第435話銀座、日本橋散歩(1)

翌朝になった。

史と由紀は、朝食を終え、午前9時に大旦那の家に到着。

今日の予定は、愛華、加奈子と銀座界隈を散歩する予定。

夕方には、大旦那の家に戻り、今夜は大旦那の家の料理人の和食を食べることになっている。


史と由紀が、玄関に入ると、愛華と加奈子が、本当にウキウキとした顔で出迎えた。

愛華は

「幸せや、史君と銀座デートなんて、途中から二人きりにな、約束やで」

指切りげんまんの気持なのか、小指を差し出してくる。

史は、少し慌てた。

「あ・・・迷子にならなければ、加奈子ちゃんが心配」

と言いながらも、結局ためらわなかった。

史としては、「遠縁の女の子だから」で、指切りげんまんをする。


それを見た由紀は

「・・・止められなかった、でも、遠縁だし、いいかなあ」

で、心を落ち着ける。

何しろ、また史を責めて、沈んだ顔を見たくない。


加奈子も、あわてたけれど、複雑。

「今さら、しょうがないなあ、でも、私も史君と歩きたいなあ」


さて、そんな状態で、四人がリビングに入っていくと、大旦那が声をかけてきた。

大旦那

「ああ、史君、竜の親が、また無礼なことをしたようだな」

少し難しい顔をしている。


史は

「あ、はい、家の駐車場に入れて待っていたみたいです」

「父も、事前連絡も何もなく家に来て、勝手に駐車場に停めたって言っていました」


奥様も、難しい顔。

「順序を踏んで、謝るべきなのにね、ますます難しくなる」


しかし、史は、その話には付き合いたくない。

「そろそろ、銀座に行きます」

と、大旦那に声をかけると


大旦那

「ああ、そうだな、楽しんできなさい」

と、気分を変えてニッコリ。


由紀が大旦那に笑いかけた。

「お土産は、羊羹ですか?それとも?」


大旦那は

「うーん・・・羊羹もいいなあ、でも、うーん・・・」

なかなか、決まらない。


これには奥様も呆れ顔。

「ねえ、全く、お土産なんていいから、どんどん出かけなさい」

「私がキツく叱っておきます」


すると史が笑う。

「じゃあ、ちょっと日本橋に足をのばします」


大旦那も、それでわかったらしい。

その顔がパッと輝いている。

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