第407話史、由紀、愛華、加奈子の音大見学(4)

とにかくアメ車ならではの爆音、それもブルン、ブルンと後ろから、史たち四人を煽るように聞こえてきた。


史は

「うるさいなあ」

と思って、振り返り、

「え?また?」

途端に嫌そうな顔になる。

由紀も振り返った。

そして、由紀も気がついた。

「うわ!またあいつ!」

由紀も嫌そうな顔になった瞬間。

そのアメ車はいきなりアクセルを踏み込んだのだろうか。

ブワン!と大爆音。

そして、ドラ声も聞こえた。

「どけえ!このガキども!」

その声とともに、アメ車は史の身体スレスレを猛スピードで走り去っていく。


史は、本当にぶつかる寸前だったようだ。

というか、少々、こすった感じ。

「ボタンが欠けた」

「愛華ちゃん、大丈夫?」

愛華に声をかけると、愛華も驚いた顔。

「うちは大丈夫や、それよりボタン・・・」


由紀と加奈子も史のまわりに

由紀

「ほんと、腹立つ」

加奈子は

「マジ、頭おかしいんちゃう?事故やで、これ」

加奈子も、本当に怒っている。


史は

「おそらく竜って人、また、音大の中で待ち構えているのかなあ」

少し嫌そうな顔。

かつて文句をつけられたことを、しっかり覚えているようだ。

由紀も

「なんか、行きたくなくなった」

不安な様子になった。


それでも内田先生と榊原先生との約束もある。

さすがに校門を目の前にして、引き返すのも、なかなかできない。


史は、愛華に頭を下げ、由紀、加奈子も一緒に、音大のキャンパスに入った。

それでもキャンパス内はいつもの通り。

広い芝生の上で、ホルンを吹いたり、フルートを吹いたり、ヴァイオリンを弾いている学生があちこちに。

愛華は

「うわーーーこれが音大?華やかなやなあ・・・」

さっきの驚きから、面白そうな顔に変わっている。

加奈子も

「うん、こういう所かあ・・・いいねえ、この雰囲気」

と、周囲をキョロキョロ、とても楽しそう顔になった。


史が、そんな二人の顔を、少々安心した顔で見ていると、由紀が史の脇をつついてきた。

史が「え?」と思って由紀に振り返ると

由紀が低い声で

「ねえ、史、あいつが・・・こっちに向かってくる」


史も、その「向かってくる、あいつ」の姿を確認した。

革ジャン、リーゼント、そして今日は少し赤ら顔の「竜」である。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る