第620話由紀と史のデート?(9)

ルクレツィアが案内したフィレンツェ料理店は、確かに銀座から至近、東京駅の近くだった。


そしてルクレツィアがオーダーしたのは、しっかりとしたコースメニュー。

「トリッパのフィオレンティーナ風」

「イタリア産 生ハム、サラミの盛り合わせ」

「野菜のスープ」

「8種類の魚介の旨みが詰まった漁師風スパゲッティ」

「フィレンツェ風 Tボーンステーキ」

などが次々に運ばれて来る。


ルクレツィアが適度に説明をする。

「トリッパのフィオレンティーナ風は、フィレンツェの代表的な家庭料理」

「いわばイタリア風モツ煮込みかな、トリッパは牛の第2胃袋、韓国料理で言えばハチノス」

「これをしっかりと臭みを抜き柔らかくしたあとで、セロリなどの香草と一緒にトマトソースで煮込み、仕上げに粉チーズをかけてできあがり」


由紀は、その内臓料理が好きなようだ。

「柔らかくて食べやすい、味付けも好き。カロリーは少なく、コラーゲンもたっぷり、お肌にもいいかな」

と、食べるのに夢中。


史はイタリア産の生ハム、サラミの盛り合わせが好き。

「味がしっかりしていて、コクがあるなあ」


ルクレツィアは、次に「8種類の魚介の旨みが詰まった漁師風スパゲッティ」の説明。

「アサリ、ムール貝、天使海老、むき海老かな、全部で8種類の魚介」

「白ワインを使ったソースにしました、その方が、魚介の味がわかります」

「ここ銀座は築地市場、いや今は豊洲かな、新鮮な魚介が手に入るから」


ルクレツィアの説明を聞くまでもない。

由紀は、美味しくて仕方がない。

ここでも食べるのに夢中。


史は冷静にコメント

「さすがですね、確かにトマトソース仕立てより、こっちのほうが、美味しい」


ルクレツィアは、そんな史のコメントににっこり。

次の「フィレンツェ風 Tボーンステーキ」の説明をはじめた。

「世界に冠すると言っても過言ではない、肉料理のひとつ」

「岩塩と胡椒のみで炭火で豪快に焼き上げるフィレンツェ名物料理」


ここでも食べるのに精いっぱいの由紀に代わって、史がお礼。

「本当にありがとうございました」

「これだけたくさん食べて、気持ちが晴れました」

「ルクレツィアさんたちに、偶然であって、様々なご厚情をいただきまして」

「感謝しております、本当に美味しくて、うれしく思います」


ルクレツィアは、そんな真面目な史に一言。

「いいの、史君、かしこまらなくても」

「私たちは、史君と由紀ちゃんが好き」

「いろいろ困ったことがあって、手助けができて」

「こうしてフィレンツェの料理を楽しんでくれる」

「こういうことも、うれしいの」

「フィレンツェ人、そしてイタリア人は、人に喜んでもらうことが大好きなの」

「日本で言えば、おもてなしかなあ」


ルクレツィアの言葉に、同行していたイタリア人たちが、一様に頷いている。



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