第384話音大訪問(8)女子大生たちと由紀の握手

史は洋子への電話を終えて、女子大生たちにニッコリと笑う。

「はい、とびきりのケーキでお待ちしておりますとのことでした」

洋子からの返事をそのまま伝えている。


それを聞いた女子大生は、大騒ぎになる。

「ねえ、史君と一緒で、カフェ・ルミエールのケーキも食べられる!」

「しかもとびきりだって!」

「いやいや、目の保養と口の保養だ」

・・・・

とにかく大騒ぎなので、書ききれない。


ただ、そんな様子を見ている由紀は、複雑になる。

「洋子さんも洋子さんだ、満員で入れないとか」

「ケーキの在庫が少ないとか、やんわりと断ってくれればいいのに」

と、そこまでは思うけれど

「うーん・・・このアホの史がお世話になるのだから、ここで冷たい反応も出来ないあ」

「それに一人だけの女子大生じゃないから、集団だからいいかなあ」

「こうなると、恋愛対象とかじゃなくて、史はぬいぐるみとか動くおもちゃだ」

「そう考えればいいかな・・・」

と考えてようやく納得。

そして、女子大生たちに、由紀が頭を下げた。


「はい、自己紹介が遅れましたが、姉の由紀です」

「今後、史がお世話になると思いますが、よろしくお願いします」

と、キチンと頭を下げる。


すると女子大生を代表して真衣が

「うん、由紀ちゃんもコンサートで上手だったよね」

「合唱コンクールでも素晴らしい成績収めたとか」

「それに、なかなか美人さんだね」

と、スンナリ握手を求めてくる。


由紀は、うれしくなってしまった。

「わ・・・いろいろほめられた」

「しかも美人・・・こんなこと、母美智子もアホの史は全く言わない」

となり、ついニコニコとなる。


そんな女子大生たちと由紀の握手はともかく、史は別のことを考えていたようだ。

おもむろに

「あの、さっき、竜って人に怒られたんですけれど」

「ちょっと、まだ気になっていて」

そこまで言って、少し顔を曇らせる。


すると、真衣が

「ああ、じゃあ、それもカフェ・ルミエールでいろいろお話しよう」

「竜に限らず、音大には様々なタイプの人がいるの」

少し真顔になっている。

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