キンセンカ
またね、と交わしたその日から
どれだけ空を眺めては、
ひとりの夜を数えただろう。
月なし夜空は涙色。
私の胸をしめつける。
連日連夜の長雨は
泣き疲れたようで
雲間にちらりと月の影。
青く染まる街を抜け、
私は彼に会いたくて。
私と彼の約束の場所。
満ちた月華に照らされて
彼と2人のいつもの景色。
彼の姿は見当たらない。
ひとり見上げる寒月と
夜風がツンと鼻をつく。
白い吐息は揺らめきながら
無音の夜空に溶けていく。
溢れる想いが頬を伝う。
とめどなく、こみ上げて、
月が揺らぎかすむ。
ひらりひらりと舞い降る雪が
赤らむ頬をそっと拭う。
ひんやり冷たく心地いい。
声にならない泣き声が
音もなく、寒空に響き渡る。
月は雲に隠れてしまったのね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます