第671話史の体調不良(4)
史は、冬風邪のひどい状態から、週末の土曜日になってようやく回復の兆し。
食事も、いつもの半分くらいは、食べられるようになった。
由紀が、やはり心配なのか、あれこれと世話を焼く。
「無理しないで、また食事が終わったら寝てなさい」
「甘酒作ったから飲む?」
「みかんとリンゴとどっちがいい?」
わりと頻繁に組の部屋に顔を出すので、史はうれしいような、面倒なような。
史
「姉貴、そんなに何度もいいよ、今日明日で元通りになる、いや、そうする」
「勉強もたまっているし、ピアノの練習もしないと、本番が近いし」
「さらっておきたいの、寝込んだ時間を取り戻さないと」
やはり、律儀で几帳面な史、少しでも回復すると動き出す。
由紀は、「しかたないなあ、無理しないでね」と一応は定番のことを言うけれど、
「月曜日からの学校も無理しないでね」
「病み上がりで倒れたら、元も子もない」
史も、由紀の珍しい気遣いがうれしいようだけれど、
「来週の水曜は、マラソン大会、それまでにはベストに」
と、ポツリ。
そのポツリで、由紀のやさしかった顔が真赤に変化。
怒っているのがすぐわかる。
「史!このアホ!」
「無理に決まっているじゃない!」
「また、それで倒れたらどうするの!」
「コンサート間に合わないよ!」
「みんなが期待しているの!それを裏切るの?」
まさに聞いている史が「ヘキエキ」するぐらいの大声になっている。
しかし、史は引かない。
「だめ、あの体育講師、棄権とかすると、すっごいイジメするの」
「皮肉はタラタラ、成績を下げるなんて、当たり前」
「そういう人を何人も見ているから」
史は、真っ赤な顔をしている由紀を正面から見る。
「僕は、そんな体育講師に負けたくないの」
「思いっきり走る」
「一番を目指す」
由紀は、また珍しく、史に押された。
「・・・わかった・・・そこまで言うなら」
「私も応援する」
「負けないでね」
これもまた珍しいけれど、ホロッとしてしまった。
史は、由紀に少し笑う。
「姉貴って、泣き虫?」
由紀は、また顔が真赤。
「うるさい!さっさと直して!」
由紀は、泣きながら自分の部屋に戻って行った。
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