第114話「義賊っていうじゃん?でも本当の顔は…」

――派遣された案山子たち通信記録


【指揮官機】:101部隊。戦況はどうか。送れ。

【101部隊隊長機】:反乱軍制圧完了。損害ゼロ。現在犠牲者の埋葬中。送れ。

【指揮官機】:馬鹿者!! そんな瑣末なことではない! 貴様! 我らの目的が何か復唱してみろ!! 送れ!

【101部隊隊長機】:!!

 ちなみに101部隊こと10体案山子部隊は、旧王族一派が占拠した西部主要都市を支援していた。外国から侵入していた工作部隊もろともの制圧である。


「丸雪は通訳ではないです。盗s…………、ゴホンっ。魔法少女? のサポート生物です。あ、皆さん、無害ですよー。救世主の軍ですよー。ほうほう、今の王様は愛されてますねー」

 モフモフの毛玉が、現地の人々(特に女の子)に愛想を振りまきつつ、案山子の通訳として、街を占拠していた旧王族軍に地下牢へ投獄されていた現地有力者と案山子部隊との橋渡しをしている。

 101部隊隊長機は突然、誰もいない方に敬礼する。そして、丸雪にこう伝えるように促す。


「この地の特産物を発見し、創造主様に報告したところ、お褒めいただいたらしく……。非常に浮かれています……(ボソ)後輩のくせに生意気なのです(ボソボソ)。更にお褒めいただきたいので、特産をつかった美味しい料理を紹介してほしい、と言ってます」

 突然の事に驚く現地代表者。


「食事できるのですか?」

「創造主様のこだわりで、皆食事が可能です」

「……はぁ」


――数日後

【101部隊隊長機】:報告! データベースに登録のない、新種の果物と家畜を確認! 家畜の育成方法について現地で継続調査を行う! 送れ。

【指揮官機】:報告受領、戦果に期待する! 以上


 ・・・

 ・・

 ・


 新生国には200体の案山子が派遣されている。

 山へ50体。

 海へ50体。

 各主要都市へ10体づつ。


【201部隊部隊長機】:山間部にて遭遇戦あり。捕虜の情報より新種のキノコを確認。食材安全性を確認中。送れ。

【指揮官機】:戦果確認。引き続き任務に当たれ。尚、家畜化可能な動物の調査も忘れないように! 送れ。

【201部隊部隊長機】:了解! 以上!


――幼児の天幕にて

「バルバロスさん。追加で400体ほど送りたいのです」

 ファミリーレストランでよく見かける、木の板の上に鉄板を敷いたお皿が私の前に置かれます。お皿というか鉄板の上には……、ご存知ハンバーグ様が鎮座されております。こぼれだす肉汁とソースの香ばしい香りが胃袋を刺激し続けています。

 なかなかの拷問です。なんといってもハンバーグ様です。そう日本人が『ハンバーグ美味いよね?』と言うと外人『ふぁ?』っとなる、あのお方です。まさに日本のファミレス文化が生み出した代表作、ハンバーグステーキ様です。

 横に添えられたポテトフライもいい感じなのです。

 勿論、サラダも柔らかいパンもコーンポタージュもセットです。


「………」

 尚、バルバロスさんの前には固いパンが置かれています。

 先日いらっしゃった際に、簡易のご飯をご馳走してあげましたところ、柔らかいパンにいたく感激されていました。ですのでこの交渉の席ではあえての【硬いパン】をお出ししました。といっても応急で出されるような素材はしっかりとした、【硬いパン】です。

 さて頂きます!

 うーん、ハンバーグ柔らかくて肉汁ジュワ! なのです。

 そして口に入れたらうまみの大津波がやってくるのです! 美味い!


「権三郎、腕を上げましたね……」

 幼児椅子から権三郎に称賛を送ると、権三郎は満面の笑みで返してきます。中々の忠誠心です。

 次にホッカホカのポテトフライを口に放り咀嚼。

 鋳物甘みを堪能したところで、ふっと口が油に支配されたことに気づき、サラダを頂きます。そして落ち着いたところで柔らかいパンに手を伸ばします。

 ふむ、バルバロスさんは国王と言うだけあって中々しぶといですね。

 今の彼が置かれている状況、そこで選べる選択肢はシンプルです。

 私に全面降伏し、戦後の体制の維持を願う。

 これが最も現実的な選択肢です。

 私には『侵攻に対する報復』と言う元の世界でも通用する大義があり、南方小国連合14万を数分で消し飛ばす武力を有しています。

 そんな大戦力を抱えている私が、今ここで待機しているのは2つの理由です。

 まず1つ、この王国ジキル王国に厳罰を下すため。

 次に、アリリィおば……じゃなかった。

 アリリィお姉ちゃんが、婚約祭の後半にひょっこり現れて『次の旅行先は南方小国かな~』と言っていたのです。

 これを止める為には善政を敷く国を南方に立てなければならないのです。

 ……いま、『そんな大げさな』って思いましたね?

 魔王様に聞いてみるといいのです。


~突発企画! まおう様に聞いてみた♪~

Q:マイルズが攫われたときのアリリィについて。

A:すみません。許してください。すみません。許してください。すみません。許してください。


Q:アリリィさんが『次の旅行先は魔王国かな~』と言っていました。

A:なっ! ひゅひゅひゅヒューゴ!


Q:嘘です。

A:よかった~~~。良かったよ。奇麗なだけの国なんてあるわけないじゃん。アリリィが来たら魔王国で一部の地域で、火の七日間が発生しちゃうよ~。……てか! 俺を弄んだなぁ!!!! 貴様!!!


Q:今の反応アリリィさんに報告した方が良いですか?

A:すみません。許してください。


 わかりますでしょうか?

 不正や弾圧に対して、正義(物理)を執行しちゃう人なのです。

 結果、全て丸く収まるので敵は少ないのですが、被害は甚大です。

 どんな被害かというと、人的被害です。

 悪人も10割悪事をしているわけではないのです。

 儲けの元の国をまわすために統治行為をしているのです。

 悪徳な手法であれ。

 それを軽い感じで消し飛ばしてしまうとですね……たとえとして言いますと……。

 ここから北にある、帝国の残党国家の様に皇子とその一派のことです。

 アリリィお姉ちゃんが、巣ごと撃退! ってな感じで根っこから正常化してしまったら、行政が回らなくなり、皇子とその一派は……(遠い目)……なんか昔の炎上案件を思い出したのです……。あの頃はコンプライアンス意識が希薄でしたね……。おっと、皇子とその一派の様子ですが、現状、過労死直前まで進んでしまっています。国の運営舐めると本気で死にますよ?(本気で支援しないとわが家の悪評が……今更な気もします……ふぅ)

 という事で私も初めは、怒りに任せてこの国に侵攻してみたのですが……。ちょっと半端ない脅威が真後ろでアップしているのことを思い出しまして、穏便に済ます方向で頑張って攻め込んでいます……。

 2つ目は現状待っているのが有利だからです。

 南方小国連合のお国ではグンニル王国女王アニータの策略が嵌まって、軍煮るお王国に吸収、安定する方向に進みそうなので待ちなのです。

 あとは交渉してくる国の選別と、この国の屑どもの殲滅戦なのです。

 現在勝さん1号が育てた暗部が暗躍中です。

 ん? 王太子? 村人A? 勝さん1号に聞いてください。

 まーちゃんは知りません。ええ、存じ上げない(建前)のです。

 さて、そんな状況下で即座に行動し有利な状況を模索したのは、グンニル王国女王アニータと神聖ラダー王国バルバロスおよびユングリア共和国大統領ダンダバぐらいでした。

 ダンダバさんは闇が濃かったですね。

 何故だか幼児である私に愚痴を吐いて、酒を煽ってここで一泊していきました。

 早朝帰るときの笑顔と言ったらなかったですね……。

 おっと、話がそれたのです。

 という事で彼らが取るべき最良の選択は、この場の状況を私にゆだねる。

 なのです……が。

 どうやらバルバロスさんは、国を乗っ取られることを懸念しているようなのです……。ねぇ。私、こんなお家から遠い国なんかほしくないのです。

 さて、彼らが私のとれる選択肢は残り2つ。

 1つは徹底抗戦。

 いいでしょう。戦うのであれば消し炭にしてあげましょう。

 選別? 知った話ではないのです。戦場に立っているのです。覚悟してきているのですよね?

 もう1つは、うまく交渉して私を手玉に取る。

 6か国の交渉使節は色々してきていますが、私は何も応じることはありません。 

 だって時間は私に有利なのです。

 あれこれ望んでいると状況は一気に悪くなるのですよ。アニータ女王に感謝です。

 私もそうですが、皆さんもね。だ

 って彼女が居なければ私は何をしていたか……。お分かりいただけますよね?

 バルバロスさん。早くご飯につられた風に乗ってきた方が良いですよ。

 コーンポタージュを頂き、パンを食む。

 美味い。

 ……|д゜)チラッ

 ハンバーグも美味しいのです。食べすぎちゃうのです。


「ああ、幼児1人に、この量は多いのです……でも食べ物を粗末にするのはいけない事なのです……」

 ……|д゜)チラッ

 ……|д゜)チラッ

 ……Σ(´∀`||;)ドキッ!!


「ええい! いくらでも追加派兵してよい! だから、もうこの固いパンは許してくれ!!」

「言質頂戴したのです! 権三郎、準備を!」

 私の言葉に年甲斐もなくキラキラした瞳で権三郎を見るバルバロスさん。


「はい、派兵の件ですね」

 一気に落ち込んで、捨てられた子犬のような目になるバルバロスさん。


「権三郎、いじめてはいけません」

「はい、冗談でございます」

 それから30分後。


「まーちゃん、お呼ばれしたので来たぞ(権三郎様。今日も素敵です)」

「まーちゃん。聞いてよ。今日も国元からバカな手紙が来たよー」

 誰とは言いませんがお2人がいらっしゃいました。バルバロスさん。目が点です。

 あははははは。皆さんの利益になるのです。笑って許してください。

 うん、ほっぺを引っ張ってはいけないのです。

 そして、4人(1人は権三郎にピッタリ寄り添ってます)での、国主の集まりには全く見えない、飲み会が始まるのでした。



カクヨム+α

という事で本日のゲストは魔王ちゃんです!

パチパチパチパチ


魔王「え? ここどこ。あ、マイルズ? なんでいるの?」

はい、魔王ちゃん。私はマスク・ド・ブラックなのです。


魔王「え? 何処をどう見てもルカスの孫で、俺のトラウマ製造機で、食の聖女のマイルズだろ?」

魔王ちゃん。物理的に消えるか、先ほどの最後の発言を消すかどっちか、え・ら・べ。


魔王「私の発言中に【食の聖女】と言う事実無根の発言がありました。当発言を取り消し、謝罪させていただきます(間違いない、アリリィの一族だ…………)」

王妃様~~~~。魔王ちゃんの合コン口説き言葉集っていう資料がありますけど、取引しませんか?


魔王「まってーーーー! やめてーーーーーー! そして、なんで妃はうなずきかけてるの? 国に関する決定は俺通してよーーーー! マイルズ君! その資料、俺が買おう!! 買わせて!! お願いします譲ってください(土下座)」

 ( ̄ー ̄)

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