第691話京都での新年会兼披露宴(2)
加奈子は、愛華の状態に驚いている。
何しろ、目の下にはクマができ、健康そのものだったスタイルも、どこか元気がない。
「愛華ちゃん、どないしたん?」
それでも聞くけれど、理由はわかる。
史に「告白する」と決めた以上、それだけに心が固まってしまい、夜もあまり眠れず、食事が進まないのだと思う。
「愛華ちゃん、そんなんじゃ、告白以前の問題」
「披露宴の演奏どころか、出席だって危うい」
それを言って心配するけれど、愛華は涙顔になるだけ。
「加奈子ちゃんは、都内に住むんやろ?」
「うちは、音大も不合格やし」
「結局、京都の大学や、家から離れられん」
「あれほど、練習したのに」
「史君、遠いなあ・・・どんどん、離れていく」
「顔見とうて・・・仕方ないんやけど」
「この変な顔、見せられん」
「音大も落ちて、史君にも失恋や」
「そんなの恥ずかしくて、言えんしなあ・・・」
「やさしい史君やけど・・・時々、つれないしなあ」
「あーーー生きているのも嫌や」
・・・・・
とにかく、涙顔、落ち込むばかり。
加奈子は、ため息。
「この私にどうしろって言うの?」
「由紀ちゃんは、結局、面倒くさいって、知らないなんて言うし」
「史君が、はっきり言うのが一番」
「でも、史君は愛華ちゃんの気持ちなんて、全く知らんし」
「そもそも里奈ちゃんって、しっかりとして可愛い子がいるんやから」
「・・・・愛華ちゃんに言うと、また落ち込むしなあ」
「史君が、はっきり、きっぱり言ったら、愛華ちゃん・・・落ち込むだろうねえ」
加奈子も、こうなると、何をどうしていいのか、わからない。
さて、新年会当日の朝になってしまった。
鏡で自分の顔を見て、愛華はガッカリ。
「はぁ・・・私、本番に弱いタイプかなあ」
「都内での音大受験でも実技でミスや」
「はぁ・・・この顔で告白?」
「その前にフルートでミス?」
愛華は、ますますのマイナス思考に陥っている。
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