7章:宗教戦争で最も悲惨なのは宗派争い

第120話「異世界の遺産は迷惑」

「何だ! 人間ども! 貴様ら山賊ではなかったのか!?」

 はい、いつもお世話になっております。まーちゃんです。

 現在、唐突に舞い降りてきた竜が人に化けた、いわゆる竜人が偉そうにしゃべっております。


「よく見れば、女子おなごばかりではないか。しかも幼児までいる。いかん! 人間どもは何とむごいことをする!!」

 悪意はないのでしょうが、ムカプチなのです。

 ただのトカゲのくせに偉そうなのです……。

 さて現在私は魔王国首都を出て東に向かっております。

 祖母が持ってきた手紙の内1通は魔王様からでした。

 依頼があるとかで魔王場まで呼び出されたのです。


~~~~その時の魔王ちゃん~~~~開始

「よく来たなマイルズよ! いや、食の聖女よ!」

 出会い頭にちょおとお茶目をしてみた。我魔王。偉い人である。


「ほうほう。やはり反響がすごいのですか。良いことです。

 ここはファン心理に応えてグッズ販売からの商売展開を考えていきまか……」

 ……幼児に無視されました……。


「まーちゃん。相変わらずやさぐれかわいい♪ でも、魔王国内での商売に関しては認可並びに税金の管理は譲れません。でも製法や技術を……あら、私何か言いましたか?(にっこり)」

「魔王妃様も人が悪い(ニヤニヤ)」

 俺の前で悪い顔をする、我が妃と幼児と幼児が作り出した案山子。

 ……我魔王なり!

 ……偉い人よ?


「知ってます。そして今無視されております」

 ヒューゴ。その同意と余計な一言はいらない……。

 そして謁見の間で俺は3人の商談が終わるまでじっと待った。

 あれ、王様だよね?俺。王様偉いんだぞー。魔王国は大国なんだぞー。


「魔王ちゃん! 予算お代わり! あの魔法道具の解析に必要な機材が……ってまーちゃん。久しぶり!」

 リィ登場。

 ん? 忘れた? あれだよ。

 【西大陸最大の脅威】

 歩く災害こと、ルカスの次女、アリリィ・ザ・アイノルズだよ。

 先日から何故だかうちの魔法研究機関で、転移魔法道具の解析作業してるんだよ。

 いや、解析自体はありがたいし、有能だからいろんな副次的な技術も生み出してくれて嬉しいんだけど……。


「貴方。リィに投資したいから、貴方のお小遣い今月もカットしますね♪ 安心して利益が出たらちゃんと出しますよ」

 笑顔の妃。

 でも我知ってるよ?

 もうすでに莫大な利益出してるよね?

 ……ん?誰だ今『だまれ魔王。財政が健全化したのも魔王妃様のおかげだ』とか呟いたやつ……。

 いや、満面の笑みで手を上げるのやめて、しかもお前財務大臣じゃん。


「貨幣の流動が硬直化して民が疲弊したときに、【緊縮に突き進んだ暗君】と、【暗君を黙らせて貨幣の需給を埋める】政策を打ち出された偉大なる妃殿下。どちらが尊重されるとお思いで?」

 ……くっ。人の失敗をねちねちと……。


「……あなたの失敗のせいで、首をくくった魔族がどれほど……血気盛んな議員と一部バカな民衆が、周辺国に侵略なんて儲からないこと始めて……、強制的にお金動かそうとしたりするし……」

 ごめんなさい。大臣。そんなに悲しそうな顔で遠くを見ないでくれ。今は暗君じゃないから。心入れ替えて賢王だから。


「あ、まーちゃん! 大きくなった……のかな?」

 リィが件の問題児をひょいと持ち上げ首をひねる。


「おねーさん。1cm伸びたのです! 成長期なのです!!」

 普通幼児はもっと大きくなる……。


「魔王妃様、魔王様のお小遣い死ぬまでなしでよいそうです。外交とかも行かなくていいそうです」

「らっき……じゃない。そうなの? さすが我が夫。国の為に生きる決心。尊敬に値するわ!」

 妃。嬉しそうだね。

 確かに国賓を迎える費用は国費だけど、外交とかは私費なんだよね。

 お仕事なのに……いや、お仕事だってば!

 向かった先で護衛ともども豪遊してないってばよ!


「魔王妃様。お零れにあずかっていた身ですが、陛下の英断嬉しく思います」

 近衛隊長が裏切った!!

 その後もワイワイと俺を抜きで盛り上がるので、しょうがないから俺はマイルズのお付きの女子2人に、今回の依頼事項を伝えた。


「つまり、大魔王様のおひざ元の死の国の復興を支援して国が乱れた原因となった異世界宗教の浸透を阻止してほしいと?」

「うむ。口実は農業支援だ。あと、神王からの依頼でもある。死の国の憂いを払いし後は神王国に向かってほしい。そちらで、あの引きこもりの、神王が迎えてくれるそうな」

 これこれ! 王様を尊敬するような、威厳あふれる大人を見る目ですよ。

 黒髪美少女二人からの尊敬のまなざし! いいね!!


「こちらからも、国の最高レベルの者を護衛につけよう。2名なれど万の軍勢に匹敵する猛者ゆえ安心するがよい……。ヴァンリアンス! ティリス!」

 俺は義理とはいえ自慢の息子と娘を紹介した。

 眉目秀麗。なにより二人ともレベル300越えの猛者の上に2人とも特殊能力もちだ。……過剰? 何とでもいえ! もう俺のせいだとあの一家にプレッシャーかけられて胃に穴が開きそうな日々は嫌なんだよ!!!

 7日後、何故だから大規模なミリアムちゃんコンサートが催された。

 さらに7日後ゴレームが引く高速馬車が4台作成され、マイルズ一行は魔王都を旅立っていった。


「陛下。そろそろミリアムちゃんグッズ手放されたほうがよろしいかと……」

 ……ん? これはマイルズが作ってくれた団扇の魔法道具だよ? やましい物じゃないよ?


「……書かれてる絵がみっともねぇっつってんだよ……」

 ん? 何か言ったか? 不敬罪1号君?


「魔王妃様~」

 ふむ、ルカスの孫を立ててやっていただけよ。

 ヒューゴ、団扇を収納しておけ。有用な魔法道具だ。


「承知いたしました。アリリィ様に献上してまいります」

 妃~~~~。慰めて~~~~~~。


~~~~その時の魔王ちゃん~~~~終了


 そんなことがあったらしく、まーちゃんはコンサートの利益と移動用の馬車設計で忙しかったのです。

 そして魔王国の食材チェックも大変だったのです。

 案山子を放とうととしたら国際問題をちらつかされたのです。

 なので持ってきてもらう方法をとったので時間が……。

 で、なんやかんやあった後魔王都をでました。

 魔王都が標高の高いところにあったため回り道をしながらゆっくりと魔王国内を観光気分で進みさらに2週間が過ぎたころでした……。

 そう私がホームシックに掛かりかけたころ。この駄竜。いえ、竜人が現れたのです。

 平原を高速移動する馬車。その前に舞い降りてきたのは、はじめは巨大トカゲこと、青い竜でした。

 私たちの護衛であるティリスさんとヴァンリアンスさん。そして部下であるゴーレム馬に乗った5名の騎士たちが青竜の前に立ちふさがり、『どこの国の所属か!』と問いかけました。すると人間に変身して先程の言葉です。

 馬車からひょいと降りて状況を見ていたのは、私とミリ姉と変身済みのマモルンと同じく変身済みの香澄ちゃん。残念ながら香澄ちゃん主導の変身セットはキュアキュアな露出少なめの美少女戦士でした。最早昭和臭はしません……香澄ちゃん、侮れ得ない子。

 そして、馬車につかず離れずついてきてていた勝さん1号と、権三郎が青い竜人を睨んでおります。


「ふむふむ。では、我も同行しよう! なに礼はいらんぞ! 我も死の国にあると言う異世界人が残した遺跡を研究しに行くところ。何より女子供を守るのは男努めよ! そこなひょろい男どもだけでは不安であろう! 名案だ! うむ! そして……」

 そこで大きなお腹の音が鳴ります。


「良ければ飯を恵んでもらえぬか! ここ1週間ほど食っておらんのだ! 故にどこを飛んでいるかわからずな! おぬしらのことも【やけに高速移動する】盗賊と勘違いしたしまったところだ」

 と豪快に言ってのけて笑う。尚、竜人姿は筋肉だるまのちょび髭親父である。


「竜にもどったらドラゴンステーキふるまってあげるのです(にっこり)」

「……ちょっあの幼児。目が怖いのである」

 こうして死の国へ向かう一行に竜人が加わった。


「竜人学者デス・ガルドという。なに旅の友と思ってよろしくのう!」

 勝さん1号に急きょ転移でもどってもらい国元に確認したら、本当に学者さんでした。尚、勝さん一豪曰く。先日事件以来グルンドに常駐している竜人の外交官が小刻みに震えながら『無礼があったらつぶされ……ではなく、問題があるので護衛をこちらかも』とか言っていたそうです。……まーちゃんは聞かなかったことにしました。


「羊羹とはうまいな! もう1本頂けぬか?」

 おう、それは私が楽しみ指定体も羊羹ではないですか? 食したのですね?


「おっさん。その手に握られてるのは英雄銘菓干しイモじゃないか?」

「うむ。うまかったぞ! 少女よ!」

 マモルンと目があいました。

 やっちまおう。 

 新たな旅の仲間は不幸な事故に巻き込まれ……、不幸な事故に巻き込まれ……、不幸な事故に巻き込まれ……、っち。勝さん1号その手を離すのです!!! 外交?知りません! 今は羊羹が大事なのです!! むきーーーーー! 離すのです! 今こそ! 今こそマイルズ2.0の威力を!!


カクヨム+α

「宰相閣下、如何されましたか?」

 宰相補佐が珍しく筆をとめて思案する宰相に気遣う。


「……え?『悪寒がはしった……』ですと?何おおっしゃいますか、王も目覚めの兆し。その上、西で食糧事情改善及び異世界宗教を駆逐したあの王国より農業指導が来るのです。我が国の未来は暗雲なしですぞ」

 宰相補佐は宰相を和ませようと笑う。

 宰相もつられて苦笑いをうかべる。そしてそっとメモを宰相補佐に渡す。


『好事魔多し。王国より来る使者殿を迎える我が国の貴族、官僚どもを監視する計画を前倒しにしろ。予算はひねり出す故、気にせず行え』

 宰相補佐はまじめな表情でうなずくと詳細を宰相とつめ始める。

 結果、この行動が彼らを救うことになる。


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