第425話大旦那のお屋敷にて(1)

一行は、大旦那のお屋敷に到着した。

マスターが玄関に車を横付けすると、大旦那自らがお出迎え。

その目で、加奈子と愛華を確認するけれど、何より史が心配な様子。

そして

「史君、大丈夫か!とんでもないなあ」

と、まず史に声をかける。


史は

「あ、大丈夫です、かすっただけで」

と、答えるけれど、大旦那はますます心配な様子。

大旦那

「かすっただけでも、大事だよ、あんな竜なんてガキに」

と、またしても怒り出す。


そんな大旦那を予想したのか、奥様も出てきた。

「まあまあ、とりあえず中に」

ということになり、ようやくお屋敷の中に入る。


加奈子と愛華は、その時点で、やっと

「今晩と明日の晩、お世話になります」

と、頭を下げることができた。


奥様も、そこで笑った。

「大旦那も私も、愛華ちゃんと加奈子ちゃんが、泊まってくれるというのが、本当にうれしくて、指折り数えて待っていたの」

「それがね、音大での事件の電話をもらった時から、大旦那の関心は史君の様子と、竜への怒りばかり」


加奈子も、大旦那のあわてぶりに、少し笑う。

「史君のことが、心配で仕方がないんですね」

愛華は神妙な顔。

「私も、気になって仕方がないんです、私も大旦那の気持がよくわかります」


奥様は

「やはり、史君は、人の気持を引きつけるのかな、いい場合もあるし、そうでない場合もある、それが心配なの」

と、奥様も、少々の心配はある様子。


さて、そんな話をしながら、全員が応接間に入った。

全員が座席につくと、大旦那

「愛華ちゃん、加奈子ちゃん、本当に来てくれてうれしい」

「それから、とんでもない事件に巻き込まれてしまって、それからすぐに連絡をしてくれて、よかった」

「さっそく手を打った、音大に対する心配はないよ」

と、愛華と加奈子にお礼を言う。

愛華と加奈子もホッとした様子。


そして史に

「ジャケットのボタンとか、竜の身分をわきまえない暴言とかの問題もあって」

「後で、竜の親が、史君に謝罪に行くそうだが」

と話しかける。


史は、少し浮かない顔。

「竜って人から、直接謝ってもらって、ジャケットのボタンも弁償してもらうのが筋だと思うんです」

「親御さんに謝ってもらっても、どうなんでしょうね」


マスターが難しい顔。

「酒気帯びなんで、そもそも自動車保険も適用外にもなるかもしれない」

「そうなると、竜は逮捕されているから、親からという話になるのかな」


史は、面倒そうな顔になっている。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る