第463話神田明神鳥居横の甘味屋にて

史たちの一行は、神田明神の参拝を終えて、神田明神鳥居横の甘味屋に入った。


愛華

「うわ、老舗って感じや」

加奈子

「小ぶりな店やけど、歴史を感じる」

確かに壁には、様々な文化人とかタレントの色紙が飾ってある。

中には、かなり昔の人の色紙もある。


さて、結局、四人が注文したのは、全部同じ、甘酒だった。


史は

「うん、ほっこりとして美味しい」

愛華も

「そうやね、飲みやすいなあ、この味が好き」

加奈子は、少し顔が暗い。

「確かに甘酒は美味しいんやけど、もう少ししたら京都に帰らないと、それが寂しい」


由紀も、それを感じていたようだ。

「とにかく最初からいろいろあったけれど、でもいなくなるのも寂しい」

と、顔が少し曇った。


すると愛華

「でも、みんなで協力して、いい方向に向かったんや、うちは楽しかった」

と言うけれど、少し涙目になっている。

加奈子は、それでますます、寂しそうな顔。

「こんなに自由な気持ちで歩けたのは、久しぶり、少し面倒なこともあったけれど、そんなの気にしていない」


少し黙っていた史が口を開いた。

「また、京都にも行きたいし、奈良も歩きたいから、その時に」

柔らかく笑っている。


愛華の顔がパッと輝いた。

「よし、わかった、案内はまかせて」

加奈子も、うれしそうな顔。

「さすが史君やなあ、気がきく、これで明日への希望がつながった」

由紀もうれしそうな顔。

「じゃあ、その時はよろしくね」


すると史が、また一言。

「え?姉貴も行くの?」

その言葉には、いかにも「面倒」というニュアンスがある。


由紀は、少しムッとした。

「何?史!どうして姉をナイガシロにするの?何様のツモリ?」

ついついポカリとしそうになるけれど、さすがに老舗の店内、人の目もあるので懸命にこらえている。


すると愛華がニッコリ。

「由紀ちゃんもお待ちしています」

加奈子も、そう思っているらしい。

「私の家に泊まって欲しいなあ、一晩中でもお話したい」

愛華も、その話に乗った。

「じゃあ、私も混ぜて、つもる四方山話を」

愛華は、ニコニコしている。


途中から女子会の話に変化したので、史はホッとした様子。

ゆっくりと甘酒を飲んでいる。

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