第401話史と里奈の鎌倉散歩(5)

史と里奈は、お目当ての和食店に入った。

妙齢の和服姿の接客係の女性たちに、少々気後れしながら、案内された席に着く。


「やはり格式あるけれど、それが落ち着く」

里奈

「お祖母様と何度も来ているの、ここ」

「へえ、この間聞いたけれど、僕の祖母と里奈ちゃんのお祖母様と知り合いとか」

里奈

「うん、女学生の頃から同級生で、大の仲良しなんだって」

史と里奈が、そんな話をしていると、その妙齢の和服姿の女性が席に来た。


史は

「精進料理の桂」

と、すんなり注文して、

里奈も

「はい、同じです」

と、簡単この上なし。

何より、座って話をしたいのが第一らしい。


「ねえ、里奈ちゃん、柔道部は何月まで?」

と聞くと

里奈

「うーん・・・六月くらいで引退する」

「その後は受験に専念する」

と、きっぱり答える。

「そうなんだ、そうすると里奈ちゃんの柔道着姿もあと少しだね」

それを言われた里奈は

「あら、そんな柔道着姿なんて・・・ちょっと恥ずかしい」

顔を赤らめてしまう。


そんな話をしていると、「精進料理 桂」が運ばれてきた。

そして、二人はさっそく食べ始める。

「生湯葉って大好き」

里奈

「この大根含め煮が、別格な味」

「さすが精進料理、胡麻豆腐も美味しい」

里奈

「この分葱と長芋の木の芽味噌和えって言うの?ホッとする優しいお味」

「里芋揚出しも獅子唐と卸し生姜大根卸しかな、いいお味」

里奈

「黒豆御飯とお味噌汁もいいね」      

 とにかく二人とも大満足な様子。


ただ、二人とも、まだ十代なので、食べるのは速い。

すぐに食べ終わってしまって、スンナリと店を出てしまう。


「おそらく小町で、何か食べるよね」

里奈

「うん、ここはここで、素晴らしいお勉強です」

と、答えて、またすんなり史に手を延ばす。

史も、気づいたのか、スッと里奈の手を握る。


「じゃあ、このまま歩いて、明月院かな」

里奈

「うん、おまかせします」

二人は、ピッタリと寄り添って歩き出した。



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