第373話史の京都土産(1)

さて、その史は、少ししてカフェ・ルミエールに入ってきた。

電話での連絡通りに、お土産が入っているのだろうか、紙袋を持っている。


史は、まっすぐにカウンター前に進み

「お待たせしました」

と、キチンと頭を下げる。


すると・・・史の到着前の不穏な雰囲気はどこへやら、カフェ・ルミエールの女性四人組は、ニコニコと集まってくる。


洋子

「どうだった?京都は?マスターはしっかりご挨拶できた?」

奈津美

「ねえ、どんなお料理とかお菓子食べたの?」

結衣

「とにかく史君、風邪気味だったから、京都は寒いって言っていたから心配でしょうがなかった」

「ずっと離れていたから寂しかったなあ」

・・・とにかく女性四人組の話が続いて、史は口を開く間もない。


それでも洋子が

「ねえ、何のケーキにする?今日は特製のザッハトルテでどう?」

と声をかけたので、史はスンナリ

「はい、あと紅茶は僕が淹れますか?」

と、それでも、少々神経を使う。


奈津美は、もうとんでもないという表情。

「やだーーーお土産持ってきてくれたんだから、そんな事言わないで」

「私が心を込めて淹れます」


少し出遅れてしまった結衣と彩は、アセリ顔。


そんな状態の中、ザッハトルテとダージリンが史の前に置かれ

史は「ありがとうございます」と頭を下げ

「それでね、お土産です、ほぼ同じものですが」

と、四人の前に箱を一つづつ置いていく。


それを見て四人とも首を傾げる。

箱は普通の箱であって、「店」の名前が書いてない。


そんな女性たちに史

「はい、大旦那の京都の本邸の菓子職人が作った干菓子の詰め合わせです」

「その色とか、干菓子の形、干菓子に刻まれた紋とか模様は、身体健全とか招運来福の意味が込められているとかです」

一応の説明をする。


それに洋子が目をパッチリと開いて反応

「え?マジ?恐れ多い!」

「京都の大旦那のお屋敷の料理人って言ったら、和食の最高峰クラスじゃない!」


奈津美は、ほぼ感激状態。

「私も、和菓子職人として、これは半端な気持では口に入れられません」

「木村親方に見せれば、どれほど喜ぶことか」


結衣も、目をウルウルさせている。

「うわーーー私だって同じだよ、恐れ多い、でもうれしいなあ、史君のリクエストなの?」

その結衣の質問に史がニッコリと頷くと

彩もウルウルとなってしまった。

「とにかくね、日本料理の伝統というか要のような料理人が集まるお屋敷」

「その大先生たちが作った干菓子なんて」


史は、ますますニッコリとして、

「あのもう一品ずつあるんです」

「これもあのお屋敷で作ったのですけれど」

どうやら、干菓子以上に、自信がありそうな顔をしている。

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