第556話亜美とその両親、久我道彦

亜美は、カフェ・ルミエールの文化講座事務局に転職することになった。

それは、久我道彦と相思相愛の仲に進展、事務局の華蓮と、久我道彦からも「誘い」があった。

亜美としても、少しでも久我道彦の近くにいたかったから、勤めていた企業も一流の商社であったけれど、全く未練はなかった。

「確かに高い給与だけど、年齢を重ねるごとに居づらくなる」

「アクが強い人が多いし、結婚も出世の道具として考える人が多い」

「それだったら道彦君と一緒のほうが、幸せ」


また亜美は転職に際し、一応両親にも連絡。

「官邸にも相当影響力のある京都に由来のある元公家の財団に所属した文化講座の事務局に」

と言っただけで、両親とも、目を丸くした。


父親は

「亜美で大丈夫かい?迷惑をお掛けしないか?」

となるし、

母親は

「亜美も、かなり勉強をしないと・・・ついていけないかも」

と不安顔。


亜美がそのことを、久我道彦に伝えると、久我道彦は「それなら」ということになり、一緒に亜美の両親に逢うことになった。


亜美は

「何か、申し訳ありません」

と、道彦に頭を下げるけれど、道彦はさわやかで優しい笑顔。

「亜美さんのためなら」

「それにご両親とも、一度お逢いしたかったので」


そんなことを言われるので、亜美はうれしくて仕方がない。

そして、こうも思った。

「万が一、両親が無礼なことを言ったならば、超不安」

「重々、クギをさしておかないと」


さて、亜美の不安は、全く無用のものとなった。

久我道彦が、亜美の両親に挨拶をした時点で、


まず父親

「この若者は、思慮が深い、礼儀正しい、とにかくしっかりしている」

となるし、


母親は、超ニコニコ。

「あらー・・・きれいな人だねえ・・・さすが元華族・・・」

「亜美にはもったいないくらい・・・」

「私のほうがずっと見ていたい」


久我道彦が、文化講座の説明をしだすと、


父親は、かなり乗り気。

「私も何か受けるかなあ、実は学生時代に西洋史が好きでね」


母親は、すでに申し込みを固めてしまった。

「あのマスターの料理教室と、和食教室にします」

「それと着付けももう一度、習おうかしら・・・」


亜美は、そんな両親に目を丸くするけれど、道彦は相変わらず爽やかなまま。


道彦の説明が終わった時点で、父親は、道彦に深く頭を下げた。

「亜美をよろしくお願いいたします」


母は、少々涙顔。

「ふつつかではありますが」

それ以上の言葉が出ない。


亜美も、ウルウル状態になってしまった。








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