第374話史の京都土産(2)

史は、紙袋から、また四つの小箱を取り出した。

そして

「えっと、小さなものですが、価値は高いかと」

と言いながら、四つの小箱を、それぞれの前に置く。


洋子は、途端に鼻がピクリ、そしてすぐに気がついたようだ。

「え・・・これ・・・マジ?」

そして、緊張するのか胸を押さえている。


奈津美も

「うわ・・・これこそ、恐れ多い」

なかなか手に取ることができない。


結衣は

「もしかして・・・お香?お屋敷で・・・」

声が震えている。


彩は膝がガクガクしている。

「あの、旧摂関家のお屋敷からのお香?・・・・」

それ以上に声が出てこない。


そんな四人組に史が一応の説明をする。

「はい、今回のは、源氏物語の梅枝からです」

「朝顔の斎院は冬で黒方、源氏は秋で侍従、紫の上は春で梅枝、花散里は夏で荷葉」

「それぞれを、お屋敷の人に頼んでありましたので」

わりとサラッと史は説明をするけれど、もらった方はドキドキしてしまっている。


洋子

「うわ・・・どうしよう・・・」

奈津美

「すごすぎ・・・」

結衣

「家宝にします、マジで」

「史君と知り合いになれて良かった」


史は、そんな四人組に

「そんな心配しないでいいです、なくなったらまた作ってもらいます」

柔らかく笑う。

「それで分け方としては、洋子さんが侍従、奈津美さんが梅枝、結衣さんが黒方、彩さんが荷華でしょうか」

と、分け方を思案する様子。


すると洋子は、四人でヒソヒソと相談して、

「史君、実は少しずつ全部楽しみたいから、上手に四人で分けるよ」

「だから、心配はいらないよ」

と史に答えてきた。


史もそれでホッとした様子。

「そうですか、僕も安心しました」

そして

「えっと、マスターにもお話したんですが、今度文化講座をしようということで」

と、四人にニコっと笑いかける。


史は言葉を続けた。

「源氏物語の薫物講座を、京都のお屋敷の人を呼んでやってもらおうかなあと」

「ついでに父が、源氏の梅枝の講義もするかなあって、言っていました」


洋子たち、四人組は大賛成。

洋子

「うわーーー!それはそれは・・・和風文化の極みだ」

奈津美

「親方も家族も呼んでくる」

結衣

「料理学校の仲間も先生も呼んでくる」

「ねえ、私たちも何かお香作りたいなあ」

とにかく、大盛り上がりになった。


ただ、この状態により、史と洋子の、もう一つの目的である「ヨーロッパでの生活に関する二人だけのデート計画」は、なかなか進行を見せていない。


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