第91話「変態王子とお嬢様」
薄暗い部屋の中、私マイルズにスポットライトが当てられる。
「ではこれより、勝さん1号2股疑惑に関する裁判を開始します」
私のセリフに合わせて薄暗い部屋に明かりがともります。
中々の演出です。
あ、そろそろ色々『魔法道具進みすぎじゃね?』と思われているかと思いますので簡単に要因だけ解説です。
要するに『オブジェクト化』なのです。
私と勝さん1号で手分けして自然現象を小型魔石に積み込み、外部からのアクセス可能状態要するに関数化しておくのです。要するに例えば『風を起こす』に発生元、風力などのパラメータを設定して呼び出せば新たに魔法回路を構築する必要がなくなるという事です。
それを実現するために2人でせっせと関数化した魔石を作りお互いで共有しました。
そして魔法道具を作るときは必要なオブジェクト魔石コピーをするのです。そして関数を利用した魔法道具を構築する。これにより手間の削減と工程の明確化の効果から複雑な魔法道具構築が可能となりました。
それもこれも『私の言葉』が魔法回路化するという現象が大きいのです。前述したことなど実は既存の研究者にはできない事なのです。彼らから見たらまさに回路なのです。その回路上の線の内部に細かな魔法文字が組み込まれており回路と文字をもって魔法道具を構築するというとてもじゃないけど複雑化できない状況なのです。
なんで、私たちがこんなことができるのかと言うと眼に特徴があるからでした。
一般的に『精霊眼』と呼ばれる眼を持っていました。これは精霊の加護の中でも最上級の加護であって祖母曰く『希少なサンプル』だそうです。……なんで勝さん1号まで引き継いだのかは謎です。
とにかく、私が人体の魔法回路、細胞単位での魔法力の影響などについていろいろできるのはすべて勝さん1号が魔法道具研究をコツコツ行ってくれ、途中マモルン実験など挟んだ努力の成果だと言えます。
「えーっと、冤罪を主張する!」
功労者、勝さん1号が手をあげます。
「却下」
裁判長席で木槌を打ちます。
ちなみに裁判長席はお久しぶりの変態王子が座っています。
尚、『まーちゃんチェアを用意できなかったので私のお膝の上に座るとよい!』と興奮気味に言われました。……仕方なく座っています。
「では、原告陳述を」
原告席から美少女2名が立ち上がります。
「カミラ・ディバーンと申します。私、マサル様と同じ研究をしております。はじめは尊敬できる研究者だったのですが、日に日にその研究に対する真摯な態度と照れ隠しなツンとした部分に心惹かれ。(実験測定の為)夜を共にし(うまくデータが取れたので)翌朝コーヒーを一緒に頂く関係でしたのに……信じておりましたのに……(実験継続の)将来を共にする約束までしていただきましたのに……こんなことに……」
お嬢様がうつむき顔を覆います。
「
「おいおい! 答弁! 被告からの反論! 裁判長横暴!」
勝さん1号が何か言っていますが。
「女性を泣かせた時点であなたは有罪です。では余罪について次の方どうぞ」
隣に立っていたお嬢様がカミラさんをいたわって座らせます。
「……まって、冤罪でも俺悪役半端ないんだけど……」
「被告。勝手な発言は自粛するように」
全く、まーちゃん閻魔帳からあなたの余罪引っ張り出しますよ?
「裁判長、続けても?」
カミラさんの落ち着かせてお嬢様から手が上がる。
「ジェイミー・ナバスと申します。今展開中のマサルキッチンでマサル様と共同経営者としてお仕事をしております。私一目見た時からマサル様に惚れておりました。縁あって店舗経営を共にするようになり、(店舗管理・価格設定について)激しい夜を共にしたのは幾夜にも及びます。ですので、こんな素敵な女性がいらっしゃるとはつゆとも知らず(嘘)。ああ、私は何という罪深いことを……」
泣き崩れるように見えるジェイミーさん。『見える』だけね。
「
「国王様!!! 司法権が機能してません!!!!!!」
無理なのです。すでに司法は我が手の内なのです。
「裁判長! 被告側からの反論よろしいでしょうか」
「ちっ」
「裁判長、舌打ちはないっす」
スーツを着て伊達メガネの神宮寺君。
「しょうがないですね。2分でお願いします。まーちゃんお仕置き準備で忙しくなるよていなのです」
いわれてずれたメガネを治す神宮寺君。
「では、反論です。そもそもお2人が主張するような関係に被告はありません」
「ほう」
「まず、カミラ・ディバーンさんですが訴えにあるような研究の場は2名で回せる実験のではなく他の助手が常についており確認もとれております。また、勝さん1号ですが、生来のヘタレかつ鈍感男の為女性へのアプローチができるはずもなく、Mr素人童貞と呼ばれています」
おい!
その二つ名初めて聞いたぞ!
わかってるかな? 今君2人敵に回したよ?
「次にジェイミー・ナバスさんこちらも主張しているオフィスでは常に複数名と一緒にいたことが確認されています。また、勝さん1号ですが、生来のヘタレかつ鈍感男の為女性へのアプローチができるはずもなく、Mr素人童貞と呼ばれています」
うん、最後の一文2回言う必要あったかな?
カンカン
「判決! 被告、神宮寺孝! むち打ち百回の上、結婚神及び恋愛神への過去の恋愛話の暴露10件の刑!」
「横暴っす! てか被告違うっす! あのお2人への密告はやめて! 半日で天界中にひろまっちゃううううう!」
カンカン
「これにて閉廷!」
ザワザワと勝さん1号が雇った従業員たちが口々に『面白いエンタメだったね』『これ放送したら受けそう』『勝さん爆ぜてほしい』『オーナー素人童貞だったんだ♪ やっぱり♪』等々。勝さん1号、雇う人はちゃんと面接した方が良いですよ。
さて、終わり終わり~と降りようとしたところ変態王子とカミラさんの視線が合っていることに気付きます。
私はそっと降り「いきなさい、後悔しない様に」と変態王子を促します。
お2人の間に何があったか知りません。
行き違いや、すれ違い。良くある話ですが話せるのであれば話した方が良いのです。
さて、勝さん1号へのお仕置きはどうしましょうかね……。
「いや、冤罪だから! 素人童貞って、生殖機能まだ作ってないから!」
そんな勝さん1号をジェイミーが腕を絡ませ連れていきます。
それを目ざとく見つけたカミラさんは飛ぶように追いかけていきます。
それを唖然と見つめる変態王子。
「みごと振られましたね」
「うむ、やっときちんと振られたな。いとし子よ私を慰めてくれ!」
私を抱き上げ、肩に乗せる変態王子。
「あなたはグルンドの料理人、変態王子なのです。それでいいのです」
「うむ、というか変態王子は固定なのか?」
「カクノシンとか偉そうなので却下です」
変態王子と私は薄く笑いあいます。
「祝いの菓子折りでも後で送ってやろう……」
「協力しますよ」
こうしてそっと変態王子の恋が終わったのでした。
……ていうか、絶対本人に伝わらないよ! あなたの態度では!
変態王子の初恋(語り:レベル神 神宮寺)----------------------------
【婚約(3歳)】
(変´・ω・`)「家柄よし。お家の為変なの来ないといいな」
【幼少期地獄の特訓編(5歳)】
(変 ; ^ω^)「え? このレベルが最難関……つまらん。って言ったらスパルタきた! やっべ、言葉選べばよかった。ん? 婚約者の絵? ああ、可愛いですね(棒)」
【巡りの儀(10歳)】
(変 *ノωノ)「やべーよあいつ。なんか話してると調子狂うよ。なんだ胸がかすかに変だ。そうだ! 世直しに行こう!」
【途中】
(変 *´▽`*)「巷で話題の菓子作ってみた! どや、女子はこれでわだいになるだろー! ……あれ? 冷たくね?」
【王選の儀の話がカミラに来た当日】
(変´・ω・`)「ふーん。嵌めようとしたら嵌められるっておしえてやんよ! てか、迷いなく受けたなあの女……あーもう、龍とかボコってこようかな」
…………
(変 ゚Д゚)「でさー。わかんねーのよ女ごころ! なあ! 聞いてる?」
(黒 ・∀・)「(面白いやつキター――――!)」
(白 ´Д`)「(不憫なていうかこいつ素材凄いな)」
(変 # ゚Д゚)「ていうか! このうっぷん晴らしに『世直しの旅2』に行こうと思うのよ! ついてこない?」
(黒 ・∀・)「おっけ! 主人」
(白 ´Д`)「ふむ、力を示せばついていこう」
(30分ほど肉体言語での説得作業)
(黒 ・∀・)「主人! よろよろ!」
(白 ´Д`)「御見それいたした、主人」
【婚約破棄当日】
(変 *´▽`*)「乗ってやったぜ! さぁ嵌めたつもりで家ごと ごーとぅーへる! 俺は俺で国外楽しみ♪ ……ん、処刑だったら? 俺をなめるなよ、ふふふ♪ ちなみに実家は弟がいるから安泰だぁ!」
【マイルズと遭遇】
(変 *´▽`*)「運命!これだぁぁあっぁぁぁぁあ!」
(変 ノ´∀`*)「これが濃い……いや恋か! てかあの女に抱いていたのも似た感じだから……あ! 初恋あの女か! 仕方ない。今気づいたぜ!」
【この話当日】
(変 *´▽`*)「やっほ女(名前覚えてない)! 幸せそうじゃん! 俺もしあわ……って聞かずに勝さん1号に向かっていった……悔しいやら、悲しいやら……よしこの感情利用していとし子に甘えよう! 幼児は最高だぜ!! ひゃっほーー!」
マイルズ「とりあえず神宮寺君は明日のお昼虫の佃煮です。いやでも食べさせます」
神宮寺「実家思い出す味わい! まーちゃん先輩サンキューです!」
マイルズ「……ちっ」
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