第419話佃島へ(2)佃大橋上で
マスターの車は、佃島に入った。
そして、車を駐車場にいれて、全員で歩き出した。
マスターが史に声をかけた。
「まずは、佃煮屋さんから?」
すると史
「マスター、少し遠回りになるけれど、佃大橋にのぼろうよ」
にっこりと笑う。
マスターもうれしそうな顔になる。
「そうだなあ、春の風が気持ちがいいしな」
愛華、加奈子は、佃島の下町情緒に興味がある様子。
愛華
「佃島って、何か、日本の古い感じ?これはこれで落ち着くなあ」
加奈子
「落語家が出てきそう、風情あるなあ」
由紀も、ようやく口を開く。
「ここって、すごく古くて、空襲もなかったのかな、そのまま残っている」
そんな由紀に、史が寄っていく。
「姉貴、後で、住吉様にも参拝しよう」
「小さい頃、姉貴と行ったよね」
由紀は
「うん・・・行く・・・」
史から優しい言葉をかけられて、また涙顔。
そんな話をしながら、一行は佃大橋への階段をのぼった。
加奈子
「うわーーー!気持ちいい!」
愛華
「広々として・・・気持がスッとする」
史
「高層マンションも建っているけれど、昔ながらの下町風情も残っている」
「それで、川の向こうが、築地とか銀座になる」
愛華
「あれ?水上バスだ・・・へえ・・・乗ってみたい!」
由紀
「あれは浅草からかなあ、満員だね」
加奈子
「ねえ、こっち見て、手を振っている」
マスター
「じゃあ、手を振り返さないと」
マスターが水上バスの客に手を振り出した。
愛華
「じゃあ、うちも」
加奈子
「なんか、こういうのいいな」
加奈子も手を振る。
史も手を振りながら
「あそこに見えるのが、住吉神社」
由紀もいつの間にか手を振っている。
「なんか、佃煮の匂いがしてきた」
史が由紀に
「そうだね、お腹減ってきた?」
と聞くと
由紀
「うん、私も佃煮って大好き!」
と、ようやく笑って、史の顔を見る。
そんな由紀に、マスターはようやくホッとした顔。
そして、由紀について、いろいろ考える。
「結局、由紀ちゃんは、なんだかんだと言って、史君が可愛くて仕方がない」
「とにかく離したくなくて、自分に素直な可愛い弟のままに、しておきたい」
「でも、史君は、由紀ちゃんの予想を越えて、いろんな人の興味を集めてしまう」
「由紀ちゃんも、そろそろ、何とかしないとな」
史が、マスターに声をかけた。
「じゃあ、住吉様に参拝してから、佃煮屋さんへ!」
史の声も、さっきよりは、明るくなっている。
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