孤独の雑草【未完成】

たくあん

1話(原点)

 人というものがそうなのかはわからないが、少なくとも私は文才がない事をわかっていながら突然なにか書き記したくなることがある。何を書くわけでもなく、ただ書いては恥ずかしくなって消し、また書く。そんなことを幼い頃から幾度となく、繰り返してきている。私はそんな自分が好きではない。それなのに繰り返してしまうのは誰かにこの気持ちをぶつけたいという深層心理の現れなのかもしれない。こんな私には興味がないかもしれないが、少しの間でもお付き合い頂ければと思う。

 

 あまり昔の事は覚えていないが、小さい頃から本が好きだった記憶だけはある。それも絵本ではなく、活字の多く並んでいる一般的な本。

 幼稚園の年少の頃は、毎晩父に本を読んでもらっていた。しかし、普段からあまり本を読まない父は数行読んでは眠くなってしまい、幼稚園児の私より先に寝てしまう事が多かった。その時、起こそうとしてもなかなか起きない父を頑張って起こすより、自分で先に読んでしまおう。そう思ったのが私がよく読書をするようになったきっかけではないかと思う。それからは自分でも驚くほど色々な本を読んだ。幼稚園の図書室にあるような絵本には興味がなく、図書館に行って児童向け文学のような、少し字が大きめで所々にふりがながふってある本を読み漁った。本からは様々な事が学べたし、何より友達とプリキュアごっこやらおままごとやらをしているより、本の世界に没頭していることが楽しくて仕方がなかった。そんなだからもちろん幼稚園では友達なんて出来ず、小学校に上がる事も興味がなかった。

 初めて背負ったランドセルは紺色だった。何故紺色だったのかは未だにわからない。小学校入学を控えたある日母が突然買ってきた。以前から母とは何かと折りが悪く、母は何事においても自分の思い通りに物事を進めたい人だったので、自分では選べない事くらい理解していたし、それで怒られるくらいなら別に選びたいとも思っていなかった。しかし「ランドセル、買ってきたから。学校始まったらこれで学校行きなさい。」と言われたときには少し驚いた。何故紺なのだろう。これではまるで男の子ではないかと。けれど文句を言ったところで変わる訳でもなければ、どんなのが欲しいという希望があった訳でもないので黙ってそれで通学した。

 そんなランドセルだが、友達0で小学校へ入学した私がなんとか小学校になじめたのはそのランドセルがきっかけだった。

 入学式が終わり、教室の席についたとき隣の席の男の子から「なんでランドセル黒なの?」と話しかけられた。日頃、本ばかり読んでいて同じ年頃の人に話しかけられるのが久しぶりだった私は焦ってしまい、「わかんない。」とただ一言返すのが精一杯だった。しかし、その男の子はそんな無愛想な私を気にするふうでもなく「ふーん。変なの。でも、なんかいいじゃん!」とにっこり笑いかけてくれた。久々に会話らしい会話が出来て私もなんとなく嬉しかったのか自然に笑い返すことが出来た。その時話しかけてくれた彼が竹田奏。彼のお陰でその後私の学校生活は良くも悪くも色々起こり、幼稚園の時のように本だけに頼って生きて行くような事はなくなった。私が今感謝している人の内の1人。初めての友達。ここがきっと私の原点。


1話(原点)-完-

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