第403話史と里奈の鎌倉散歩(7)

史と里奈、明月院を出て、しばらく歩いて、建長寺に入った。

史が

「ここが鎌倉五山の筆頭だね、すごく大きい」

里奈も

「とにかくドシっとした感じ」

二人は、仏殿に参拝をした後、そのまま方丈に向かう。

「ここの池が大好きなの」

里奈

「そうなの、私も大好き」

どうやら、二人とも、建長寺の名庭園にある心字池に直行するようだ。

やはり、十七歳の高校生男女、目的にはまっしぐらになる。


それでも、方丈の入り口で

「背筋を真っ直ぐに」と書かれた貼り紙を見ると

里奈が

「史君!もっと胸を張って!猫背だよ」

と言って、史の背中をポン。

史は

「ウッ」

と、咳き込んでいる。

里奈はそんな史に

「あ!ごめん、痛かった?」

と心配そうな声。

すると史

「えへへ」

と、言いながら里奈にウィンク。

里奈は、思わず

「もーーー史君!」

と言いながら、史の手をギュッと握ってしまう。


そんなタワムレをしながら、二人は心字池のある庭園の前の椅子に座った。

「本当に、きれいに整えられていていいなあ」

里奈

「これって楽園だよね、風も気持ちがいい」

「芝の緑が、鮮やかで、ホッとする」

里奈

「また来たいなあ、ここ」

二人の庭を見ての会話は、そこまでだった。

何しろ、途中から見とれてしまって、言葉がでなくなってしまったようだ。


さて、建長寺では、お目当ての庭園だけを見た二人は、再び歩き出した。

途中、喫茶店に入り、ケーキと紅茶を楽しんだ後は、小町通りに。


「とにかく新しくて面白いお店が増えているね」

里奈

「そうだね、ソーセージのお店は、変わらないのかな」

結局、ソーセージのお店に入り、ハンバーガーを食べてしまう。

やはり、十七歳高校生男女には、精進料理系は少し軽すぎたようだ。


その後は、あちこちのお店に入り、様々な小物グッズを買い求める。

史から里奈には、お香の店で、ジャスミンの香水を。

里奈から史には、頒布のお店で、頒布のブックカバーを、プレゼントし合った。

また、それぞれの家族にも、お願いされていた和菓子他のお土産を買い求めた。


ほぼ予定を終えた史が里奈にニコっと笑う。

「あのさ、食べ過ぎかなあ、コロッケが食べたくなった」

里奈も、ニコッと反応する。

「あ!知っている!できたての?」

史と里奈も、決まるのが早い。

すぐにコロッケ店に直行。

史は梅しそコロッケ、里奈はチョコレートコロッケを買っている。

里奈

「ねえ、半分ずつ、梅も食べたい」

と言うので、すぐに半分ずつになる。

「うん、梅の後に、チョコレートは不思議な味」

里奈

「でも、面白いなあ、これ」

ここでも、二人はニコニコ。


結局、最後には定番のサブレーを買って、電車に乗り込んだ。

史が、里奈の手を握ると、里奈はピッタリと寄り添う。

「また、来ようね」

里奈

「すごく楽しかった、次は紫陽花の時期」

「長谷の大仏さんとか、長谷寺も行きたいなあ」

里奈

「うん、楽しみ」


ということで、二人の鎌倉散歩は、全く幸せに包まれていた。


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