第104話「神獣様と神樹の関係3」
神樹様。東京ドームで例えるのも馬鹿らしく思えるほどの巨木である。
近寄るとその姿は、地平線の向こうまで続いているような錯覚を覚える、木の壁である。しかしてその全容は街が3つ。小国ならすっぽりと入ってしまいそうな巨木で会った。
そして今、その巨木はズリズリと色々なものを引きずりながら帰ってゆく。
その光景の中、時折神樹が発する。
光を浴びた木々は次々と再生されていく。
一応神樹様なのでその辺気を使っているようですね。
さて、取り敢えず我々は、神樹と遭遇したその場で野営することとなりました。
「野営のご飯不味いっす」
神宮寺君に愛のツッコミ(魔法)を入れる事は忘れません。
不味くても黙って食べる。そして感謝して食べるのです。
「……よく見たらそっちのテーブルだけ、ジンギスカンじゃないですか!」
はい。こちらのテーブルは夜勤じゃない方用のお食事です。
神宮寺君の方は、夜勤の方が手早く済ませるお食事です。
聞かずにそっちにかぶりついた神宮寺君が悪いのです。
「ご相伴に……まーちゃん先輩それは何でしょうか……」
「結界です」
「いやそれはわかります。何で結界なのかを聞いているのですが……」
はて、そんな簡単なこともわからないのでしょうか。
「お爺ちゃん?もう食べたでしょ?」
「そうよ。下っ端はもう食べたでしょ?」
「じんちゃん。運命神様呼ぶ?それとも消える?」
最近何の遠慮なく、夕飯時間に姉妹神が降臨しています。
いらっしゃるのでしたら、もっとちゃんとしたメニューにいたしましたのに……。
「まーちゃん先輩のいけず……」
可愛くもない。整ったお顔とはいえ30代の神宮寺君が拗ねます。
やがておもむろに立ち上がると、手を掲げて固まります。
不思議そうな顔をしています。
それはまるでスプーンを掲げて変身しようとしたウルトラ〇ンの様でした。
「まーちゃん結界から逃げられるとでも?」
「まーちゃん先輩、最近魔王化が顕著ですね……」
?魔王様ですか?
「のんびりチャラいけど名君、の魔王様ですか?」
「しまった!!!! この世界の魔王も、大魔王も、聖人君子数万ダース並べても勝てない程のいい奴だった!!!」
数万ダースって。確かに人間で聖人と呼ばれる方、実録では碌な人がいないですがね。詐欺師だったり。殺戮者だったり。宗教テロリストだったり。
結局力の勝者が聖人と呼ばれるのが通例です。
「まーちゃん先輩。身もふたもない事言わないで。俺の部下にもその聖人出身者いるんですから、飲み会とかでネタにされて出社拒否とかしちゃう敏感な話題なんですから……」
「首にしちゃいなさい」
「労組がうるさいんです。あと法律も」
神様の世の中も世知辛い世の中の様です。
その後なんだかんだでジンギスカンにありついた神宮寺君は、『中間管理職はつらいっす』と、私としては『ようやくわかったか……』と言うような愚痴を漏らし続けて、姉妹神に天界へ強制送還されてゆきました。
翌朝。
朝は簡単にサンドイッチなのです。もうすっかりお忘れかと思いますが、案山子である権三郎は、眠る必要が無いので朝食と昼食を深夜の空いている時間に用意してもらっています。
「おいしい。ポテトサンドこそ至高!」
「美味しいです。たまごサンドこそ究極!」
「待ってください。なぜ、パンの耳だけ? ていうかそこに即席の竈が見えるのですが目の錯覚ですか?」
「即席ではありますが。十分に実用に耐えます」
「問題そこじゃないっす」
ボケなのか、ツッコミなのか、存在と同じように立ち位置不安定な神宮寺君がこだわりを見せますが、無視して出発となりました。
「これは見事に………」
神樹様へと続く真っ直ぐの長い道は、見事に凸凹でした。
一言いいましょう。
「仕事が雑です」
今一瞬、神樹様がざわつきました。
「しょうがないですね」
私は権三郎から飛び降りると、懐から魔石を取り出し大地に仕込みます。そして足で踏み。
「えい」
私の可愛らしい声を合図に、急激に神樹様までの道のりが整地されてゆきます。
「何、したんっすか……」
呆然とする神宮寺君。神様なのですからわかりそうなものですが。
簡単なのです。ここらか神樹様までの道のりが、未来永劫平坦を維持するように魔法石にプログラミングしただけです。もし、道を掘り起こそうとすると、その状態変化を魔法石内部に組み込んだ感知ユニットで感知して状態変化を元に戻す反作用が働くようにしただけです。
「それって何してもへこまない道って事じゃないですか? エネルギーは……あ、外部魔法力ですか……」
「また一つ我が国にオーパーツが誕生したのう……」
獣王様。遠い目をするのは失礼ですよ。
「それでは皆さん快適な旅としゃれこみましょう」
ただひたすら真直ぐな道を進みます。1時間して飽きたなあと思っていると、神樹様から光の演出がありました。……接待に必死なようです。
3日移動に費やしました。光の演出もネタ切れの様で飽きる日がきます。
4日目のお昼を食べた後、ようやく目的地である神樹様入り口に到着しました。
そこは神樹様を模した木製の巨大なアーチがあり、アーチの先から光があふれてくる神秘的な広場に到着しました。
そして、巨大アーチの向こう側から巨大な何かが現れようとした。その時!
「ごめんなさん。おねむなので私寝ます。皆さん引き続きお願いいたします。あ、アーチの向こうの神獣様もどうぞご遠慮なく……ふぁあぁ。zzz」
私が眠った後、凍り付いた時間が30分ほど続いたとか。
知ったこっちゃないのです。私は眠いのです。
カクヨム+α
「寝ちゃったね……」
「寝ちゃいましたのう……」
「寝ちゃう?普通」
演出を諦めて出てきた神獣があきれがちでいう。
「神獣君、こんち~」
「あ、神宮寺様。本日はお日柄も良く……」
「まーちゃん。寝顔も可愛いの♪」
神宮寺と神獣の間を縫って中学生くらいの少女が1人、マイルズに近付き寝顔を眺めている。
その姿に皆唖然とする。
獣王以下獣人たちは聖なるものの登場に平伏し続ける。
神宮寺と神獣は信じられない者みているようで、再起動に時間がかかっている。
「……ん? あなた、私のサブボデーの妖艶さにメロメロなの?」
「まて。その体はなんだ」
神獣がようやく再起動する。
「これ? なんか足元ムズムズする! って思ったら感覚が乗り移れる器ができていたの! きっとまーちゃんが作ってくれたと思うの! だから寝ちゃったの。かわいいねー」
マイルズの頬をプニプニしながら神獣が言う。
とりあえず何から突っ込んでいいのか迷う神獣は一番重大なことからツッコミをいれる。
「いや、お前の出番次の話の目玉ですから!」
シナリオブレイカー神樹様。3級神。
「名前はまだないの!」
人間に読めないだけで名前はあります。愛称もあります。
「それは次回のおはなしなの!」
(次回に続く)
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