第29話「変態3分クッキング」
なってこった!
変態襲撃計画が失敗した。
気と農業魔法のコラボレーション魔法『遠隔地雷』で吹き飛ばしたのに、何事もなく着地しやがりました。
神王国の変態は化け物か!
変態王子は華麗な着地直後、私を抱え『高い高い』の刑をしてきました。「権利だ、ふっ」とか言ってました。……少し楽しかったです。
しばらくすると祖母が出てきて色々と怒られました。
気と農業魔法のコラボレーション魔法『遠隔地雷』は封印だそうです。
ちぇ~面白い魔法だったのに。
ぶ然としながら今日も配達です。
今日はお母さんの所でご飯なので祖父の農園から配達なのです。
さすがにお仕事中の変態は現れないでしょう。
……いえ、フリではない。
もう一度言います。フリではないのですよ。
「ふむ、およびかな?」
呼んでません。
という事でコラボ魔法2「指向性光学型(レーザー)魔法(弱)」。
手のひらを変態に向け魔法力を発動するとその瞬間変態に穴が……開きませんでした。
手を向けた瞬間横に飛びやがった……。なんという野生。
「これも封印だな。リーリア殿には私のほうから報告しておきましょう」
「な! まっt」
言葉が終わる前に変態は駆けていった。
後で聞いた話、どうやら休憩時間をうまく使ってつけていたらしい。
ついでに祖母への密告で金一封を頂いたとか……。
利用された!? というか再度封印指定されました。
「指向性光学型(レーザー)魔法(弱)」だけですよね。後(中)と(強)が………。
あっはい、だめですよね。
ええ、知ってます。
くっそ、別の名前にすれば……ん?そんな問題ではない?
反省はしますが……後悔はしない!
私はそんな人生を……おばあちゃん痛いです耳引っ張らないで~。
ん~、開発する魔法がことごとく封印されます。
光学系だけでもあと3つあるし、振動系ならもっとあるのですが、見せたら最後封印されてしまいますね。というか私の魔法見事にすべて攻撃魔法ですね。
基本コンセプトを間違えましたかね……ていうか、すべて変態王子のせいな気がします。
で、現在研究所で癒しの時間中です。なぅ! なのです。
頭に当たるクッションは小さいですが、やはり包み込むやさしさは女性が一番なのです。
ん?研究で行き詰ったのですか?ぜひ、このマイルズで癒されて下さい。
私も癒されます。ほへぇ~。そういえば、この世界基準値はありますけど、桁の単位がいまいちですよね~。
ん?桁の単位が何かって?ほら3桁区切りに単位を設定して1,000だったらK。
1,000,000だったらMとか初めに定義しちゃえば学問の幅広がりま……おっと、癒しのおねーさんが上司のおじさんと話し始めてしまいました……帰りますか……。
お家に帰って夕飯までまったりしましょうか。
「ただいまなのでーー、……変態王子、お仕事は?」
「ふむ、朝番なのでな。さっき終わった」
「そして俺に料理を教えてくれているところだ!」
ザン兄が敵に篭絡されてしまった……。さて、何を作るのでしょうか。
自宅の料理場にひょっこりと顔を出す。
変態王子が見慣れた……。
いえ、マイルズとしては見慣れない料理器具を、そう、卵焼き用のフライパンを持っていた。
「……なっなんですか! それ」
すると、変態王子はあからさまに『釣れた!』という目をしていますが、今はどうでもよいのです。
「先日鍛冶屋の主人と仲良くなってな、作ってもらった」
なんですと!
高々1か月程度の滞在でそこまで人脈を……こら、私をなでないでください。
料理中に外から帰っきた不衛生な幼児の頭を撫でるとはどうゆう了見ですか!
手を洗えばいい?
うん。OKなのです! あ、サンプルできたら献上することを許可します。
何を止まっているのですか?早くするのです。ハリーハリー。
「ふむ、このギャップで私はご飯3杯いただける」
変態が何か叫んでいます。が、手を止めてはいけません。
まずは調味料を入れてたまごを……まて、その手の瓶は何だ! その琥珀色の液体は……。
「出汁だ」
ふふふ、と笑う王子。負けた!
これもどこかで売っているのか!
いや、原材料……しまった!
乾物屋の存在を見逃していた。干し肉があるのだ。専門店があってしかるべしだと……。
「うむ、愛しの幼児よ。詰めが甘いな」
ぐはっ。やっやりますね王子。変態のくせに。
だし巻き卵は非常にシンプルな食べ物ですが、巻くのが難しいです。しかし変態は火力調整機能が未熟な魔法具のコンロで見事に焼いていきます。
かるく『よっ』とつぶやいてまな板の上にその芸術品をのせます。
王子は軽く私にウィンクして、だし巻き卵の端を少し太めに切り落とします。
そして私の前に提示します。
……早く献上するのです。ちょっ、まだ届かないのです。高すぎるのです。
だし巻き卵を凝視しながらも、変態王子をうかがいます。『幼児よ、何かあるだろ?』とでも言いたげな顔です。仕方ないですね……。
「お兄ちゃん! 大好き!」
そういって足に抱きつきます。棒読みです。演技は言っていることがバレバレです。
……こら、そこのザン兄。引かない。
変態がまだ献上品をくれません。上目遣いでみやると『フォオオオオオ』とか『幼児もえーーー』とか『あざと可愛い』とか『普段冷たいからこそそのギャップがまたいい』などなど叫んでいます。
ちっ、次のプランが必要ですね。私はくねくねと身もだえ気持ち悪い変態王子の裾を引っ張ります。変態王子と目が合うと口を開けてみます。
「まっまだはやい、まだはやいぞ幼児よ。もっと我々親密になってから段階を踏まねば! だが、なぜだ。この早鐘の様な心の臓のときめきは!」
身もだえます。ちっ、早く卵焼きよこせ。
「マイルズ」
見かねたザン兄が卵焼きを切って『あーん』してくれます。あーん、なのです。
「うまーーーい! ザン兄、天才なのです」
ちょっと出汁がいまいちな気もしますが。美味いのです!
変態から離れてザン兄に抱きつきます。やはりあなたは尊敬する兄なのです。
「な、なん……だと……」
一連の流れに固まった変態王子は『ギギギ』と擬音を鳴らしながらこちらを見ます。
では、晩御飯であいましょう! さらばなのです!
変態が怖くて逃げました。ええ、血涙まで流さなくてもいいじゃないですか。
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