第385話カフェ・ルミエールの新作ケーキ

史と由紀、そして真衣など四人の女子大生たちは、カフェ・ルミエールに入った。

史が洋子に事前連絡をしてあったので、六人席を準備してある。


洋子がまず史たちのテーブルの前に来た。

「はい、いらっしゃいませ」

「これから史君がいろいろとお世話になります」

「よろしくご指導願います」

と、ニッコリと笑い、女子大生たちに頭を下げる。


その女子大生を代表して真衣

「いえいえ、史君が私たちの音大を目指してくれるというので、本当にうれしく思っているんです」

「それに加えて、超有名なパテシェの洋子さんのお店に来られるなんて、本当に幸せなんです」

他の女子大生三人も、ウンウンと頷いている。


洋子は、それでまたニッコリ。

少し史と由紀の顔を見て

「それでね、何種類か新作を作ってみたの」

「できれば、試食をして欲しいの」


史は

「え・・・本当ですか?」

と、ニッコリする。

由紀も

「ああ、そういえば母美智子も、珍しいケーキを作っていました」

と、何かに気がついた様子。


洋子は

「じゃあ、とにかく持ってくるから、食べてみて」

「何かあれば、コメントを欲しい」

と言って、キッチンから顔を出している奈津美に目配せをする。


そして、奈津美が大きなトレイに乗せた持ってきたケーキは、六種類の新作。

奈津美が、一つ一つテーブルに置いていくと、洋子は、それぞれの名前と少しの説明をする。


「エイブルスキーヴァー。デンマークのお菓子。りんご入りのパンケーキで、これに粉砂糖とベリーソースをかけてあります」


「トライフル。イギリスのお菓子。透明のカップにクリーム、苺、バナナ、ベリー系のフルーツ、スポンジ生地を層状に重ねてあります」


「トルタ・パラディーゾ。これはイタリアのお菓子で、レモンが入ったバターケーキ」


「ブラン・マンジェ。これはフランスのお菓子。アーモンドミルクにゼラチンやクリームを混ぜて冷やし固めてあります、上にはブルーベリーとそのソース」


「シャルロット。これはポーランドね。リンゴとカスタードのケーキ」


「クレープ・シュゼット。これもフランスかな、クレープをオレンジュースとリキュールでフランベしたもの」


全てのケーキを見た由紀は

「ほー・・・・どれもこれも・・・美味しそうだ」

と、超幸せ顔。


女子大生たちも、同じような幸せ顔で、目を丸くして見入っている。


史だけは、

「洋子さん、全てフルーツケーキですね」

「それとヨーロッパ系」

と、聞いている。


洋子は、そんな史に少しウィンク。

何か、思惑がある感じの表情になっている。

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