第646話愛華の悩み

愛華は本当に苦しんでいる。

それは、都内の史と同じ音楽大学への進学が困難になったため。


「うーん・・・とても、練習についていけないしなあ」

「先生にも言われてしもうた」

「推薦では、まず、無理やって・・・」

「うちは、才能ないのかなあ・・・」

「練習しても練習しても、同じところで間違う」

「音楽はお習い事やった」

「真剣にやって来なかったしなあ」

と、まずは自らの「実力不足」は、把握している。


しかし、その「実力不足」を把握しながらも、史への想いは募る。


「由紀ちゃんも加奈子ちゃんも・・・里奈ちゃんって子がいるから無理やって言うしなあ・・・」

「なんとなく話をする華蓮ちゃんにも、キッパリ言われてしもうた」

「これ以上、史君を苦しませないでとか」

「あーーーどないしたら・・・」

「うち、史君が好きなんや」

「可愛いし、いざっという時に頼れるしなあ」

「都内に出られればいいけれど・・・難しいなあ」

「切ないなあ・・・遠距離恋愛?」

「そこまでいってない・・・遠距離片思いや・・・」

「はぁ・・・涙出て来る」

「相談する人誰もが、無理って何やろ・・・」


愛華は、受験を間際にして眠れない日々が続く。



愛華の父、雅仁もそんな愛華が心配な様子。

妻の良子に相談する。

「なあ、愛華が変やな」

良子は難しい顔。

「恋の悩みやな、おそらく史君、加奈子ちゃんから聞いたけれど」

雅仁は、うなった。

「うすうす感じてたけれどなあ・・・」

良子

「史君には、彼女がおるんやて、それも大旦那も奥様も認めた彼女」

「何でもな、史君が怪我した時に、本当に献身的に尽くしてくれた女の子」

「歩けるか歩けないかの時に、毎日送り迎えしてくれたとか」

雅仁

「いやーーー素晴らしいなあ、なかなか出来んことや」

「史君も感激したんやろな」

良子

「そうやね、史君は繊細なところがあるしな、しっかり支えてくれる人がいいかな・・・愛華は・・・甘えちゃうタイプや・・・支えるタイプとは違う」

雅仁

「良縁やと思うけれどなあ・・・史君とは」

・・・・・両親も、「望み薄」と判断しているようだ。


しかし、愛華は悩み続ける。

「音大受験あきらめて、普通の都内の大学にしようかなあ・・・」

「加奈子ちゃんは、都内に行くっていうのに」

「うちだけ、さっぱり決まっていない」

「焦るばかりや・・・」


なかなか、愛華の前途には、困難が立ちはだかっている。



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