第125話「とある村での弾圧」

『報告:異世界宗教の動向について


全体:予定通り活動の活発化を確認。計画を次段階へ進める


各地進捗

 西部方面:

  ・アルキア王国農業支援団の到着を確認

  ・魔王国次期魔王候補筆頭ティリス殿及び精鋭騎士団辺境伯邸にて宿泊

  ・マイルズ殿【予定通り】隔離完了。ティリス殿には警護を依頼済み

  ・マイルズ殿の姉君により西-7ダンジョン討伐成功

  【注意】希望は先行潜入部隊を見失った現場近くより複数体の未確認モンスターを確認北部へ向かっている様子。北部方面作戦実施時には憂慮されたし


 南西方面:

  ・ディールケ共和国難民キャンプが多数国境沿いに発生

  ・難民は女子供老人の混成

  ・難民に紛れディールケ共和国より大規模な教主派が密入国の兆し


 北部方面:

  ・計画の遺跡に異世界宗教の教主派、ギルシュ派、希望派が採掘作業員として潜入を確認

  【注意】竜人学者が到着しないため、国としての大掛かりな調査が行えず、遺跡内部を侵食されている。3派閥共同作戦の兆し。西部の竜人学者を早急に向かわせていただきたい。


 南東方面:

  ・南西の難民キャンプの動きに合わせ、北ホープス王国軍が我が国の国境線に布陣。ギルシュ派の工作と思われる


 私信:北部採掘現場近くで作業員として潜入しておりますが、遺跡の機能を誤認している様子。奴等が想定外の行動へ移る前に何卒よろしくお願い申し上げます。


 対異世界宗教対策機関代表ムライ』













『変態王子へ

 アレに関する報告書読みました。

 地脈観測システムとみて問題ないです。

 データに関してはデータ解析専門機体にて解析中。

 十中八九、アレの機能の一部とみられます。

 ……まったく、過去の異世界人は厄介なものを残してくれたものです。

 なお、死の国の貴族たちは3派にわかれております。

 ・宰相派(裏で動かしているのは彼らですが、計算違い発生しているようです)

 ・穏健派反政府派(民の一部から熱狂的な支持を得ている派閥です。しかし、浅慮です。ここで私を捕えることもきっと宰相派の手の内の事にも気付かず、こちらに結集中)

 ・過激派反政府派(教会勢力に踊らされている過激派です)

 そちらに手を伸ばしているのは過激派反政府派です。

 作戦失敗した場合には全てを教会勢力に被せ、そちら、中央部の疲弊した国家群への逃亡すると思われます。すでに工作が始まっているかと思われます。北上する際は忘れず処理のほどを。

 ……あ、竜人学者の人がこちらに来てしまいました……。うぬぬ、また計画変更ですかね……。

 影響がある場合は追って報告します。

 マイルズ・デ・アルノ―』






「で、何で来たのですか?」

「幼子が誘拐されたと聞いては黙っておれん! それが吾輩の正義!」

 影から音もなく現れた竜人学者デス・ガルドさんは大きな声で叫びます。

 影から音もなく現れた事実が台無しです。


「ふむ、しかしここは防音部屋であろう?」

「……ほう、よく気が付きましたね?」

「ふふふ、吾輩を誰だと思っている?異世界人の遺物は専門家であるぞ?」

 そうなのです。まーちゃんシャッターは2重構造! かつ、戦時発掘した遺物を動かしていたりします。こちらの魔法に詳しい方は異世界人の遺物や魔術を見落としがちなのです。だから少数派の異世界宗教に何度もやられるのですが、この竜人学者は違う様です。


「マニア、恐るべし」

「褒め言葉なり!」

 にこやかに笑う竜人学者。


「で、本当の目的は?」

「面白いもの拾ったのである! 一緒に分解するのだ!!」

 おもちゃを持った子供の目でした。

 こうして、宰相閣下の目論見は異世界遺産オタクの好奇心によって狂わされてしまったようです。


「オタクではない! マニアなり!!」

 ……何が違うの?


「大違いである!」

 理解できません……。

 さて、どう転びますかね……。


カクヨム+α

「おっす、おはよう」

「ああ、交代の時間か……ていうか、このシャッター見張る意味あるのか?」

「いや、またリーダーと魔法剣士が何するかわからないから見張るんだよ……」

「もう、どっちが下りの中なのかわからなくなって来たな……」

「そろそろ、北の潜伏所へ移送なんだろ?」

「ああ、そういう話なんだがな……どうやらリーダーの知らない幹部とやらが尋ねてきたらしく、どうにもきな臭くなってきたんだよな……」

「ああ、異世界宗教に毒されてる派閥の奴等か……」

「よくやるよ。聖王陛下を貶めた時の逆賊共も、異世界宗教に毒された派閥だろ?数百年たってはいるがはっきり記録されているし、偉大なる先達の皆様が正に生き証人なのにな……」

「ああ、でもこの一帯の国々は千年前までは長い間異世界人との共生が可能だった地域だしどうにもまだ信頼する傾向があるのも事実だ。童話だったり、庶民の道具だったり、祭りだったり、生活に根差した部分でまだまだ色濃く異世界人と築いたものが残ってるしな……友好という名の大義名分の下、我らは何度だまされるのだろうな……」

「俺達小役人が何を言っても無駄だろう……」

「折角、この国を良くしようと志したのにな……結局変わらんのかもしれんな……とはいえ……」

「「……はぁ」」

「もう船は動き出した。後戻りはできない。やるしかない」

「……だな。……願わくは我らの行動がこの国にとって良い事になるといいのだがな……」

「……ああ」

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