第111話「変態王子怒る」

 私は心地の良いものに抱かれていました。

 それは大きく、私を包み込む安心感があり、落ち着かせる臭いがします。


「ん、マイルズが寝たみたいだぞ。起きてるときは暴れん坊だが、寝ていると天使だな」

「ほら、貴方。そんなに揺らしたら起きてしまいますよ」

 父から私を奪い取った母。

 私は先ほどより安心感が少しなくなりましたが、柔らかく優しいぬくもりに包まれていきます。


「まーちゃん。赤ちゃんみたい」

「バン、3歳だから赤ちゃんみたいなものよ」

「そうだな、俺の飯を食うようになったのも最近だしな」

 兄と姉たちが何時もの様に好き放題言っておりますが、私は眠いのです。

 眠くて気持ちいいのです。

 もっとこの優しい空間に包まれていたいのです……。


 ・・・

 ・・

 ・


「やっと嵌まってくれた」

 天使のコスプレをした女性は魔法力の殆どを使い切ったのか、汗をぬぐうと尻もちをついて脱力する。


「幻術ですか?」

「幻術の進化系ね、亜空間を構築してその中でリアルな現象を実物として幸せな夢を見せる封印よ」

「へぇ。結構えぐい術ですね」

 驚きと共に褒められたので、天使のコスプレをした女性は、【私に向かって】得意げな笑顔で言います。


「へへへ、これでも大天使ですからね。亜空間接続なんて下級神級の術まで行けるんですよ……あれ?」

 言い切って気付いたようです。


「なるほど。これ私でも再現できないですね。おねーさん流石なのです」

「あ、うん。ありがと……って、なんでここに? あそこで幻影にはまっているのは?」

「あ、幻影です」

「「…………………………」」

 笑顔の私と苦笑いのおねーさん。


「どうしたのですか? おねーさん? ぽんぽん痛いの?」

 コテンと首を傾げて天使のコスプレをした女性を見上げます。

 咄嗟に鼻を押さえる天使のコスプレをした女性。


「やべー、やっぱ会員になっておけばよかった。会員じゃないものがこれ以上接触したら。私がヤラレル! …………あ、期待した時点でやばいって気付け私……」

「……どんまいなのです」

 こうして地上展開していた天界の反体制派100名を【捕らえたのでした】。

 あとは、楽しい洗脳の時間なのです♪


カクヨム+α

 言っておくのです!

 私は3歳なのです。

 本来寝て食べて遊ぶのが仕事なのです!

 過剰な期待はだめなのです。うつ病待ったなしなのです!

 神様の労働組合に入ってストしたいのです!

 と言い切ったところで大天使のおねーさんに抱かれて眠るのです。

 zzz

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