第703話愛華と史(2)

メッセージを送ったものの、なかなか「既読」にはならない。

すでに10分経過。

愛華は、焦り、不安に包まれる。

「忙しいのかなあ、史君」

「由紀ちゃんと、口喧嘩しとるんやろか」

「由紀ちゃんも言い過ぎや、史君があれでは可哀そうや」

「華蓮ちゃんも華蓮ちゃんや、私の目の前で、史君をデートに誘うなんて」

「それに由紀ちゃんも加奈子ちゃんも便乗?」


「・・・私なんて、一言も言えんし、誘われないし」


なかなかメッセージは「既読」にならない。

「もしかして・・・ブロック?」

「嫌われた?」

「望みなし?」

「うーー・・・何しとるんやろ・・・」


スマホの画面を見つめていた愛華の顔がパッと変わった。

「既読」に変わった。

愛華は、身体が震えだした。

史の返事が怖い。

でも、「ブロック」されていなくて、安心もする。

でも、返事が怖い。


史から返事があった。

「今晩泊まるけれど、明日には帰るよ」

「あまり時間がないけれど、どうして二人きり?」


愛華は、ここで引いてはならないと思った。

ここで引いたら、いつ、逢えるかわからない。

確実に逢えるとなると、来年の新年。

でも、そんなの待ちきれない。


愛華はメッセージを送った。

「明日、大旦那のお屋敷に行きます」

「たくさん、お部屋があるから、どこかのお部屋で」

「史君にだけ、どうしても渡したいものがあるの」

「手でお渡ししたい」


史の返事は、素直。

「わかりました、面倒な姉貴と加奈子ちゃんは、排除しておきます」

「おやすみなさい」


愛華は、ホッとした。

そして身体の力が抜けた。


「はぁ・・・渡したいもの・・・出まかせで言ってしもうた」

「何を渡したら・・・実は考えていない」

「告白するって言えんし」

「お手紙でも書こうかな」

「・・・はじめて書く、ラブレター」

「うん、それがいい」

「手書きだよね・・・当たり前」


愛華は、ようやくベッドからおりて、自分の机に向かう。


「可愛い紙と封筒にする」

「史君の前だとカチンコチンになるから、思いっきり自分の気持ちを書く」

「きれいに書く」


愛華は、「はじめてのラブレター」を書き始めた。

何度も、書きなおしたので、ベッドに寝たのは翌日午前1時。


しかし、寝ても、何度も目が覚める。

ドキドキして仕方ない夜を過ごすことになった。

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