第651話加奈子の上京(5)

まさに学生街の定食屋に入り、三人はそれぞれ、注文する。

加奈子は「トンカツ定食」。

由紀は「肉野菜玉子炒め定食」。

史は「大盛ナポリタン」

三人それぞれ別のものを注文したけれど、取り皿をもらって、分けあっている。

そして、どんどん食べながら、どんどん話が進む。


加奈子

「目の前で揚げてもらうトンカツもいいね、すごくジューシーなお肉」

由紀

「この醤油味っぽい肉野菜玉子炒めって、マスターも清さんも、絶対つくらない」

「ナポリタンは日本がほぼ発祥地みたい、ムシャムシャ頬張って食べるほうが美味しい」

加奈子

「全部味が違うんやけど、何故、ご飯と一緒になると、ピタリとおさまるんやろか」

由紀

「トンカツもいいなあ、ナポリタンもいい」

「この豆腐のお味噌汁、美味しい、出汁がしっかり取れているし」

加奈子

「とにかく料理する人が手早いの、キレキレって感じ」

由紀

「学生街の定食屋で、モタモタしていられないからかな」

「清さんとか、マスターとはまた別の系統の料理かなあ」

加奈子

「気取りが無くていい、元気ハツラツって味」

由紀

「この漬物も美味しい、味が強くて、関西とは違うなあ」

由紀

「ご飯が進むでしょ?」

「大旦那とか連れてきたら喜ぶかなあ」

加奈子

「おそらくまずは目を丸くする・・・そして・・・」

由紀

「ものすごい勢いで食べまくる」

「でもさ、あの雰囲気・・・店が恐縮する」

加奈子

「でもねえ、この定食屋の味も好きだよ」

由紀

「カフェ・ルミエールの文化講座の料理講座に入れると面白いかな」


史は、少し考えた。

「そうなると華蓮ちゃんに話をするかなあ、どんな反応するかも楽しみ」

「どうしてもマスターと清さんの料理講座って、上品になるからさ」

「この定食屋さんみたいな普通の家庭料理も、大事と思うんだ」


加奈子

「この後に寄らない?」

由紀

「文化講座の事務局?」

加奈子

「うん、道彦さんにも、フィアンセの亜美さんにも逢いたい」

史はさっそくスマホを操作。

「連絡しておくよ」とメールを送ってしまう。


すぐに返事も来たようだ。

史はそのまま伝える。

「早く来いって」

加奈子はにっこり。

「さすが史君、華蓮ちゃんのお気に入り」

由紀

「いつでもそう、華蓮ちゃんとベタベタする」

史は、フフンと笑う。

「僕も華蓮ちゃんが好き、本当のお姉さんって感じ」


由紀は、ムッとした。

「その本当のって、何?」

「どうして実の姉の前で、そういう憎まれ口をたたくの?」


しかし、加奈子も史も、由紀には反応しない。

さっと支払いを済ませて、定食屋を出てしまった。


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