第670話史の体調不良(3)
史の体調不良が長引き、三日目となった。
当然、学校は休み、クラス内では心配や不安の声が後を絶たない。
「いつものことだけど、すぐに体調崩すよね」
「うん、特に冬」
「心配なのは、来週のマラソン大会」
「え?出ないでしょ?史君」
「無理だって、出てきたとしても病み上がりで」
「うーん・・・あの体育講師、メチャ強引だよ」
「そう、少々体調悪くても、棄権を認めない」
「棄権した子が、成績下げられたって泣いてた」
「若いんだから、少々無理しても、身体を鍛えろが持論」
「史君は、不思議に速いよね」
「そう、だいたい二位か三位」
「時々、陸上部に誘われるけれど、いつも断る」
「それをあの体育講師が怒ってさ・・・」
「何で怒るの?史君は新聞部でしょ?」
「そんな青っ白い顔して!とか、身体を鍛えろ!男だろ!って感じ」
「なんか、パワハラっていうか、モラハラって感じ」
「三輪担任にも言っておく?」
「そうだねえ、万が一もあるから」
そんな話となって、クラスの生徒たちが三輪担任に相談をかけた。
三輪担任は難しい顔。
「そうだったんだ、知らなかった」
「史君は、真面目だから、来週出てくるとマラソン大会に出ちゃうよね」
「そしてまた、風邪がぶり返すと」
「勉強はもちろん、みんなも地域の人も期待しているコンサートだって、どうなるかわからない」
「私からも、体育講師に伝えておくよ」
さて、その三輪担任が体育講師に、「その旨」を伝えるけれど、体育講師は首を傾げる。
「はて、本来は生徒本人が、医師の診断書なりを持って、棄権なりを告げに来るべきなのでは?」
「今の段階で、史君の体調に配慮なんてする必要はありません」
「史君が走れるといえば、走ればいい」
「走れなかったら、棄権、その旨の評価をするだけです」
「体調を整えられないような人間でしょう?成績が落ちたとして、自己責任でしかない」
「もちろん、成績低下を心配して、病み上がりで走って、体調を再び壊しても、それは自己責任なんです」
「勉強はともかく、音楽なんてのは、私の指導の範囲にはありません」
まさに「取り付くシマもない」反応。
三輪担任は、肩を落として、クラスに戻ることになった。
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