溺れる者は藁をも掴むとは言いますが……

 GW皆さん楽しんでいますか? 私はあんまり外出しない不健康な日々を過ごしています。皆さんはこんな不健康な過ごし方をしちゃ駄目だゾ。折角の行楽日和、目一杯楽しんでくださいね!


 さて、日本中がお休みの霊圧に包まれている中(霊圧?)、ネットではまたしても情報弱者をあざ笑う事件が発生しておりました。その事件のインパクトの強さは近年稀に見る程で、記事を目にした瞬間に今日のこのエッセイのネタにしようと即決したのです。


 まずニュースのタイトルがすごいですよ。


『根拠なし「妊娠米」高額売買』


 は? 妊娠米って何? って話ですよね。記事を開くとその謎の妊娠米の正体が発覚します。


『妊娠米とは、妊娠しやすくなる「妊娠菌」が入ったお米の事だったんだよ!』


 まさに『な、なんだってー!』案件ですよね。妊娠菌て。小学生かと。

 しかし不妊に悩む人にはこう言う胡散臭いものにまで縋り付いてしまうんですね。弱った心の隙間を埋めるのは喪黒福造だけでいいんですよ! ドーン!


「女性が妊娠しやすくなる『妊娠菌』がついている」と称した白米がインターネットで売買されている事が分かりました。

 そのお米は「妊娠米」と名付けられて1合当たり最高1500円で出回っているのですが、新聞の取材によると、出品者に妊娠経験がなかったり、購入者にサプリメントのカタログが送られたりする事例が確認されています。

 

 一体どこのインターネットでこんな詐欺をやらかしているのか。気になりますよね。そう言う専門のサイトで業者がやらかしているんだろうと、そう思いますよね。

 実は、違うんです。中には業者の人も混じっているのかも知れませんけど、これ、小遣い稼ぎで素人の皆さんがやっているんです。


「妊娠菌」付き商品が売買されているのは、フリーマーケットサイト「メルカリ」。白米のほか、サプリメントや手描きの絵、アクセサリーも並んでいるそうです。


 まーたメルカリですよ。メルカリ案件ですよ。本当、人間って悪知恵を働かす時が一番頭を使うんじゃないかって言うくらい様々な手口を思いつきますよね。ある意味関心します。その知恵をどうにか他の分野で生かせないものか……。


 商品の販売ページによると、妊娠菌は「女性が妊娠時や出産前後に触れたものにうつり、それを譲り受けて妊娠する人が続出している」と紹介されているそうです。初耳ィ!


 しかし、日本生殖医学会は「過去に研究された事はなく文献も存在しない」と、菌の存在を否定しています。そりゃそうです。当然です。根拠があるものなら既に周知されているはずですからね。


 母子手帳や陽性反応が出た妊娠検査薬の画像を添付して効果を信じさせようとする出品者が多く、「6人の子どもがいるので強烈菌」とアピールしたものもあったのだとか。こう言うの、簡単に捏造出来ますよね。


 妊娠米の具体的な使い方として、少量を袋に入れてお守りとして持ち歩いたり、炊いてからおにぎりにして食べたりする事が勧められています。

 しかし品質や衛生状態は保証されておらず、安全性は無視されたまま出品されているようです。素人の思いつき出品ですからね。まぁ当然ですわ。


 価格は1合500円前後が相場で、「友達が妊娠米をもらって8人妊婦なう」と言った説明が添付されるのだとか……このコメント、頭悪すぎない?


 そんな胡散臭い商品ですが、話によると2013年以降、数百件の取引が成立したそうなんです。世の中にはワンクリック詐欺やオレオレ詐欺に引っかかる人が未だにいるようですし、その比率から考えればこの実績も納得出来るものがあります。溺れる者は藁をも掴むと言うヤツですよね。


 今年(※執筆時)3~4月には「子宝祈願で有名な福岡県の神社に夫と30キロ持ち込んでお清めしてもらった」と称する妊娠米が1合1500円で3件販売されていたそうです。

「30キロをどうやって運んだのか」「領収書で証明出来るか」と真偽に関する問い合わせが殺到すると、出品は取り下げられたのだとか。


 お守りでお米一粒が中に入っているとかならね。神社やお寺でもある事でしょう。そう言うレベルじゃないですからね、これ。そもそもそう触れ込んでいるだけで実際ははそんな事してませんからね。浅知恵は見抜かれます。

 大体、清めれば「菌」が付着するとか、冒涜にも程がありますよ。科学的根拠すらない。冷静になれば分かります。冷静であれば。


 実際に妊娠米を1合500円で数回販売した関東地方の20代女性は、取材に対して「ずっと独身で妊娠経験はない」と証言しています。

 しかし、販売ページには「私も妊娠米のおかげで子供を授かりました」と嘘を書いていました。「友人から『簡単な小遣い稼ぎになる。妊娠していなくても平気』と聞いて真似をした。あくまで験担ぎ。買えば前向きに妊活に取り組めるのでは」と答えたそうです。


 こいつ、開き直ってやがる……罪の意識が全然ないぜ……。メルカリの闇は深い。妊娠米を出品した人はみんな詐欺罪で訴えられるべき。


 妊娠米を1回購入した事がある東京都の30代女性は「不妊治療を4年間続けて身も心も耐えられなくなり、最後の賭けで何でも試してみようと考えた。1合のはずが、3分の1しか入っていなかった」と怒りをあらわにしています。

 え? 怒るところそこ? とは思いますが、確かに分量は大事ですよね……。 


 そして、商品が届いた1カ月後に「妊娠しやすくなる」とうたうサプリメントのカタログが自宅に届いたため、不審に思い送付した業者に問い合わせましたが「営業リストの作成経緯は明かせない」と回答されたと言います。


 と、言う訳で素人さんばかりでなく、そう言う業者さんも便乗して暗躍している御様子。胡散臭いビジネスはフットワークの軽さだけは賞賛に値しますねぇ……(汗)。


 吉村泰典・慶応大名誉教授(元日本産科婦人科学会理事長)は、この妊娠米についてこう話しています。


 妊娠菌に科学的、医学的な効果があるはずもないし、少額でも詐欺と言っていいほど悪質な商売だ。不妊症や不育症に悩む女性は、わらをもつかむ思いで「妊娠や出産に良いことなら何でもやりたい」と考えがちだが、そうした人の弱みにつけ込む行為で絶対に許せない。崇高な妊娠について「菌が感染する」という表現をする事自体が非常に不謹慎。妊娠米は不衛生に扱われた恐れがあり、絶対口にすべきではない。


 実にまっとうな意見です。冷静な状態だったら誰も妊娠米なんて言うトンデモに飛びつくはずがありません。妊娠米に飛びつく人はそれだけ必死なのでしょうね。

 こうして話題になって詐欺だと言う事が周知出来れば、この胡散臭い商売は一瞬で廃れる事でしょう。一刻も早くそうなって欲しいと思います。


 しかしメルカリはやはり簡単に出品出来る状態を早く改善すべき。そうしなければ今後も何かしらの詐欺出品は止まりませんよ。


 こう言う胡散臭い出品に対抗するには、情報武装で正しい知識を身につけるしかありません。嘘を嘘だと見抜けない人はネットを使用すべきじゃないと言う言葉、今こそあれを常に意識して、どんな言葉も鵜呑みにしない慎重さで対応して欲しいと思います。

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