月下美人

私には気になる人がいる。



月夜の公園 噴水の前。


私と彼の交わさぬ約束。


少し不思議な気になる彼と


ベンチに腰掛け、見上げる夜空。


私と彼は月の下。


陽の下の彼を私は知らない。



青白い月光の似合う彼の手は


赤く火照った私の頬を


ひんやり優しく包み込む。




「今日は三日月がとても綺麗だね。」




君の瞳に揺らぐ三日月。


こぼれた雫が指を伝う。


この手のひらに


触れて感じる君の温もり。


君との距離はあと数センチ


これ以上、僕らの影は重ならない。



たった5文字も言えない僕を


君は許してくれるだろうか。


僕はもう月の美しさを語れない。




「君と月を見られてよかった…」

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