第335話マスターと由紀の横浜デート(7)

マスターと由紀は、元町から中華街に入った。

マスターが

「まあ、相変わらず賑わっているねえ」

とつぶやくと

由紀は

「うん、この原色の世界がいいなあ、元気が出て来る」

とゴキゲンな様子。


マスターは、

「さて、中華粥というと・・・」

と少し考えて

「由紀ちゃん、行列はしていないけれど、穴場の店に行くよ」

とにっこり。

由紀は

「はーい!お任せ!」

と、いっそうゴキゲンになる。


そのマスターが案内した中華粥の店は、少し小さな店。

しかし、キチンと掃除がなされ、清潔感に満ちている。

マスターが入っていくと、店主が出てきた。

マスターが

「馬さん、お懐かしい」と声をかけると

馬さんと呼ばれた店主

「おや、マスターじゃないですか、懐かしいねえ、今日は可愛い子つれて」

と、愛想がいい。


マスターは

「うん、親戚の子さ、馬さん特製の中華粥をお願い」

店主も

「うんうん、任せて、具はどうする?」

と聞いてきたので

マスターは

「ああ、おれは油条とザーサイのシンプルなので」

由紀もすばやい。

「私は魚介系でお願いします」

二人とも、簡単に注文が決まる。


中華粥が出されるのも、早かった。

マスター

「うん、シンプルな中華粥だけど、お米も魚介系の出汁も完璧」

「お腹にやさしい味だ」

本当に満足そうな顔で、中華粥を食べる。


由紀は

「うん、海老もタラ、イカ、柔らかい味付けで好き」

「何より、丁寧に作ってあるね」

とにかく美味しくてたまらないらしい。


そんな二人の様子を見に、店主が出てきた。

店主

「どうです?口にあいます?」


マスターは、満足そうな顔のまま

「そうだねえ、店のメニューに加えたいくらいで」

と答える。


それを聞いた店主

「ほー・・・カフェ・ルミエールの中華メニューにするの?」

と興味深そうな顔をする。


由紀は

「へーーー!面白そう!」

「マスターだったら、どう作るのかなあ」

とマスターの顔を見る。


マスターは

「うん、馬さんね、中華メニューということもあるけれど」

「リゾット系もメニューに加えたくてね、この前は湯葉も入れたからさ」

「お腹に重くない程度で、何か考えているんだ」


店主は、そこでニッコリ。

「じゃあ、今度、カフェ・ルミエールに行きますよ」

「何か、創作メニューしようよ」

「昔みたいにさ」


マスターもニッコリ。

「うん、面白くなってきた」

「馬さんとだと、いろんなものが出来て面白い」



そんな状態で帰りには、創作中華焼き菓子をお土産に渡された。

由紀は

「ねえ、マスター、気さくな店主だね」

と声をかけると


マスター

「ああ、技術に自信もあるし、確かだ」

「技術を広げることも好き」

「また、一つも二つも楽しみが出来た」

「中華も少し考えるかなあ」

本当に明るい顔になっている。


そんなマスターの顔を見た由紀は

「うん、やはりマスターは根からの料理人だ」

「美味しいものフェチだ」

「そういう人が身近にいて、私も幸せだ」


二人は、帰りがけにもホテルに寄り、ここでも「大量のお土産」をもらって帰った。

そういうことなので、由紀は「お土産購入費用」として、母美智子から渡されたお金を、全く使わなかった。

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