第592話カフェ・ルミエール文化講座開講(2)

正午を少し過ぎ、大旦那夫妻と史が、お屋敷お抱えの運転手の車で、カフェ・ルミエールのビル前に到着すると、すでに相当数のおそらく受講生がビルの中に入っていく。


大旦那は、それを見て、感極まった様子。

「ああ、素晴らしいことだ、これだけの受講生の想いに、しっかりと応えなければならない」

奥様も、そんな大旦那の表情がうれしいようだ。

「久々に、そういうお顔を拝見いたしました」


事務局の華蓮と道彦も、大旦那夫妻を迎えにでてきた。

華蓮

「お待ちしておりました、さっそく控え室に」

道彦

「お鞄をお持ちいたします」

両名とも、少々緊張している様子。


そんな二人に大旦那も頷き、まずは、しっかりと握手。


「華蓮、道彦は本当にここまで、よく準備してくれた」

「お前たちの尽力がなければ、できなかったことだ」


華蓮と道彦が、大旦那の言葉に深く頭を下げると、大旦那もようやく歩き出す。


史は、大旦那に、

「少し父さんと打ち合わせと、楽団の所に」

と声をかけ、大旦那夫妻とは別行動で歩きだす。


そんな史の向かう先には、きれいなスーツを着た里奈が立っている。


奥様が、うれしそうな顔。

「あの子ね、可愛いわねえ・・・史にはピッタリのお嬢さん」

大旦那も目を細める。

「見ただけで、誠意に満ちた娘さんとわかる、私たちをすぐにわかって、丁寧にお辞儀をしている」

華蓮は、少し笑う。

「あ!史君、小走りになった」

道彦も笑った。

「さっそく手を握っているねえ、いい雰囲気だ」


大旦那が道彦に笑いかける。

「今日の開講記念スピーチの次は、道彦と亜美さんの披露宴だなあ」

それを聞いた奥様

「そうねえ、長くなりそうよ、道彦さん、今からクギをさしておかないと」

華蓮も笑い出した。

「マスターの料理が冷めてしまうって?」


大旦那も、それを言われると頭が痛い様子。

「スピーチの原稿は、史に頼むとしよう」

「史なら、私よりも晃よりも、まとまりのあるスピーチがかける」


さて、いつまでも、控室に入らず、ここで話をしているわけにはいかない。

亜美から、道彦のスマホにコールが入った。


「文部科学省からの来賓、都からの来賓、自治会長様、各講座の先生方を控室にお呼びしますので、おはやめに」


大旦那は、ここでも満足気。

「うん、気がきくなあ、それは私がお迎えすべきだ」

「やはり亜美さんも、素晴らしい」


大旦那の顔に、少しずつ赤みがさしている。



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