第593話カフェ・ルミエール文化講座開講(3)

大旦那が控室に入ると、亜美に誘われて、自治会長、文部科学省の官僚、各講座の責任者や講師などが入ってきた。

そして大旦那は、全ての人に深く頭を下げ、握手をして、

「本当にありがたいことで、心より感謝申し上げます」

と、声をかける。


大旦那から、そんな言葉をかけられた人たちは、かなり恐縮した様子。


「まさか、あの旧摂関家の・・・」

「官邸どころか宮中まで出入りされているお方に」

「仕草や言葉ひとつひとつに、深い心がこもっている」

・・・・・・


控室では、そんな状態が続いたけれど、華蓮が控室に入ってきた。

華蓮

「そろそろお時間でございます」

「全員がステージの上に」


大旦那は、その華蓮に会釈。

そして集まっている全員に再び頭を下げる。

「それでは、皆様、ご一緒に」


さて、大旦那たちがステージにあがると、まだステージの幕はおりている。

司会者の席に、華蓮と立っていた道彦が、大旦那の前にきた。

「大旦那様、最初は大旦那様の、開講の御言葉、続いて来賓を代表して自治会長様」

「講師を代表して、指揮者の榊原様となっております」

道彦が、簡単に式次第を説明すると、大旦那は深く頷く。

「うん、それでいい、下手に官僚とか政治家とか演説させるより、よほどいい」


道彦も大旦那の納得に、安心した様子。

そして華蓮と一緒に司会者の席に戻った。

華蓮が、ステージの幕をあげるボタンを押すと、スルスルと幕はあがっていく。


大旦那

「ほお・・・満員だ・・・」

「ありがたいなあ・・・」

「日本人だけでなく、あれはイタリア大使?」

大旦那が相好を崩していると、華蓮の司会がはじまった。


華蓮

「皆さま、ようこそ、カフェ・ルミエール文化講座の開講式にご出席いただきました」

「私は、本日の司会をつとめさせていただきます、この文化講座事務局の京極華蓮と申します」

「そして、この私の隣に立つのは、同じく事務局の久我道彦でございます」

「何分、不慣れなゆえ、拙い司会ではありますが、よろしくお願いいたします」

華蓮と道彦が司会者席から一歩出て、客席に深くお辞儀をすると、大きな拍手となる。


大旦那は、相好を崩した。

「華蓮も、きれいな声だなあ」

「あの小さな可愛い女の子が立派になった」

「道彦も、いいな、何より動きがキビキビとしている」


ただ、大旦那の相好を崩した状態も、すぐに終わった。


華蓮の司会進行が始まった。

「それでは、本講座の主宰者を代表して、近衛兼実がご挨拶をさせていただきます」

「近衛様、どうぞステージの中央まで、お進みください」


大旦那は、顔を引き締めて、ステージの中央に向かった。









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