計なお世話なのです。
こちとら必死に仕事して、人の尻拭いを必死にして、みんなが幸せになれる結末まで必死に見通して仕事をしていたら30歳近かったのです。
なので、ころっと嫁に騙されたのです……。
リーダー、ファイト!
独身だっていいじゃないですか!
私ですか?
戻ったら気の利いた彼女がいます。
華の独身なのです。
リーダーも……。
「幼児の馬車から不快な気配がする……」
……病みは深い……。
「それよりも、リーダー。異世界宗教の奴らおかしくない?」
「ああ、それは俺も思っていた。奴らいつの間にか数が増えていないか?リーダー」
「……なんか、あいつらの目つきが怪しくなってきたんだがリーダー」
「……っふ、何でもかんでも都合のいい時だけ俺を頼ってんじゃねーよ……」
あ、本気で病んでる。
「けっ、どうせ密入国者と合流でもして、俺たちを看板にして反乱を煽る準備でもできたんだろーさ」
なんでそこまで知っているのですか?
「昨晩本部から反政府組織の中枢は方々の手に落ちたと連絡があった……。方々のことだ、俺たちの行動なんかすべてお見通しなんだろうよ……。必死にやったのに……完璧な計画だと思ったのに……くっそ」
正解。
異世界宗教は北部遺跡で一網打尽になります。
貴方がた反政府勢力はその餌です。
さらに言うならば、異世界宗教を逃さないための仕掛けを南部から起動して歩いています。変態王子が。
私と竜人学者は餌を気づかせるための最後のピース。
そう、地球への送還装置を起動状態にし、彼らの【帰還欲求】を刺激します。
それは冷静な思考を阻害するでしょう。
そうして、お得意の内部紛争開始なのです。
密に群がる蟻のように集まりはじめている現状。
「……」
馬車の中で先程まで黙っていた竜人学者が何かを語ろうとしていました。
彼にも反政府組織のリーダー(仕事人間)の声が聞こえていたようです。
私は集音魔法を使っていますが、彼は素の能力の様です。恐るべし竜人。
「マイルズ殿、望むのであればこの枷を外し脱出できるがどうする?」
真面目に問う竜人学者。
周囲を囲う異世界宗教の部隊に気付いたのでしょう、その表情はまじめそのものでした。
「そこの竜人の意見に賛成です。万の軍勢とて相手にできますが、万が一という事があります。御身に不幸が起こると自動的に我が国にも不幸が起こるのでご自重願いたい」
陰から声だけのティリスさんが竜人学者に賛同しています。
ですが、申し訳ないのですが、私としてもその意見は受け入れられないのです。
私も目的があります。
南部諸国であば……色々調査したときに発見したアレを起動しなければなりません。
ん?
皆さん、お忘れですか?
私は勝なのです。
勝は地球に帰らなければならないのです。
置いてきた家族の為に。彼女の為に。勝は地球人なのです。だから級で生きねばならないのです。
だから手段は探さねばなりません。
しかし、幼児では何もできません。
それはこちらに来て1週間で知った事実です。
地球の様に豊かな科学文化ではなく、リソースの少ないを分け合って生きるこの世界では尚更待っ盛られるべき幼児は何もできません。
では、他の人がやるべきなのでしょう。
大人に頼るべきなのでしょう。
だから私は使える者は最大限使っています。
この死の国もその1つなのです。
「ティリスさん何の心配もございません。大船に乗った気分でどうぞ」
「……魔王様が仰られていました。『大船って言いだしたらきっとそれは幽霊船。最大限の警戒をせよ」……と、何となくわかった気がします……」
失礼な。オープン・ザ・閻魔帳! 魔王ちゃんページも増えてきましたね。……どうしてあげましょうか(幼児スマイル)。
「儂はマイルズ殿が良ければそれでよい。いざとなれば身代わりになろう……」
竜人学者さん。だからその代わりに私の手元の遺物に興味津々なのやめません?
まるで私が者で釣っているようではありませんか?
「おお、これだ! この遺物こそ長年の謎を解明する最後のピースだ。さすがマイルズ殿これを再起動するとは恐るべし幼児! 略して、恐ろしい子!」
どこをどう略した!
ドン
「やかましいぞ!」
和気藹々話を続けれ私たちに馬で並走していた教会の方が切れて馬車を蹴飛ばします。
現在私たちが乗っている馬車は魔王国で作成したホバー馬車ではなく現地調達のおんぼろ馬車です。なので蹴られると余計な振動が加わります。
「まーちゃん。殺(ヤ)ル?」
「いえ、きっとお友達が増えて気が大きくなっているだけなので気にしないでください」
私は追走している20騎の騎兵を確認しています。
この数、彼には多く感じているのでしょうね。今行動している教会関係者の数に比べたら……『たった20騎』なのですがね……。
「……。マイルズ殿。殺(や)ってくる」
「ノーです。ステイなのです」
竜人学者は先程の部品を解析中に揺らされ、日光を浴びてはいけなかったであろう部品が変色して遺物が動作しなくったのが相当頭に来たらしく、口の端をひきつらせながら怒りの表情です。
「もう1個あげるので、がまんするのです」
「……。ふむ、仕方ないな……」
「はははははは! 主よ! あなたの愛を感じます。耐え忍んだ長い年月が今報われようとしています!」
ハイテンションの教会関係者の笑い声に、私の近くにいる若干2名が苛立ちながら我々の馬車は北へ向かいます。
~~死の国首脳部~~
「共和国を追われた……いえ、捨てた教会軍が国境付近になだれ込んできています」
「防衛軍はどうなっているのですか?」
「想定外の規模の為住民避難で精一杯です……」
死の国王都、宰相と偉大なる先達たちが不在の中で起こった共和国軍の侵攻。死の国王都は蜂の巣をつついたような喧騒に包まれていた。
「して宰相閣下はなんと残されていた?」
「馬鹿者! 居ない人間に頼るなど己には国政を任されたものとしての誇りはないのか!!」
国防という目的達成の為、最も確実な手段を取ろうとする派閥と先達からの独立を、誇りを主張する派閥の喧々諤々とした話し合いは続く。やがて……。
「もう埒が明かぬ! 私が1万の護衛軍を率いて南西へ向かおう。共和国を逃げ出した有象無象など何万、何十万来ようと敵ではない! お主らは他を警戒せよ。方法論はもうよい。目的を果たす議論をせよ! 陛下! 私、姫将軍キアナとその軍は只今をもって出陣、共和国侵略軍を駆逐いたします!」
「……はぁ、すまんな。妹よ」
「……兄上……政に私情を持ち込まれますな……」
王女キアナは優しき王こと兄の言葉に苦笑いを浮かべ表情を崩す。
「キアナ、中核都市での防衛に徹せよ。……どうやら宰相が何やら仕掛けを施しているようだ」
兄王が疲れた様子で一枚の紙をヒラヒラと振る。
「御意」
勢いよく返事を返すと、どこかで安心感を得た様な表情のキアナは謁見場から出ていった。
「さて、皆の者。情報とは武器である。言われるがままなのは不甲斐ないのも理解できるが、ある情報を考慮しないのは愚である。今より宰相の情報を精査し、また議論をしようではないか。少なくとも南西の共和国対策は……どうやら問題ではないようだしな」
死の国は大きく動き出していた。
後日宣言通りキアナは魔王国東部へのけん制の為出陣準備をしていた軍から足の速い部隊で軍を編成し、南西へ出陣していった。
その夜、王都では国体を揺るがす事件が起きていた。
「馬鹿な、どうやって侵入した……そしてどうやって……」
そこは死の国最奥に厳重に管理された聖王の間。
365日24時間眠る必要ない最強の護衛である氷の女王が主人を守る部屋。
氷の女王は不死の先達の中でも最強の魔法を持ち、近接戦闘も神王国より伝わる薙刀を駆使し騎士団長と並ぶとうたわれる女傑。
その女傑が……ある朝消えていた。
部屋に安置されている聖王には傷1つない。
氷の女王の失踪を疑われた。だが、部屋内の戦闘痕がそれを否定する。
いや否定したかった……王と死の国をかじ取りする者たちは最悪を想定する。
最悪の状況……それは『不死の先達』が教会に操られてしまう……そんな悪夢である……。
可能性は……少なくなかった。
カクヨム+α
「ふむふむふむ」
「ほおほおほお」
「ほれ、ここをこうすると……」
「なんと、それはそれは……ですがこの反応はこちらの法則に当てはまめて……」
「おお! 天才だ! 流石マイルズ殿!! では先日発見したこの遺物も」
「ふふふふふふふ。気付きましたね! 私も先程気付きました!」
「馬車内で不気味な話してんじゃねー!!!!!!」
ドッカ!
「「黙れ小童!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
「……はい、すみません。……あれ?なんで俺が謝ってるの?俺教会に秘術で200年生きてるんだけど……竜人はいいけど幼児に小童って……」
「……オタクに対して趣味で下手を踏むと年齢関係なく恐怖が待っている。注意されたし」
「あ、はい。ご親切どうも……ってお前誰だ! どこから! ……って陰に消えたよ!!!!」
その後仲間にこの出来事を語った教会関係者だったが、なぜか仲間内からねぎらわれ、配置を変えられるのだった。
「いや、だから……」
「おう。わかってる。お前は疲れてるんだ。少し楽したって種はオこりゃしないぜ」
頑張れ。悪役A!
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