第655話加奈子の上京(9)

大旦那まで加わって、「定食屋」でランチを楽しむことになった。

そして、その定食屋は神田にあり、マスターの弟子の伊藤がメインで腕を振るっている。


その定食屋に入り、マスターが弟子の伊藤を呼びだす。

「大人数で、ごめんな」

伊藤は、恐縮している。

「いや・・・あの御方まで連れて来るとは、足が震えます」

マスターは伊藤の肩をポンと叩く。

「普段通りにやってくれ、その後話がある」


そんなやり取りはともかく、しっかりと予約してあるので、スムーズに着席。

大旦那

「白木のカウンターか、広くていいなあ、マスターの教育かな」

清は店のあちこちを見て

「忙しい店なのに、掃除が行き届いていて、店員もキビキビと動いています」

華蓮はメニューの豊富さに目を見開いた。

「あらーー・・・和食系から中華系、カレー、イタリアン、フランス風ポトフ、パスタ、ピザ・・・すっごいねえ・・・悩む、これ・・・でも麻婆豆腐定食にする」

道彦は感激している。

「この何でもありというのが、日本のパワーだね。こだわりなく何でも受け入れる・・・悩むけど・・・ハンバーグ定食」

亜美はメニューを選び始めた。

「うーん・・・旬だからカキフライかなあ・・・でも・・・キスの天ぷらも食べたい、オムライスも美味しそう・・・悩むなあ・・・でもカキフライ定食にする」

加奈子は、迷わないことにした。

「生姜焼き定食一本にする、もう、他のメニュー見ない」

由紀も悩んだけれど、決めてしまった。

「ヒレカツ定食にする、途中で史のお皿から何か取り上げる、最近態度大きいから罰を与える」

史は、少し迷った。

「丼物にするかな、カレーも捨てがたい・・・うーん・・・中華の固焼きそばにする、たまにはいいや」


尚、大旦那はホッケの焼き魚定食、マスターは天丼、清はビーフカツカレーを選んでいる。


大旦那は途中からご機嫌な顔。


「いいなあ、いるだけで楽しい」

「メニューを見るだけで楽しい」

「あの調理している人たちの手際の良さ」

「注文を受ける声の生き生きとしていること」

「清潔感と活力に満ちた店内」

「これも、残さなければいけない、大切な文化だなあ」

「それに食べている人たちの、幸せそうな顔」


マスターが大旦那に声をかける。

「次は奥様と?」


大旦那はにっこり。

「ああ、もちろんさ、この次は、家内と美智子さんも連れて来る」


史が、大旦那に一言。

「ルクレツィアさんも誘ったら面白いかもです」


由紀も珍しく、史の意見に賛成らしい。

「面白いですよ、ルクレツィアさん、絶対誘ってください」


マスターは、そんな史と由紀が面白い。

「結局、同じことを考えるんだ」

「それで、喧嘩ばかり」

「でも、面白いかな、ルクレツィアさんの反応も」


マスターは、大旦那のうれしそうな顔を見つめている。




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