第711話史と真衣のデュオ

史のスマホに音大の先輩となる真衣からコール。

「ねえ、史君、私もカフェ・ルミエールのステージで演奏したい」

「お金はいらない、史君とデュオしたいの」

史は、素直にOK。

それでも、考えた。

「地下のホールで、カフェ・ルミエールの楽団にするの?」

「あとは、カフェ・ルミエールのお店のほうにも、小さなステージがあるけれど」


真衣は即答。

「小さなステージがいいなあ」

「生の反応を知りたくてね」


史は、

「そうなると、洋子さんにも言っておきます」

真衣の声が明るくなった。

「洋子さんのフランボワーズが好きなの」


そんな話がまとまり、真衣と史はカフェ・ルミエールの店のステージで演奏することになった。


史がステージに立ち、お客様に真衣を紹介する。

「僕のこれから進む音大の先輩の真衣さんです」

「よろしくお願いします」

真衣がにっこりとお客様に頭を下げると

「頼むよ!史君をお願い!」

「可愛がってあげてね!」

史は、にっこり。

「真衣さんは、歌も上手ですので、今日は歌とヴァイオリンです」

「曲は、皆様がよく知っている曲が中心です」


客席から大きな拍手を受けて、始まった曲は

「プリーズ・ミスター・ポストマン」

史のピアノに合わせて、真衣がボーカル。


最初から、客席から手拍子が始まる。

中には、懐かしいのか歌っている人、昔を思い出すのだろうか、涙ぐむ人もいる。


洋子は、笑った。

「すっごい!楽しい!パッと明るくなった」

奈津美

「史君のポップも大好き、キレキレでいいなあ」

結衣

「真衣さんも歌が上手いなあ、ノリノリ」

「私も歌を習おうかなあ、史君のピアノで歌いたい」


二曲目はシャンソンの名曲「ムーランルージュの歌」。

史のゆったり目のピアノに、真衣のヴァイオリンが甘く切なく乗っていく。


「はぁ・・・ほっとする」

「いい雰囲気・・・パリの街角にいるみたい」

「美しいねえ、シックだなあ」

「これで無料なんて・・・幸せだ」


三曲目は、またポップ。

バートバカラックの「恋よさようなら」。

史のピアノで真衣のボーカル、ところどころで史がハモる。


洋子はニコニコ。

「懐かしい!可愛い!」

奈津美

「ずっと聞いていたい」

結衣

「私も歌いたいなあ」

「史君もいい声だなあ」


真衣と史のデュオは、大きな拍手の中、終わった。

史が客席に声をかける。

「ありがとうございました、次回は、また違う趣向で」

真衣

「楽しかったです、ありがとうございました」


客席の再びの拍手の中、マスターが入って来た。

マスターが史に声をかけた。

「え?終わったの?」

「はい、終わりました」

マスター

「大学に受かったら、夜の部でも頼むよ」

真衣はにっこり。

「はーい!ステーキサンドイッチだけで!」


史と洋子は、大笑いになっている。






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