第500話史の新しい難題 真由(1)

カフェ・ルミエールでの「新店舗、懐石料理」の話も一段落、由紀と史は帰路につく。

とにかく由紀はご機嫌。

「えへへ、清さんとデートだ、しかも美味しい店ばかり」

「史なんか、忙しいっていうから、連れて行ってあげない、お留守番していなさい」


史は、そんな由紀に冷静な顔。

「姉貴、食べるだけじゃだめなの、しっかり観察してこないと」

「ほんと、清さんの、足を引っ張るだけって感じになりそう」


由紀は、それを言われても引かない。

「うるさい!私が清さんに選ばれたの!ゴチャゴチャ言うんじゃない」


史は、由紀に呆れた。

「ゴチャゴチャ言うのは姉貴、僕がいろいろあって、手伝いきれないから、姉貴は暇って清さんに言ったのに」

そう思うけれど、

「またそんなことを言って、頭ポカリされると、痛いから言わない」

と口には出さない。

しかし、

「ほんと、暴力姉だ、なんでも体力勝負だ、これは日頃の家事をサボっているからに違いがない」と気に入らない。


その由紀は、どういうわけか、突然話題を変えた。

「ねえ、史!あなた、合唱部の新二年生になった真由って知ってる?」


史は、まったくわからない様子。

「は?誰?その人、名前も知らない」


由紀は、またムッとした。

「史、コンクールで私の隣の隣で歌っていたソプラノだよ」

「なんで覚えていないの?」


史も、そんな由紀にムッとした。

「合唱部の名前なんて覚えていないって!」

「僕は忙しいの、音楽部も新聞部も、カフェ・ルミエールの楽団もたくさんあって」

「で、その人が何だって言うの?」


由紀は、その史に呆れ顔。

「あのさ、真由って子はね、すごく可愛いっていうか超美少女だよ」

「何も見ていないの?合唱を指揮していながら」

「いい?指揮者ってのは、演奏者の顔を見て指揮するものだよ」


史は、そんなことを言われても、首を傾げるばかり。

ついつい、面倒そうな声。

「だから、何だっていうの?僕、その人知らないって、話もしたことないって」


由紀は、難しい顔になった。

そして史に

「あのさ、昨日、真由からメールが来たの」

「とにかく、史と話をする時間を作って欲しいって」


史は、ますます、「わけがわからない」と、黙り込んだ。

それでも、「なんで?」と、由紀に聞き返す。


由紀の顔は、また難しい。

「真由は、史が、里奈ちゃんと付き合っていることも、よく知っている」

「簡単に言うと、それを知っていながら、真由は史が好きになったのかなあ」

「姉の私を通じて、何とかして欲しいって言って来たの」

「困るのは、真由って子はね、すごく思い込みが激しい子なの」

「過激なことを、するかもしれない」


史は、

「はぁ・・・面倒・・・」

顔を曇らせている。


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