キンセンカ

またね、と交わしたその日から


どれだけ空を眺めては、


ひとりの夜を数えただろう。


月なし夜空は涙色。


私の胸をしめつける。




連日連夜の長雨は


泣き疲れたようで


雲間にちらりと月の影。


青く染まる街を抜け、


私は彼に会いたくて。




私と彼の約束の場所。


満ちた月華に照らされて


彼と2人のいつもの景色。


彼の姿は見当たらない。




ひとり見上げる寒月と


夜風がツンと鼻をつく。


白い吐息は揺らめきながら


無音の夜空に溶けていく。




溢れる想いが頬を伝う。


とめどなく、こみ上げて、


月が揺らぎかすむ。




ひらりひらりと舞い降る雪が


赤らむ頬をそっと拭う。


ひんやり冷たく心地いい。




声にならない泣き声が


音もなく、寒空に響き渡る。






月は雲に隠れてしまったのね



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