第48話「門番最強説、再び」

「はい!獣王都20万の皆さんお待たせいたしました!」

 皆さんこんにちは! マイルズ3歳です。

 えっと、一言言っていいかな?

 大講堂じゃなかった!

 市内中心部。屋外大劇場でした!

 ポチの宣言の後程なくして獣王様と王妃様の介入がありました。


「本日は食の聖女マイルズちゃんファッション対決をお送りしたいと思います! 入場できた皆さん。ちょーらっきー!!」

 はい、MCのタマが盛り上がってます。

 普段は大人しいふりをしているのに……、いわゆるマイクを握ると人格変わる人だったようです。


「さて、今日はスペシャルゲストが来ています! さぁ、刮目せよ愚民ども!! 我らが王妃様! サーラ様だ!!!」

「皆さんこんにちは、司会進行のネロさん『愚民』はだめですよ」

 その通りです。一線は守りましょうね。タマ(ネロ)さん。


「失礼いたしました! 獣人のみんな! ごめんね♪」

 湧き上がる歓声。もうね。私でなくていいんじゃないかな?


「さてさて、ファッション対決ですが今回対決の経緯をご説明しましょう!!」

 そうです。タマ、本来の道にお帰りなのです。


「今回の経緯なのですが、食の聖女ことマイルズちゃんの『男装』したいという我が儘に対して! 皆で止めろ! という事です!! ……端的すぎましたね! でも詳細はやっぱり割愛! マイルズちゃんの我が儘に対してホーネスト様の英断によりファッション対決に『勝てば』、マイルズちゃんの我が儘を聞こうと! その意志通したければ! 勝負で白黒きめるがいい!! という事で開催! とあいなりました!」

 おいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!

 男装じゃない! 今が女装なのです!!!

 ……ちっ、民衆が敵に回ってしまった。


「嘆かわしい事だわ……。かわいい盛りの子がそんな暴挙に出るなんて……」

 王妃様。なんで悲しいそうな仕草しているんですか?

 不要ですよ。そんな演技。縁起でもない! ………チラチラっ。


「はい、マイルズちゃんが余裕ありげな気配を出しましたので早速勝負に入りたいと思います!」

 タマがこちらの気配を読んだようです。ちっ、侮れません。


「勝負の方法ですが、これより各陣営のファッションをマイルズちゃんに着て登場してもらいます。皆さまにはご覧になった後入口で配られた、赤と白の札、どちらか良かったと思う方の札を上げてもらい、その多さで勝負! それで決したいと思います! ……さぁ、いいかな! じゃあ! まずは王女様親衛隊プロデュースのお嬢様ファッションだ! マイルズちゃん、かもん!!」

 劇場裏で待機していた私は背中を軽く押されて舞台に上がります。


「おっと、これは正統派!」

「全身ピンクのコーデで来ましたね。チューリップハットと可愛らしい長袖ワンピースさりげなく張ったチュニック柄が可愛さを引き立てています。そして短いあんよに紺色のニーソックスがワンポイントがいいですね」

 恥ずかしい……もじもじしながらステージから伸びている特設ランウェイを歩く。

 何故だか歓声が上がります。

 こっ殺せ……。

 最後ランウェイを歩き切って戻ったところでぺこりと頭を下げ舞台袖にはけました。


「さぁ、いかがでしたでしょうか。もう勝ちが決まった様なものですが……」

「慢心はいけません。ですが、あの恥じらう幼女。……素晴らしいですね!」

 くっそ、覚えているがいいです。まーちゃん閻魔帳はどんどん拡張するのです。

 

「では、皆さん。こちらが良いと思ったら最後の審判の時に赤い札を挙げてくださいね」

 いや、その赤一択みたいな言い分には異議があります。


「大丈夫です。こっちのファッションの方が似合っています! マイルズ様。勝てますよ!」

 ああ、親衛隊長ありがとうなのです。貴女は素晴らしい人です。


「さあ、胸を張っていきましょう!」

「はい、なのです!」

 着替えを完了してスタンバイ済み。

 MCタマも絶好調でしゃべり倒しているようです。


「さぁ、皆! マイルズちゃんの男装準備もできたようだ!! 今から呼び込むから準備はいいか!!」

 地鳴りがしました。気のせいだと信じたい…。


「せーの! まいるずちゃーん!!!」

 出辛い……けど、男は度胸なのです!


「おお! マイルズちゃん登場! そしてまさかのボーイッシュコーデだ!」

「白のオーバーオールに白いシャツそのうえ足元も白のスニーカ! 斜めに被った帽子も白、これは先ほどの清楚系お嬢様から一転、清純だけど活動性もある可愛さ120%アピールできましたね!」

 きっ聞こえないのです! 勝てばいいのです!!


「おお、活発な笑顔を浮かべてランウェイを疾走。止まったと見たら観客に笑顔アピールだ!! これはあざとい! 必死すぎます!」

 なんとでもいうがいいのです。この活動的な服で私を男と再認識してもらえれば、……勝利は我にありなのです!!


「どうですか王妃様」

「いいですね。ぜひ熊のぬいぐるみを抱かせたい!」

 ……王宮に帰りずらいのです……。


「さぁ、マイルズちゃん会場全体まるで一人ひとりに笑顔を振りまくようにして帰っていきます! もう一度言わせて下さい、……あざといと!……」

 勝てば官軍なのです。

 さて結果を待ちましょうか。


「さあ、最後の審判の時間です。皆さん良いと思ったほうの札を天高く掲げてください! いっせーの……」

 結果、白圧勝です。


「では最後にマイルズちゃんに登場してもらい、王妃様から総評を頂きたく思います」

「皆さん、お疲れさまでした。どちらも甲乙つけがたいマイルズちゃんの可愛さでしたが」

 ん?そうですか?


「ボーイッシュファッションも行ける! と私に再認識させてもらいました」

 うん。ほう。


「我がファッションブランドもマイルズちゃんコーデに負けないクオリティで商品を提供してまいります」

 まて、完全に宣伝ですよね。


「今後ともご期待ください。最後にこの勝負の勝者たるマイルズちゃんには」

 うう、男装と言うか男の格好に戻る権利ですね。


「1日限定。今回のボーイッシュファッションで過ごす生活券を贈呈したいと思います! おめでとうございます!!」

 1日……。


「何じゃ、マイルズ。条件文を読んでおらんかったのか?」

 えっと、サインした時に……親衛隊長が作戦について色々と……。


「マイルズ様。おめでとうございます」

 ポチの後ろから現れる親衛隊長は晴れ晴れとした笑顔でした。

 ……はっ、契約書から目を離す役割!


「マイルズ様の着せ替え。眼福でした……」

 ちょっ、はぁはぁ言わないで! 怖い!

 結局、当初の目的聖女については訂正されることができませんでした。

 時間が、時間がきっと癒してくれる。……そう信じてます。

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