第420話佃島へ(3)佃島住吉神社

一行は、佃大橋を降りて、佃島住吉神社に入った。

マスターが解説をはじめた。

「まず、徳川家康が関東下降の際、摂津国佃の漁夫33人と住吉の社の神職が分神霊を奉載し江戸へ下った」

「そして、寛永年間に幕府より鉄砲洲向かいの干潟を賜って、人工島を築いた」

「もともとの故郷の摂津の名を取って佃島とし、この地に社地を定めた」

「正保3年、つまり1,646年の6月29日 に、住吉三神、神功皇后、徳川家康の御神霊を奉遷し、祭祀した」

「これが佃住吉神社の起源となる」

「もともと、佃島は江戸湊の入口、海運業、各問屋組合をはじめ多くの人々から海上安全、渡航安全の守護神として信仰を集めた」

「今は、月島、勝どき、豊海、晴海を含めた地域の産土神、氏神として信仰されているのかな」


愛華は

「へえ、なんか、そう聞くと関西にも縁があるなあ」

加奈子も

「住吉様って聞いただけで、安心感がある」

と、ご機嫌な様子。


史は

「ここでのお祭りもいいよ、本当に下町の祭りって感じ」

由紀も、少しずつ笑顔

「そうだね、史と一緒に綿あめ食べた」

マスターもうれしそうな顔。

「そうだね、三年に一度、佃の本祭りがあるよ」

「7月末から、四日間ね」

「獅子頭や八角形の神輿を宮出しして、その神輿を船にのせて氏子地域をまわる、船渡御って言うのかな」


愛華

「夏にも来たいなあ、下町のお祭り大好き」

加奈子

「浴衣でね、花火を見て」

由紀

「そうだね、かき氷とか」

由紀は、お祭りの話で、少しずつ元気になっている。


史も、ホッとした顔。

「じゃあ、佃煮屋さんに行こうよ」

と、全員に声をかける。


マスターは

「それじゃあ、馴染みの店があるんだ」

「そこで」

と歩き出した。


由紀が愛華と加奈子に声をかける。

「とにかく、これぞ江戸の味って、強烈かも」

愛華

「その強烈が食べたいんや」

加奈子

「そうや、史君がもっとシャキってするような味かなあ」


史は、突然振られて

「え?」

と思ったけれど、とにかく由紀の元気回復がうれしいらしい。

ニコニコと笑っている。


マスターは思った。

「これも、住吉様の誘いかもなあ」

「とにかく、元気を出せって感じ」


後ろから聞こえてくる笑い声の大きさに、マスターの歩みも早くなっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る